検索インタラクションモデル概論-JADEが日々使うSEO分析フレームワークの話

JADEがSEO分析を行う場合に用いている検索インタラクションモデルについて簡単にご紹介します。 主に検索エンジン向けと検索ユーザー向けの最適化の両側面を視野に入れたシンプルなフレームワークです。

検索インタラクションモデル概論

こんにちは、株式会社JADE創業者の長山一石です。今日は、「JADEがどのような考え方に基づいてWebマーケティングの戦略を作っているか」という点を、特に検索エンジン最適化 (SEO) の観点からお話ししたいと思います。

しばしば担当者から聞かれる SEO 上の悩みとしては、「さまざまな施策がアイデアとして出たり、コンサルティング会社から勧められたりするが、それらをどういうふうに優先づけするかが難しい」というものがあります。「まずはこれをやればいい」というような普遍的なものがあれば楽なのですが、あらゆるサイトに共通する優先順位というものは存在しませんから、実際には担当者がリソースと睨めっこしながら優先順位とタイムラインを決め、どの順番で施策を実行していくか決める必要があります。この時、SEO の考え方が平面的だと、優先順位の付け方がうまくできません。JADE では、できるだけ解像度を高く、立体的に SEO を考えるためのフレームワークとして、JADE独自の「検索インタラクションモデル」というものを使っています。

JADE における SEO の考え方

さて、今日の SEO は、検索エンジン最適化 Search Engine Optimisation と、検索体験最適化 Search Experience Optimisation の両面での対策が必要です。仮に検索エンジンにとって最適化されたサイトが存在したとしても、検索体験が最適化されていなければ意味がありません。検索エンジンにとってアクセシブルであり、検索ユーザーに有益なサイトを作ること、それがSEOの目的である、とJADEは考えています。

この目的に沿った対策を行うため、当社は「検索インタラクションモデル」と称して、以下のようなモデルを提唱しています。それぞれ、あるサイトがどのように検索エンジンや検索ユーザーと触れ合うかをモデル化した、非常にシンプルなフレームワークです。

  • 検索エンジンモデル: Discover - Crawl - Index - Rank (DCIR)
  • 検索体験モデル: Query - Click - Land - Surf (QCLS)

こうやって、URLがどのように処理されるか、ユーザーに閲覧されるかをフェーズに分割することで、「いまボトルネックになっているのはどのフェーズなのか」、「どこに改善可能な施策があるのか」、あるいは施策を打つ際に、「どの指標を動かすために施策を打つのか」を考えることができるようになります。

DCIR - QCLS モデル

DCIR - QCLS

Search Engine にむけてやること

DCIRモデルは、検索エンジンがURLとどのように接するかをモデル化したものです。あるURLが検索結果に現れるためには、検索エンジンは、そのURLを発見 (Discover) し、クロール (Crawl) し、インデックス (Index) し、そして、順位づけ (Rank) します。それぞれのフェーズがうまく行くために、ウェブサイトが満たさなければならない一定の要件が存在します。

これは Google が以前から唱えているもので、この処理プロセスに関するより解像度の高い理解があれば、特に大規模サイトにおけるクロールやインデックスのあり方についてより明瞭に考えることができるようになります。

  • Discover: URL が発見されるために、リンク構造を明確にし、検索エンジンに発見しやすい構造にする。
    • 指標は、URLの発見率。
  • Crawl: URL がクロールされるために、不要なクロールを発生させず、サーバーのリソースを確保し、リンクの有用性を主張する。
    • 指標は、クロールが必要な部分のクロール巡回率や、クロール頻度。
  • Index: 正規の URL がインデックスされ、コンテンツやリンクが正しく理解されるようにする。
    • 指標は、インデックスが必要な部分のインデックス率や、重複回避率。
  • Rank: URLのランキングを向上させるために、シグナル分散を避け、必要な形でシグナルを集中させる。
    • 指標は、ランキングやビジビリティ。

Search Experience にむけてやること

QCLSモデルは、ユーザーが検索エンジン経由でどのようにURLと触れ合うかをモデル化したものです。ユーザーは、検索エンジンをクエリ (Query) し、表示された検索結果から一つを選んでクリック (Click) し、URL へ着地 (Land) し、そしてサイト内を回遊 (Surf) します。それぞれのフェーズで成功裏にユーザーを導くために、ウェブサイトは自らをアピールしなければなりません。

いわゆる「SXO」という単語はすこし前から存在しますが、これを明確にフレームワークとして明示化したものはありませんでした。QとCは「検索エンジン側」、LとSは「サイト側」で発生することなので、それぞれ指標のトラッキングの仕方が異なりますが、ユーザー目線では同じジャーニーの中に位置付けられるものなので、QCのことだけ考えてLSのことを考えない、あるいは逆、という視野狭窄に陥らないために、フレームワークの中では同じ箱に入れています。

  • Query: URL がユーザーのクエリに現れるように、検索ジャーニーの想定をした上で、正しいターゲティングを行う。
    • 指標は、Impressionや、検索フィーチャーへの採用率など。
  • Click: ユーザーのクリックを誘導できるように、検索結果への現れ方を管理する。
    • 指標は、Click数やCTRなど。
  • Land: 無事ユーザーが意図されたURLに着地し、その際にもともとの検索意図が充足されるようにする。
    • 指標は、エンゲージメント率や直帰率、読了率など。
  • Surf: ユーザーがサイト内でジャーニーを継続し、サイト内を回遊するようにする。
    • 指標は、回遊率やコンバージョン率など。

検索エンジンに評価させ、検索ユーザーに体験してもらう

今日の SEO が難しくなった、と言われるひとつの原因は、「検索エンジンのことと検索ユーザーのことを同時に考えるフレームワークの欠如」もあると考えています。もちろん実際には全ての要素が複雑に絡み合っており、例えばインデックス率向上のために行った施策が結果として回遊率に影響するようなこともあり得ます。けれども、こういったシンプルなモデルは、検索エンジンという大海の中で担当者たちを導く空の星座のような働きをすることができると JADE では考えています。検索エンジンに評価させ、検索ユーザーに良い体験をしてもらうことをゴールに、サイトの改善を続けていきましょう。