こんにちは、JADEブログ編集部です。
JADEではコンサルタントの評価基準のひとつとして、「検索クエリ理解」という項目があります。これは「あるクエリやサイトにおけるユーザーの意図や動向、競合などの理解を判断する」といったもので、ある意味、施策を行うためのアイデアの源泉となります。
ちなみに「普通」の評価基準は「限定された一部のクエリに関して、想定されるユーザーの意図と、そのクエリにおける競合を解説することができる。新たにアプローチするべきクエリをある程度まで、調査、発想、できる」。
「良い」の評価基準は「一定程度のジャンルのクエリに関して、想定されるユーザーの意図と、そのクエリにおける競合を深く解説することができる。新たにアプローチするべきクエリを多く調査、発想できる」。
つまり普通と良いの差分は「限定された一部のクエリ」と「多岐にわたるジャンルのクエリ」と、「深く」という文言でした。シンプルに量と質が差分となる、ということでしょうか。
この記事では、弊社のシニアコンサルタントがあるサイトに初めて接したときに、“検索クエリ理解のためにどのような「初手」を打つのか?”をテーマに解説しています。弊社で毎週行われている社内勉強会「JADE大学」で行われた、“どのような行動が「普通」と「良い」の間にあるのか?”という講義をもとに記事化してみました。
【もくじ】
- 「初見の印象」を大切に。サイトを見る目線はユーザーと同じ
- キーワードより「このサイトを使う人はどんな人?」を徹底的に考える
- ユーザーの知識レベルへの想像
- キーワードツールは脇役。主役は「実際の検索」と「サジェスト」
- スマホで見ると景色が変わる
- ペルソナになりきって周辺クエリを探る
- 「普通」から「良い」へ。検索クエリの量より質を追求するシニアコンサルタントの視点
- 初手の奥深さ。ユーザー理解がSEO戦略になる
「初見の印象」を大切に。サイトを見る目線はユーザーと同じ
この講義でシニアコンサルタント2人に与えられたお題は、ある金融機関が提供する「カードローン」のランディングページ(以下、LP)。Google Search Consoleのアクセス権限はもちろんありません。シニアコンサルタントはツールを触ることなく、初見のサイトにしっかりと向き合い、ユーザーをあぶり出していきます。
ウエストさん(以下W) いま見ています。「何のサイトなのか?」っていうのはまず捉えますよね。当たり前だと思うんですけど、なんとなくで良いので「ローン系か」って考えながら読んでいくんです。
スロープさん(以下S) 最初はサイトを上から下まで眺めます。当たり前と言いつつ実はこれってやっていないケースがあるのでは。このサイトをいきなりAhrefsにかけちゃうとか。私は少なくとも最初はほぼツール使わないですね。
W 私もです。キーワードツール的なものは何も見ないです。それよりサイトをしっかり見ることで、カードローンのサイトなのに「カードローン」という言葉がファーストビューにはあるけど下の方に全然ないなー、とか気づきます。サイト内の改善にもつながるので「どんなことがやりたいサイトなんだろう?」って考えながらトップページを見ますね。
S 私はトップと、主要なコンテンツがありそうなナビゲーションをザーッと見ます。「はじめてのお客さま」はめっちゃ見ますね。
W うん、めっちゃ見る。初めての気持ちで見られる唯一の機会なので、けっこう大事にするかな。
S サイトに来た人がこのコンテンツやサービスを良く知っているケースのほうが少ないと思うので。クエリとかユーザーを考えつつも、UIに関してもこのタイミングで一緒に見ることが多いかも。
W このときに分かりづらいポイントを挙げたり、一緒かも。ただ、「はじめてのお客さま」のLPを見てても、「このLPのキーワードはなんだ」っていうのは一切考えてないですね、この時点では。
S 同じくです。
キーワードより「このサイトを使う人はどんな人?」を徹底的に考える
サイトの全体像をつかんだら、「このサイトを使う人って、どんな人たち?」を徹底的に考えます。単にターゲット層を特定するだけではなく、ユーザーの行動や気持ちまで深く理解するのが目的。サービスの種類や特徴から、ユーザーのニーズや背景を想像し、サイトを利用する人の姿を具体的に思い描いていきます。今回、ここでの商品ラインナップは「借り換え」「女性向け」「自営業向け」「ペットオーナー向け」「カーオーナー向け」「教育ニーズ」の6種類としました。
S このサービス一覧の主な6つを見ると、ターゲットユーザーは全部違うんだろうなっていうのが見えてきます。
W そうですね。単純にペットオーナーのためのローンと車関係で借りたい人のローンは絶対違いますよね。同じ人が両方使う可能性はあっても、抱えているニーズは全然違うじゃないですか。
S そうなんです。自営業者は仕事関連のローン、レディースローンはざっくり女性全体、お借り換えローンは既にお金を別のところでも借りている人たち。ペットや車の所有者、教育ローンは子どもの教育費用が必要な人、みたいな感じで一旦見ていきます。
W うんうん、なるほど。
S こうして見ると、全部クエリも違えば探している人も違うし、それぞれの収入レベルも違いそうですよね。
W そうですね。だから私たちは、キーワードじゃなくて「人」で考えている感じかもしれません。どんな人がこのサービスを使うのか、ふわっとしつつもずっと考えてるんです。
ユーザーの知識レベルへの想像
ユーザーを理解する上で、特に注意を払うべきなのが知識レベルです。サービスを提供する側にとっては当たり前の用語でも、一般ユーザーにとっては馴染みがないかもしれません。ユーザーの立場に立って、どのような言葉で検索するかを想像します。
S 複数の会社から少額でお金を借りてる人って、情報リテラシーが高くないんじゃないかって気がするんです。一般的に、仕事してる人があちこちからお金を借りるってあまりないですよね。だから「借り換え」って言葉すら思いつかない可能性があるんじゃないかな。
W そうね。「お金 借りたい」みたいなシンプルなキーワードで検索する人もいそう。
S たしかに。「カードローン」「キャッシング」って言葉にたどり着くまでにもいろいろありそうです。たとえば、ペットでいきなり「ローン」って言葉は使わなそう。
W そうそう。「ペット」で「ローン」って何のことか私もよくわからないし。あと「女性専用カードローン」とか、私女性だけど検索したことないな。どういうニーズがあるんだろう?
S 何をもって女性専用なのか、たしかに疑問ですね。あー、オンラインで誰にもバレずに完結したい女性向けなのかな。
W だから、キーワードをキーワードとしてじゃなく、その背後にあるニーズを考えながら見てるんだと思う。
S そうです。キーワードから入るとその視点が抜けそうだから、絶対にユーザーから考えるようにしてます。
キーワードツールは脇役。主役は「実際の検索」と「サジェスト」
SEOというとキーワードツールに頼る場面もありますが、それはあくまで補助的なもの。代わりに重視するのが、実際の検索とそこから得られるサジェストです。これにより、ユーザーの生の声や意図をより正確に反映した情報を得ることができます。
W キーワードツールは補助的に使う感じで、むしろ実際に検索してみることが多いんです。そっちの方が得られる情報量が多いんですよね。
S そうですね。サジェストに出てくるクエリは検索ボリュームは大きくないかもしれませんが、おそらく必要なものだろうと。他の人がしている検索が見える、People Also Ask (以下、PAA)も含めて見ていきます。
W そうそう、PAAは重要ですよね。たとえば、レディースローンの関連質問を見ていくと、メリットだけでなく「ローンが通らない」とかグレーな質問とかが出てくるんです。
S ありますね。
W それに「審査が甘い」みたいなPAAもあったりして。もしかしたら「審査がゆるいところを探している人がターゲット?」って考え方もできそう。でもそれだとサービスとしてどうなんだろうって疑問も出てきますよね。
S そうですね。たとえばこれが銀行さんの場合だとしたら、グレーっぽさは当然NGです。だからこういうクエリがある場合、本当にニーズがあるのか、あったとしても狙うべきなのかどうか、そういうことも考えながらクエリを見ていく必要がありますね。
W そうね。だからクエリだけを見ているわけじゃないんです。その背景にある状況やニーズまで考える必要はありますよね。
スマホで見ると景色が変わる
デスクトップとモバイルでは、検索結果の表示が大きく異なることがあり、確認は必須。PC上でのスマホ表示だけでなく実際のスマートフォンで検索を行い、ユーザーが目にする景色を確認します。
S 私が特に意識してやるようにしているのは、スマホの実機で検索し直すことです。PCブラウザでエミュレートするのではなく、実機で見るのがポイントです。忘れがちなんですが、スマホで見るとかなり印象が変わることが多いんです。
W そうね、私もそれ大事だと思う。表示される内容もPCとは全然違うもんね。
S そう、広告の出方や数でだいぶ印象が変わりますよね。SEO中心の仕事をしていると広告をスッと飛ばしちゃう癖がついているけど、一般ユーザーはそれはない。だから、広告から検索結果を見始める、という気持ちで見ています。
W その通り。今、カードローンってスマホで検索してみたんだけど、スポンサー広告が4つも出てきて、その後に銀行の自然検索結果が1つ、そしてすぐPAAが出てくるの。こうなると、ユーザーは質問のほうに行きそうだなって思うんです。
S なるほど。
W うん、だからLPを訪問した上でサイトを決めるより、「他の人はこちらも検索」とか、そういうところを参考にしそうだなって。こういう検索行動の気づきも大事なんです。
ペルソナになりきって周辺クエリを探る
シニアコンサルタントの真骨頂は、ペルソナになりきって周辺クエリを探る能力かもしれません。単に関連キーワードを探すのではなく、ユーザーの心理や行動パターンを深く理解し、彼らが実際に使用しそうな言葉や表現を想像しています。
W 検索する人たちって何に困っているのかな、ということにも思いを馳せ始めますね。
S そうですね。借りる話はしたけど、返すときの検索もありそうです。返済方法、期限、利子とか。でも、このサイトにそういう情報がなければ、競合サイトを見てみようかな、という流れになりそうです。
W なるほど。それっぽいキーワードで検索してみるのもいいかもしれないですね。
S そうそう。最初は拙いクエリでも、そこからより正確なクエリにたどり着けると思うんです。
W 私はその人になりきってみる。たとえば、主婦で50万円借りたいとき、返済のことも気になるはずだから、どんなクエリを投げるだろうって。
S なるほど。実際に「主婦 50万円」と検索してみると、「50万円借りたい 主婦」というサジェストが出てきました。これで検索して、どんなサイトが出てくるか見てみて、その後で「主婦 借金 返済」とか。あまりいいクエリじゃないかもしれませんが。
W いやーいいですね。そういうプロセスを踏むのは大切だと思います。
「普通」から「良い」へ。検索クエリの量より質を追求するシニアコンサルタントの視点
JADEの評価基準において、「普通」のコンサルタントと「良い」コンサルタントの差は、冒頭で書いた通り、扱えるクエリの量と質にあります。シニアコンサルタントは、単に多くのクエリを理解するだけでなく、それぞれのクエリに対してより深い洞察を持つことを目指しています。
S サジェストやPAAなどのクエリ群を見ていると、夫に内緒にしたいニーズがすごく強そうですね。「主婦 借金 返済」というクエリには「夫」という言葉は出てこないけど、この裏側の意図を読み取れますよね。
W そうね。夫にバレずにお金をどうにかしたいというニーズが根底にありそう。
S そう。夫に黙って返したい、その前に夫に黙って借りたいというニーズもありそうです。でも、こういうニーズを考えていくと、ちょっと銀行さんでは対応しきれない話になっちゃいますよね。
W なっちゃうね。銀行さんの場合、そういったクエリをあまり追求するのは適切じゃないかもしれない。そろそろ次に行くタイミングかな。
S そうですね。「主婦 借金 返済」は一見すると銀行さんがターゲットにしたいクエリに見えますが、実際の検索結果を見ると「夫に黙って」系のニーズばかり。銀行さんのコンテンツでこれを狙っても上位表示は難しそうです。そういった点も考慮しながら、クライアントさんにとって適切なクエリを考えていく、という流れですね。
W その通りかと。クエリの背景にある真のニーズと、クライアントの立場や方針との整合性を常に意識することが大切ですね。
【何を、どう届けるか?コンテンツづくりのヒントはこちらを】
初手の奥深さ。ユーザー理解がSEO戦略になる
JADEのシニアコンサルタントの「初手」は、一見すると簡単なプロセスに見えるかもしれません。しかし、その背後には深い洞察力と豊富な経験が詰まっています。この方法論だと、単なるキーワード分析を超えて、ユーザーの真の意図や動向、さらには競合の状況まで洞察することを可能にします。
S ツールで出したクエリだけだと不十分なんです。サイトにないクエリは出てこないので、もっと良いクエリがないか細かく見ていく必要があります。サジェストのクエリは検索ボリュームは小さくても、おそらく必要なものが多いんですよ。
W そうですね。CVに繋げるために必要そうなものという目線で見ることも大切です。ただ、クエリだけを見ていても限界があるので「このサイトを使う人の気持ちになる」という下準備が重要になってきます。
S SEOの観点からいうと、クエリに対してのSEOはあまりやりたくないんです。コンテンツを作る時はある程度のテーマを決めるために特定のクエリをターゲットにすることはありますが、それでもまずはユーザーの流れを考えます。どんなユーザーがいて、そのユーザーにはどんなコンテンツが必要か、そこを先に考えるんです。そこからようやくクエリのことを考え始める、という感じですね。
W なるほど。つまり、脳の使い方を分けているわけですね。サイトの流れを掴む時はキーワード出しはしない。必要なコンテンツを考えてから、最後にツールを使う。Googleのキーワードプランナーや、Ahrefsなどのサードパーティツールを使って、頭の中にあるキーワードを確認しながら自分で検索する。結局やっている作業は同じかもしれないけど、最初のインプットの有無で選ぶキーワードの重要度の感覚が変わってくる、という感じですね。
JADEのシニアコンサルタントたちの初手には、深い洞察と豊富な経験が詰まっていると編集部では感じました。彼らはキーワードだけでなく、ユーザーの立場に立って考え、その意図や行動を理解することに重点を置いています。
これは「検索クエリ理解」の本質ではないでしょうか。「限られた一部のクエリ」から「幅広いジャンルのクエリ」へと視野を広げ、各クエリを深く理解することで、量と質の両面でユーザー像への接近を図っています。
この初手のプロセスが、SEO戦略立案の基盤となり、クライアントのビジネスに真の価値を提供する。「普通」から「良い」コンサルタントへのステップアップの鍵はここにあるかもしれません。
みなさんもぜひ、初手を大事に、検索クエリ理解を深めてみてくださいね。