こんにちは、JADEブログ編集部です。
2024年10月18日、渋谷ストリームサイドで開催された「#DemandLive brightonSEO Tokyo Teaser 2024」にお邪魔してきました。
11月に開催されるbrightonSEO San Diegoのプレイベント、株式会社JADEからは代表の伊東周晃とファウンダーの長山一石が参加しました。DemandSphere社カントリーマネージャー室屋武尊氏のファシリテーションのもと、海外カンファレンスの意義から実践的な参加のコツまで、知見が共有されました。
今回参加できなかった方も、ぜひ次回の海外カンファレンス参加のご参考にどうぞ!
【もくじ】
brightonSEOの変遷と現在
はじまりは一つのパブ
2010年、イギリスのブライトンの一軒のパブから始まったbrightonSEO。現在では世界最大級のSEOカンファレンスへと成長を遂げました。伊東は初めて海外カンファレンスに参加した際の記憶をたどります。
「初めて海外カンファレンスに参加したのは2015年でした。マット・カッツがGoogleを去ってゲイリー・イリェーシュがスポークスマンになった直後のSMX Advancedです。その頃から比べて、brightonを含めカンファレンスの意義は変化していると思います」
カンファレンスの役割の変化
伊東 「昔はGoogleにとって、アメリカのカンファレンス、SMXなりPubConなりが、新しい情報の発信チャネルとして重要でした。スパムファイトの話にしても、技術関連の話にしても、ウェブマスターたちに話をする意義が大きかった。しかし、Googleが自分たちのチャネルを増やしていったことで、カンファレンスでの公式発表を聞ける場としての価値は相対的に下がってきています」
その一方で、「昔だったらランド・フィシュキンとか、今だったらリリー・レイとか、新しい世代のプラクティショナー側、コンサルタント側のタレントが増えてきていて、そういう人たちと話すのが面白いし、価値があります」と、カンファレンスの新たな価値を指摘しています。
グローバルカンファレンスならではの学び
ツールとサービスの多様性
海外カンファレンスならではの発見も興味深そうです。
伊東 「日本と比較してツールの数はとにかく多いです。怪しいものからちゃんとしたものまで、この業界に付帯していろんなものがありますね。たとえば、日本国内だと1社で包括的に提供している複数のサービスでも、海外では切り分けて個別のサービスとして提供されていたりします。SEO業界の捉え方自体が異なることに気づかされます」
英語でのコミュニケーション、現実的な準備と対策
初参加時の経験から、伊東は言語の壁への対処の必要を感じました。
「2015年に行った時、聞いて内容のわかるセッションと聞き取れないセッションのギャップがあまりに大きく、次回に向けて改善が必要だと強く感じました。アクセントもさまざまですし……英語をちゃんと勉強し直そうと思ったきっかけにもなりました」
以前にカンファレンスに参加した方の「SEOの用語は英語でもカタカナベースのものが多いので、意外と理解しやすい部分もあります」といった声も会場からは上がりました。ただ「Q&Aになると、スピーカーの方によっては勢いがあるのでついていけない場合も」とのことです。
カンファレンスの1日
朝から夕方まで続く学びと交流
海外カンファレンスの一般的な1日のスケジュールは以下の通りです。日本と比べると朝早いのが特徴だとか。
- 8:30頃:受付開始・朝食提供
- 午前:セッション・ネットワーキング
- 昼:ランチタイム(時にはランチボックスの提供も)
- 午後:セッション継続
- 16:00-17:00:セッション終了
- 夕方:ネットワーキングタイム(ビール等の提供あり)
- 夜:オプショナルイベント(ボウリング大会など)
「朝から40分くらいのネットワーキングタイムがあったり、展示会のホールでの交流時間が確保されています。これは単なる休憩ではなく、意図的に参加者同士の交流を促進する設計になっているんです」と伊東は説明します。
「これは長山さんに訊きたいんですが、カンファレンスに参加しているの半分くらいの人は将来の自分の状況を前提にネットワーク作りしてるっていうのが大きいですよね?」
日米の決定的な違い:ネットワーキング
キャリア形成における位置づけ
長山は、日本と海外でのネットワーキングの意味の違いを明確に指摘します。
「これは決して意識が高いというわけではなく、ネットワークが必要だからなんですよね。仕事における、人間のつながり方が違います。日本だと、会社で簡単にクビにもならないし、別にその他の会社と、同じ職能の人とつながるっていうことが 必須ではなく、あくまでオプション。つながってもいいけど、別につながらなくてもいいと思うんです。アメリカ社会では、同じ職能の人とつながることが必須スキルです。日本では会社内でのネットワークが中心ですが、アメリカでは職能ベースの横のつながりが重要です。簡単に解雇される可能性もあり、採用・被採用の場面でもそのネットワークが活用されます」
投資としての参加費用
参加費用についての伊東の見解です。
「日本の場合、10万円をこえる参加費のカンファレンスは限られていると思いますが、SEO関連だとせいぜい1万円程度かなと思います。海外カンファレンスだと2日で20万になるわけですよね。現地の人たちも自己負担で参加している人は少なくありません。これは単なる出費ではなく、職種でのネットワーク構築への投資として捉えられています。日本のカンファレンスとの大きな違いですね」
SEOの最新トレンドと議論
データドリブンSEOの新展開
今回はJADEは出展者側の立場でもありますが、Amethystについて長山はBrightonSEOで何を語る予定でしょうか。
「フレームワークをベースにした、データドリブンSEOへのアプローチ。日本でいつも話していることですね。これが可能になった背景には2つの要因があって、1つはデータそのものの利用可能性が高まったこと。もう1つは、フレームワークの整備です。URL Inspection API、Search Console BogQuery Export、Google Analytics BigQuery Export、これらを『3種の神器』と呼んでいますが、これらの登場で本当の意味でのデータドリブンSEOが可能になりました……というのが、アメリカで刺さるかは分かりません(笑)。海外だと二極化が進んでいて、まだリンクを集めている人とPythonや機械学習を使ってデータを取っている人と分かれているんですよね。でも、別に機械学習しなくてもデータドリブンなマーケティングはできるわけで、いかにしてデータドリブンSEOを民主化するか?というのが我々にとってのテーマのひとつですね」
Navboostと直接評価の時代
「Google検索の内部情報リークをきっかけに日本でもNavboostに関する話が、最近話題になりました。どんな検索クエリで、どんなユーザー行動をとっているのか。リンク分析もすぐれた手段ですがあくまで間接的な評価でした。が、今はより直接的に測れるようになっている。今の主流のSEO分析のアプローチは、”競合に比べて自分たちはどうなのか?”が中心でした。それを外形的に捉えやすいサードパーティーツールで疑似的に取り出して、その差分を埋めるというもの。
ただ残念ながらそこにはユーザー体験の優劣に関する指標はない、だって取れないから。モダンなSEOは、自社のユーザー体験データを重視する方向への転換ですよね。徹底的にファーストパーティデータに向き合って改善しましょう、競合ではなくて昨日の自社データとの差分でどれくらい良くなっているかに注目しましょう、というのを体現できるのがAmethystです。このパラダイムシフトには、けっこう大きなブリッジが必要だとも感じているので向こうでどういう反応になるか、ですね」(伊東)
効果的な参加のための実践的アドバイスをまとめてみました。
事前準備のポイント
- 自己紹介の準備
「自分が何者で、何をやってて、どんな価値を提供できるのかを英語で簡潔に説明できるようにしておくことが重要です」(長山) - セッション選択の戦略
「セッションのタイトルで気になるものがあれば、スピーカーのソーシャルメディアをチェックし、発信内容や専門性を事前に確認することで、より効果的なセッション選択が可能になります。同じ時間帯で複数セッションが走るカンファレンスだと雑になりがちなんですが、brightonはあまり悪い評判聞かないので期待しています」(伊東) - ネットワーキングの準備
「名刺交換だけでなく、その後のフォローアップまでを想定した準備が必要です。展示企業との対話も重要な機会になります」
イベント中に名前が出た、気になるセッションを引用しておきます。
グローバルなSEO実践の第一歩
今回のTokyoイベントを通じ、brightonSEO本体への参加に対して、技術的な知識獲得以上の期待が高まってきました。海外カンファレンス参加のポイントをまとめると
- グローバルなSEO業界の規模と多様性を実感できる
- 最新ツールとサービスのトレンドが把握できる
- 職能ベースの人的ネットワークが構築できる
- キャリア形成における戦略的位置づけとして参加する
というような機会を同時に提供してくれることではないでしょうか。ぜひ今後の海外カンファレンスの視点のひとつとしていただくのと、日々のSEO業務のヒントにしていただければ幸いです!
※本レポートは、2024年10月18日に開催された#DemandLive brightonSEO Tokyo Teaser 2024の内容を基に作成されています。