こんにちは、JADEブログ編集部です。
Google Search Consoleで表示される「平均掲載順位」と、サードパーティーツールが示す「順位」。同じ「順位」という言葉でも、その捉え方や算出方法は大きく異なっています。この記事では、両者の違いを明確にしながら、SEO実務において順位データをどのように捉え、活用すべきかについて、コンサルティング・オペレーションズ・マネージャーの小坂に聞きました。
【もくじ】
「平均ではなく、いまの順位が知りたい」
小坂 もともと「この話題はJADEブログで取り上げるべきだろうな」と思ったのは、お客様からの質問がきっかけでした。
Google Search Consoleでも、JADEで提供しているSEO分析プラットフォームのAmethystでも、順位は「平均掲載順位」と出るんですが、お客様から「平均ではなく、いま出ている順位が知りたいんです」という趣旨の質問をされることがあります。でも、「いま出ている順位」は実際には存在しないので、知る由がないんですよね。
Google Search Consoleの順位の出し方は、実際に表示された実データを全て合算して、表示された回数で割るというものです。Googleの検索結果では、環境によって出る順位は違います。その状況を全てまとめた平均を出してるんですね。なので「いま出ている順位」と言われてもGoogle Search Consoleでは出せないですし、「いま出ている順位」は、実際には存在しない。なので、こういった質問をされて回答にまあまあ困った、という経験から今回は始まっています。
おそらく、大部分の人は「いま出ている順位が欲しい」「いま一番上に出ているURLが知りたい」とそう思うでしょう。なぜそういう発想になってしまうのか? その理由は「サードパーティーツールの順位」にあります。
サードパーティーツールの順位というのは、何かしら特定の環境でGoogleの検索結果をクロールしに行って、その時に出ていた順位をツール上に表示しています。なので「正しい順位のように見える」んですね。
たとえば、サードパーティーツールでは明確に「10位にこのURLが出ています」「このキーワードで10位はこのURLです」という表現の仕方がされています。なので、それを見慣れている人にすれば「正しい順位」=「サードパーティーツールの順位」となるのも仕方のないことです。Google Search Consoleでは、平均掲載順位は小数点での表現になるので「そんな……平均と言われても……」「平均ではなくて、正しい順位が知りたい」といった気分になるのが想像がつきます。それでも、正しいのは「平均掲載順位」なんですよね。
そのツールの特性の違いを知らずにSEOをやってしまうと、いろいろと意思決定を誤るかもしれません。
以前にAmethystをご契約いただいてるお客様と話していたときに「Google Search Consoleの順位は、あまり信用できない」「Google Search Consoleは信憑性がちょっと……」 といった趣旨のことをおっしゃっていた方がいらしたんですね。もしかしたら同様に思ってる方も多いのかな?と感じました。記事化のきっかけに戻りますが、仮にそうであれば「Google Search Consoleの順位ってどういうものなのか」をきちんと説明しておかねばならないなと思ったんです。
Google Search Consoleに表示される数字のうちでも、〈順位〉と比べて〈表示回数〉と〈クリック数〉は納得感があるというか、しっくりくると思います。Google検索結果に表示された回数と、そこからクリックされた数ですし、CTRはそれらの割り算ですから。なんとなく〈順位〉だけは、しっくりこない人がいるのは分からなくないです。
サードパーティーツールは言わば「点のデータ」
小坂 「Google Search Consoleの順位はこのようなものです」と書いている記事はあると思います。
ですが「Google Search Consoleの順位とサードパーティーツールの順位とでは何が違うのか」は、あまり書かれていないのではないかなと思います。そもそもGoogle検索結果をスクレイピングすることはガイドライン違反となっています。
Google 検索のスクレイピング、スクレイピングによるデータの購入
Google 検索結果ページやその他の Google のプロパティをスクレイピングすることはできません。また、スクレイピングされた Google のデータをサードパーティから間接的に入手することも、禁止されています。Google 以外の正当なデータソースから入手した検索データを含むレポートを公開する場合、データソースとデータ収集手法をレポートで開示する必要があります。
なのでサードパーティーツールの順位データについては触れづらいかもと思いつつ、実務レベルでは使用されるケースは多いので、触れるべきとも思っています。
多くの場合、位置情報がない状態で順位を取得しているので、ローカライズが反映されていません。ローカライズを設定して、東京の検索結果を取得するといったことは可能ですが、そうでないと位置情報が反映されていない結果になります。それに加えてパーソナライズも反映されていません。なので過信しすぎると実際の場合とズレが生じるのは、知っておいてほしいことのひとつです。最終的には「順位はあまり見ない方が良い」と言いたいところですが、まずはサードパーティーツールとGoogle Search Consoleの違いについて理解してほしいですね。
Amethystの文脈での話だと、BigQuery Exportをしたデータの、順位のカラムの計算式が公式ヘルプに書いてあります。でもこれはパッと見て理解できる内容ではないんですね。なぜこういった計算になるのか?というのは、Google Search Consoleがどうやって順位を出しているかを分かっていれば理解できます。でも、分かっていないと全く理解できないと思います。
sum_top_position: そのテーブルの行の各インプレッションに対する、検索結果におけるサイトの最上位の掲載順位の合計(0 は結果における最上位の掲載順位です)。平均掲載順位(1 ベース)求めるには、SUM(sum_top_position)/SUM(impressions) + 1 を計算します。
順位のカラムで sum_top_position というのがあって、「テーブルの行のインプレッションに対するサイト上の検索順位の合計」なんですね。平均順位を求めるには、「SUM(sum_top_position)/SUM(impressions) + 1 という計算式で算出せよ」と書かれています。合算された順位である sum_top_position をさらに合算して、インプレッションを合計したもので割っています。合算したものを合算したもので割って、なぜか1を足しているって、パッと見で意味はわからないですよね。「どういうこと?」ってなりますよ。私も理解するまで若干時間がかかりました。でもGoogle Search Consoleが順位をどうやって表示してるかを理解すれば、意味がわかる計算式です。なので理解しておきたいところです。
たとえば10回表示されたとしたら、それぞれの順位を足して10で割って平均順位を出す、という普通の平均の計算をGoogle Search Consoleではやっています。あくまで平均の順位であるという認識が重要です。
サードパーティーツールの方は、位置情報が入ってないか、あるいは何かしらの特定の環境での限られた状況下の「その瞬間の順位」で、言わば「点」の順位です。
順位と平均掲載順位、どう観測していくべきか
小坂 Google Search Consoleは実際のデータを使ってるので、絶対に正しいものだという認識を持った上で、サードパーティーツールの順位を使うべきと考えています。つまり、サードパーティーツールを使う場合は競合と比較する目的で定点観測をするならば用途としてありです。競合と同じ条件で比較することはGoogle Search Consoleはできないので。
でも、ここまで順位の話をしていてちゃぶ台返しになりますが、そもそも私はあまり順位を見るのはおすすめしません。先ほどもGoogle Search Consoleの話で出ましたが、人によって表示される順位は違いますし、環境によっても異なるので、順位を追うことにあまり意味がないと考えています。いくら順位が高くても1位に表示されていても、クリックされなければ全く意味がないからです。「何のためにSEOをやるのか」を考えると、順位を追うこと自体がそもそもKPIとして相応しくないケースが多い。そういう前提があった上で順位は見るべきと考えています。
ご自分の担当されているサイトのことを考えてもらいたいんですが、Google Search Consoleで何かしらベンチマークしているビッグワードがあると思います。そのビッグワード1つの流入数と、サイト全体の流入数を比較して欲しいんですが、大抵のサイトでビッグワード以外のキーワードからの流入数の合計の方が大きいんです。本当に一部でしかない特定のクエリの順位だけ追いかけることに何か意味があるかな?と考えると、そんなにないと思うんです。順位というものは、こういう性質のものだというのを理解した上で、参考までに追いかけるというのはもちろん良いと思いますが、「何のためにSEOをやるのか」というのを考えると、基本的にはクリックなどを見た方があるべき姿かなと考えています。
順位は可視化できるので追いかけたくなる気持ちは理解できますし、 会社の経営層にも「順位が5位から3位に上がりました。検索してみてください!」という成果として分かりやすいので、予算を取りやすいのかもしれません。
例えばある注力キーワードの順位が下がったとします。PV数で広告収益が発生するメディアだと影響が大きい可能性がありますが、そうでない業種だとどうでしょうか。流入数は影響があったとしても、その先のコンバージョン数までいくとあまり変わらず、事業には大きな影響は少ないという判断もできることもあるでしょう。順位の上昇や下降はたしかに見た目のインパクトがありますが、人や環境、デバイスによっても変わりますし、同じ人でも朝と夜では変わる場合もあります。なのでどうしても順位を気にしなければいけない場合は、Google Search Consoleの平均掲載順位とサードパーティーツールの順位の違いを理解したうえで観測することを心がけましょう。
そもそも何を1位としているのか
小坂 画像検索などが差し込まれる場合、「何を1位にしているんだろう」というのは難しいところもあります。Google公式での説明は上の引用のとおりですが、強調スニペットなどのリンクが1位、2位になっているであろうというケースも多いです。
これで言うと赤枠の画像部分が1位になるはずです。以下2位、3位、4位、5位、6位となりますが、青枠は別のGoogle検索結果に遷移するため順位カウント外になります。でも、感覚的にはWikipediaが1位ですね。ここの理解が難しいので、余計に信憑性がどうっていう話になっている気がします。サードパーティーツールでは、強調スニペットや画像を別枠として計測して、Webの検索結果のところだけを1位2位3位と数えている場合が多いと思います。
Google Search Consoleに関して「このキーワードでこのページが出ることはあり得ますか?」という質問はよく受けます。対象のキーワードと関係ないページで順位が出たり、流入が発生したりしている。その場合多いのはおそらくサイトリンクです。サイトリンクであるというフラグはGoogle Search Console上にはないので、おそらくとしか言いようがありませんが、いまは指名キーワード以外でも出るようになっています。仕様が分からない部分は、たしかに信憑性が薄いという表現になるかもしれませんが、分かる部分はしっかりと理解した上でSEOに取り組むのが良いと思います。
「順位」との向き合い方
SEOに携わる方々の多くは「いまの順位」を知りたいと考えますが、実際にはそのような単一の「順位」は存在しません。Google Search Consoleが示す順位は、実際の検索結果の全データから算出された平均値であり、これが最も信頼できる指標です。一方、サードパーティーツールの順位は、特定の時点での一時的なデータに過ぎないのは、ここまで書いてきたとおりです。
とはいえ、本質的に重要なのは順位そのものではありません。たとえ検索結果の上位に表示されても、クリックされなければ意味がないからです。また、特定のキーワードの順位だけを追いかけることは、サイト全体のパフォーマンスを見誤る可能性があります。
SEOの実務においては、順位の変動に一喜一憂するのではなく、クリック数や実際の流入数、そしてその先にある事業目標の達成度を重視すべきです。順位データを参照する場合も、その性質をよく理解した上で、あくまで参考指標として向き合うことをオススメします。