こんにちは、JADE伊東です。
暑い……です。こんなときは、「LLMO/ GEO」に関するお話をするしかありません(強引)。
現時点で、自社での取り組みやご支援としてサポートする場合にできることって何だろうか?について悩んでいらっしゃる方もおられるのではないかと思います。
私なりに、論点の整理をしてみました。
ポイント1:生成AI利用の普及と集客への影響は切り分けて考える。
生成AIは日々の業務の効率化(コストを下げる方向)での活用は着実に進んできています。
▼総務省|令和6年版 情報通信白書|企業向けアンケート
注)欧米に比べるとまだまだ少ないというニュアンスの統計ですが、公的データということで採用しました。
業務での生成AI活用が進む“ビッグウェーブ”と、“集客”の話は切り分けて考えるべきです。
現時点の生成AIの回答によるおすすめで車を買えるでしょうか?と言われれば否でしょう。
なぜか?おすすめされたものに、まだ十分な信頼が置けないからだと思います。
「信頼」は「金額(単価)」とある程度相関するものと思います。
みなさんは、現状の生成AIでいくらのものまでなら買えますか?その金額が、現時点での生成AI検索機能のトラストスコア(非公式ワード)だと思います。
価値観は人それぞれなので、値にはブレはあると思いますが、「インターネットで高価な車なんて買えないよ」は、20年前のウェブマーケティングが言われた言葉なのです。
たまに「ChatGPTで検索して御社がおすすめされたので応募しました!」などを耳にして、「おぉ…」と思うこともあるかもしれません。
ただ、それを拡大解釈するのは早計だと思います。「ソーシャルメディアの投稿を見て、応募しました!」とそれほど大差のある話ではありません。
ポイント2:時間軸で考える。今の姿をベースに最適化しない。
ポイント1の論点ともつながりますが、一部の業界を除けば、生成AIによる集客がクリティカルになっている業界は少ない状況です。
そのような中、現状の生成AI検索のクオリティに合わせる形でのLLMO/ GEOに過度に投資することは自社のオンラインでの露出をゆがめた形で行うことであり、長期的な利益にかなうものではないと考えます。
▼SEO専門家Cyrus Shepard氏のXポスト
I know with 100% certainty that GEO is way different from traditional SEO because I hate GEO
— Cyrus SEO (@CyrusShepard) 2025年7月7日
意訳:
「GEOは伝統的なSEOとは大きく異なるものだと100%の自信を持って言える。なぜなら私は、GEOが大っ嫌いだからだ。」
なかなか、皮肉の利いた投稿です。直接的には、ウェブサイト運営者と検索エンジンのWin-WInの関係をトラフィックの面で大きく毀損するGEOへの批判ですが、もう少し深読みすれば「今のGoogle検索に比べて大きく劣化しているAI検索になぜ合わせる必要があるのか」という憤りにも取れます。
ChatGPTの短期間での利用数拡大は何かと話題ですが、一般の人々が明確に生成AIを検索エンジンとして認識するようになるのはなんやかんやでGoogle検索のデフォルトがAI Modeに切り替わるタイミングではないですかね。その手前で、AIOが多くのコマーシャルクエリで表示されるようになるフェーズがあるかもしれませんが。
時間軸的に、大きくはAI Modeデフォルト化の前と後で大きくやることが変わってくると考えておくと頭の整理ができるのではないかと思うのです。
AI Modeデフォルト化前夜の現在行っておくべきことをざっと3つ挙げます。書かれていることは全て、「今に最適化」ではなく「将来への準備」である点に注目してください。
自社に関連する生成AIクエリの回答結果を定期的にモニタリングして記録しておく
モニタリングしている方だと感じていらっしゃると思いますが、同じクエリでもアウトプットは頻繁に変わります。取り上げられるアイテムそのものが変わることもあれば形式が変わることもありますよね。
肌感を養うためにもいくつかのクエリは固定で(表現を変えずに)、取得して記録するようにしましょう。
利用者の使い方が成熟してくるとクエリも変わってくるので、時折新しいクエリを試すことも必要だと思います。
基本的なDCIR-QCLSを整備しておく
これはもうJADEからは何度も何度もお伝えしており読者の皆様にはおなじみの概念ですよね。生成AI向けの最適化は基本的なSEOと「やることのレベル」では変わりません。
弊社の関連記事です。
ネオ・マルチエントランス戦略を構築する
なんじゃそりゃ?後述します。
ポイント3:少し将来を想像して、適切な投資をしておく
検索の多くは「知りたい」ニーズを満たすためのもので、それが部分的に生成AI検索に置き換わるのなら、ゼロクリック検索が増えるポイントもある程度予想はできます。
ECなどの商用サイトの構成は、「ホームページ→一覧ページ→個別ページ→購入プロセス」という形を一般的に取ります。
この分類で考えると各セグメントのトラフィックは、
ホームページ
増えそう。
最終的に生成AI検索でおすすめされたブランドを指名検索する形が想定されます。
生成AI検索の影響でホームページ(トップページ)トラフィックが増えた!なんてことをレポートする記事もありましたね。
一覧ページ
減りそう。
多くの一般キーワード(「知りたい」意図)の受け皿になるページ。同一地域内での店舗比較や、同じカテゴリ内の商品比較などの機能を持つが、ここは生成AIの回答がかなり代替しそう。
個別ページ
増えそう。
ECサイトの場合、個別商品ページはどこかの企業の「製品ブランド」でもあります。よって、ホームページが増えるのと同じ理屈でここも増加しそう。ただ型番商品は結局、サイトブランドの力に依存しそう。
購入プロセス
大きな変化は起こらない。
どんなに生成AIがおすすめをしても、購入そのものは各サイトで行うことになります。
意外と大事なのは、「購入プロセス」部分です。
「変化なし」ということは改善投資しても長期的に無駄にならず、価値を生むということですよね。離脱などボトルネックが明確にある場合は、対応の優先順位は上げても良いのではないかと思います。当然、ユーザー行動改善ですから、SEOそのものにも価値のある取り組みです。
ポイント4:ネオ・マルチエントランス思考を持つ
かつてのSEOはブランド力のない企業が、検索需要の高い一般キーワードでの上位表示を獲得することができた夢のあるマーケティング手段だったわけですが、その考え方の延長に「マルチエントランス」という発想がありました。
従来のウェブサイトは、”訪問者はトップページから入ってくるもの”という考えで制作されるのが当たり前だったのですが、そうではなく「すべてのページが入り口になり得る」と捉えるのが「マルチエントランス」です。
これがブランド指名以外の一般キーワードでの大規模なSEOの発想につながるわけですが、とても画期的なものでした。今となっては信じがたいですが、2000年にアドワーズ広告(Google広告)が開始されたとき、例えば「地域+カテゴリ」といったキーワードで検索エンジン利用者がたくさん検索するとは夢にも思っていなかったのです。
GAの登場が2005年で、それ以前にいくつかのアクセス解析ツールは存在してはいましたが、アクセス解析ツールが普及する前は、そもそもマーケティング担当者がサーバーログを見ることはなかったわけで、キーワードに対する感性が本当になかったのも理解いただけることでしょう(サーチコンソールもないですからね!)。
ただ、この一般キーワードという宝の山を知ったことで、ウェブマーケティングは「ブランドを育てる」から「需要の多い一般キーワードでの検索露出を高める」を強く志向することになり、今日の「ブランドがないと検索でも勝てない」という状況に苦しめられることになっています。
さて、こう考えてみると、今のマーケティングの状況は2000年頃に回帰していることにも気づきますよね。
当時、今でも覚えていますが、Google検索以前のウェブメディア、ウェブサイトの認知獲得活動はなんと新聞、雑誌などの従来型メディアが中心でした。今ではコンビニの雑誌欄等でみかけることはすっかりなくなりましたが、「インターネット関連の雑誌」というものがたくさんあり、その中の特集で紹介されることが明確に認知やトラフィック拡大に効果的でした。実際には、”テレビで紹介→雑誌で追加取材”、あるいはその逆の図式が多かったように思います。
媒体に良い形で紹介してもらえるとそれ自身が効果的な営業資料になるので、抜き刷りを出版社に追加発注して、営業に持たせるといったこともよく行っていました。
オンラインのサービスを知ってもらうのに、オフラインで頑張るという構図に何の不思議もなかったのでした。
2025年は、当時に比べてメディアの選択肢は増えたけれども改めて外部の場・メディアを通じて「評判を築く」ことが必要になっています。
これまでのSEOが自社のウェブサイトの内側にマルチな受け皿を用意してユーザーを呼び込む術だったとすれば、今必要なのはウェブサイトの外側に「人間関係」などをきっかけにマルチなつながりを構築して、それを最終的な自社の評判にポジティブフィードバックさせることです。これを、「ネオ・マルチエントランス戦略」と名付けましょう。 「ネオ・マルチエントランス戦略」とは、オフラインも含めた外部との接点を多面的に築き、検索エンジンに伝わる評判としてフィードバックさせる発想です、とでも定義しましょう。
「ネオ・マルチエントランス」をどう構築するか、施策は千差万別ですが、ひとつ言えそうなことはパソコンの前だけで完結する策はなさそう、ということです。Google検索も、生成AIも「人間が良いと考えるアウトプットを提供する」ことが目指す姿なわけですから、その人間が活動的でなければエンジン側に伝わることはないでしょう。
オンラインの世界が高度になればなるほど、人間に求められるのは現実世界での活動になるというこの対比は、考えてみればとても興味深い現象でもあります。それが、すべてAIの学習のエサになると考えると切なくもあります(苦笑)。
それはさておき、ある人は取材活動を強化するかもしれないし、ある人は登壇を頑張るかもしれないし、ある人は放送局をつくってしまうかもしれません。
こんな感じで論点をまとめてみたのですが、ぜひ読者のみなさんの意見もお聞かせください。