「問題解決思考」をもっと使いやすく!JADEコンサルタントが学んだ思考ツールはサバイバルナイフ並みの用途の広さだった

抱えている問題を解きほぐして前に進むための思考ツール「Solvent」についてのご紹介。「目的・目標」「現状」「原因」「課題・解決」の4マスを使って、手軽に問題解決思考、戦略思考が始められます。

JADE伊東です。

今回はいつものウェブマーケティングに関してのナレッジや最新情報とは趣を変えまして、「考えること」、特に「ビジネスにおける問題解決」をテーマにお話ししたいと思います。

そもそも良い戦略や戦術を決定するには、その前段でさまざまなインプットや議論を経て、それを整理し、課題を抽出し、あるべき姿を設定して、優先順位を定めて...といったステップが必要なわけですが、その際に必要な思考ツールが「問題解決思考」だったり、「戦略思考」だったりするものと思います。

一方、ウェブマーケティングに関しては、すぐ「施策」の話になりがちではないでしょうか。

そういえば、昔、所属していた会社で「明日までに100施策出せ!」と言われ寝ずにパワーポイントの資料を作った遠い記憶が...(あれ、自然と涙が)。

SEOだとこの傾向はなおさら強め(100施策ではないよ)で、その結果、「何のためにこれやってるんだっけ?」ということに遭遇しがちではないかと思っています。

(「Core Web Vitalsの数値改善したけどランキング改善してないぞ、およ?そもそも、それが大事だったんだっけ?」)

弊社の場合ですと、お客様のお話をよくよく聞くとその企業様にとって一番大事な取り組みは今はSEOではないかも、というフェーズもあります。そういった場合にはその旨を率直にお話しさせていただくようにしています。

すなわち「SEO」という手法に入る前に、あるいは「SEO」をやるにしても施策を始める前には「必要な思考のプロセス」があり、その効果的なツールの一つが今日お話しするテーマにあたるものと考えます。

 

弊社では4月に外部講師を招いて、2回に渡り「問題解決思考ワークショップ」を社員全員参加の形で実施いたしました。

講師を務めていただいた 株式会社アーキットの堀内さんから切れ味鋭いツールを教示いただき、このワークショップはとても有意義なものとなりました。

この記事では堀内さんとの対談を通じて、「問題解決思考のススメ」について語り合いつつ、JADEブログ読者の皆さまに「問題解決思考や戦略思考って難しそうだけど、実は手軽に始められるかも」と思っていただけると幸いです。

 

では始まり、始まり。

 

堀内さん、4月のワークショップでは大変お世話になりました。

約10年前に私がぐるなびで仕事をしていたころに、会社の制度で堀内さんのクリティカルシンキングの講義を受講しました今回、私からの久しぶりの連絡に驚かれたかと思いますがJADEの皆のために快く講師をお受けいただいてありがとうございました。

 

こちらこそありがとうございました。

 

今回の対談は、堀内さんと弊社JADEのメンバーで実施した「問題解決思考・戦略思考」ワークショップの内容がとても有意義だったので、これをぜひJADEブログ読者や、ビジネスにおける各種コミュニケーションで悩みを持っている方に共有したいと思っています。

 

JADEのメンバーの皆さんは、積極的にワークショップに参加していただき、講師としても大変やりやすかったですよ。


堀内浩二(ほりうち・こうじ)

株式会社アーキット代表。「個が立つ社会」をキーワードに、「知」(論理的思考・問題解決)、「情」(EQ理論)、「意」(内発的動機づけ理論・意志決定論)を融合させた社会人教育事業に注力している。社会人向け教育機関であるグロービスでは20年にわたってマネジメント・スクールおよび上級管理職コースなどの講師を務める。

工学修士(早稲田大学大学院理工学研究科)取得後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)入社。シリコンバレー勤務を経験。帰国後、日米合弁のベンチャー企業にて技術および事業開発を担当。

 

ありがとうございます。

かつて堀内さんの授業を受けていた時の言葉でずっと印象に残っていることがありまして。

問題解決思考を行う時、What -> Where -> Why -> Howの各ステップをメチャクチャ深堀りしていきます。

「何が解決すべき問題で(What)」

「どこに具体的な問題点があり(Where)」

「なぜその問題が起きたのかを探り(Why)」

「どうやって解決するのか(How)」

という手順ですね。

 

いろんなケースを扱いながらその思考訓練をグループワークなどで行うわけですが、堀内さんからは「問題解決のプロセスにおいて『Where(どこが問題か)』の特定がうまくできれば、思考プロセスのゴールの7割ぐらいに到達しているのだよ」、という話があり、それはとても印象に残っています。

これは今もコンサルティングを行う際に気にかけており、How(具体的な施策)の話に傾く前に、Whereを意識するようにしています。

この考え方はその後の私の財産のひとつであり、「前職ありがとうー!」体験のひとつです。

 

伊東さんの心に刺さった言葉があったとは初めて知りましたが、そういうお話はうれしいですね。講師冥利につきます。伊東さんのなにかしらの問題意識との結びつきが背景にあるのではないかと思うのですがどうですか?

 

はい、まさにその通りです。ウェブの、特に集客やコンテンツ企画の仕事をしていると、常にアイデアが必要になります。「新しい施策を!」のプレッシャーも強い。

となると、ついつい意識が「How」に寄りがちになるんですよね。「How」をたくさん持っている奴が偉い、みたいな感じもあって。

引き出しは多いに越したことはないですが、それを使う必然性や順番というものがあるだろうとなんとなくは思っていたのですが、「Whereが7割」という言葉でつながった感じでした。

 

商談も、コーチングも...シンプルだけど汎用性のある思考ツールを

JADEもここ1-2年で社員が随分増えまして。エンジニアやデザイナーも加わり、提供サービスの幅が徐々に広がりつつあります。皆んないろんな強みを持っているメンバーですが、ここで今いちど「問題解決思考/戦略思考」をJADEメンバーの基礎において強固なものにしたいと考えて堀内さんにお声がけしました。

 

伊東さんや長山さん、小西さんからの問題意識や将来を見据えてのお考えをお聞きして、実りあるワークショップにできればと一生懸命準備させていただきました。

 

実は、私がイメージしていたのは問題解決の王道的なロジックツリーなんかを作るようなスキルの習得でした。

こんなやつですね。

問題解決思考でよく見かけるロジックツリーのイメージ。整合性のある形で作れると気持ちよい...

が、堀内さんから独自のフレームワークをベースにしたワークショップの提案をいただき実際にそれを使ってみると、「お、これは便利だし、なんて敷居が低いんだ」と驚きました。

 

実際には、このような感じの4マスの枠組みです。

4つのマスで構成されるシンプルな思考ツール「Solvent(ソルベント)」

このように4つのマス目になっていて、左上が「目的・目標」、左下が「現状」、右下が「原因」、右上が「課題・解決」とシンプルなものです。こういった発想に至った経緯を教えていただいてもよいでしょうか。

伊東さんが受講された講座では、まさにロジックツリーをしっかり作るスキルを身に着けていただくことが目的でした。これは分析的な問題解決には欠かせません。ただ今回、伊東さんのお話をおうかがいして、問題解決といっても『独りでじっくり考える』より『お客様や仲間と話しながら一緒に考える』ところに力点を置いたほうが、JADEの皆さんによりフィットすると感じました。

これは、わたしが興味を持って取り組んできたテーマでもあります。話しながら一緒に考えるシーンは非常に多いし、どれも重要な仕事ですよね。なので、使うべきスキルもたくさん用意されています。

ヒアリングならインタビュー、商談ならセールストーク、合意形成ならファシリテーション、1-on-1ならコーチング、などなど。

書店にいけば、それぞれビジネス専門書が存在するようなものばかりですが、この根元にあるものを掘り下げた感じですかね。

はい。こういったスキルの開発に、学ぶ側としても教える側としても関わってきて、そんなに細分化しなくてもいいのではないか、と感じるようになりました。

もちろんそれぞれのスキルには理論的な背景もありますし、習熟すれば相応の成果が期待できます。

ただ十分に習熟する時間が取れないと、いわゆる『わかるとできるの壁』を越えられず、せっかくの質問が誘導的に思われたり、効果的なはずの切り返しがあざとく感じられたり、と、あぶはち取らずに終わりかねません

あざとく(苦笑)...。

わたしの経験でも「よし、このミーティングのファシリやるぞ!」と意気込んで、ホワイトボードにたって見たものの、うまく図式化ができずアイデアが発散したまま終了して反省したことも。

フレームワークへ落とし込めるかどうかって、実は不安で、だからファシリテーションをためらうこともある方って潜在的に結構いらっしゃるんじゃないかと思います。

その意味で、「話しながら一緒に考える」「スキルを細分化しない」というコンセプトはすごくいいなと思いますし、実用的です。

およそ『話しながら一緒に考える』シーンであれば使えるような、汎用的な枠組みを目指しました。

個別スキルを増やすのをアーミーナイフ・アプローチとすると、サバイバルナイフ・アプローチといえるでしょうか。枠組みの具体的な説明は別のところでカバーできればと思いますが、先にお目にかけたように、一般的な問題解決のプロセスに則っています。

「目的・目標」「現状」「原因」「課題・解決」という枠組みのことですかね。これ素敵。

確かにどんな議論においても、ビジネスの場合は結局この話をずっとしているのは確かにそう。その他に工夫されたところはありますか?

Solventではビジネスでおおよそ必要な汎用的な論点を押さえている

 

実践という観点でぜひ取り組みたかったのが、話の流れを可視化するやり方の開発です。

問題解決は、順序だてて考えるのが重要ですよね。一人で考えるならよいのですが、話しながら一緒に考える場合にはそうもいきません。

順番関係なしに、頭の中に思いつくものをパパパッって言いたくなる衝動にはいつもかられます笑

その場で影響力が大きい人が、思いつくままランダムに話されると意見は言いづらいものですし、言葉だけで交通整理をするのは大変ですよね。

はい(笑)。

ただ一方、コンサルタントがお客様にヒアリングする際には、『まずはあるべき姿を明確にしてください』『あ、解決策の話はまだ早いです』などとは言わないと思います。また、問いのリストを並べて答えてもらえばよいのならアンケートで済みます。

確かに。リストを出せるぐらい整理できているなら、そもそも相談もしないかも。

話し手は、最も強く感じていることから自分の言葉で話す。聞き手の質問に答えていくなかで、自身の問題を具体的に把握する、あるいは真の問題が浮かんでくる。

そういった自由な会話は、問題解決の観点からすると『とっちらかった話』になります。そこで、個々の話をひとつのストーリーに位置づけるための可視化ツールが必要になります。

ホワイトボードとか?

道具を問わない形にしたかったのです。そして、大事な点は『一枚で見渡せて』『どんな意見でも収められて』『会話のスピードについていける』こと。

『汎用的な論点』と『シンプルなフォーマット』を併せ持った可視化のやり方を模索してきました。

お客様にヒアリングする際に色々試行錯誤する中で徐々にこなれてきて、『そのやり方も社員に教えてやってほしい』というリクエストを最近いただいくようになりました。そこで、多くの人にシェアできる状態になったと判断しました。

このフレームワークの名称は以前は4ボックスなどと読んでいたのですが、これを機に「Solvent」(ソルベント; 化学の用語で「溶媒」の意味)と命名しました。

部下からの相談をSolventで整理してみる

具体的な使い方を教えてください。

「紙の中央にテーマを書いて、どこからでもよいので話を始める。話がどこに飛んでもよいけれど、結果として2×2の4マスをU字にたどると『望む未来のために何をやるか?』のストーリーが見えている。そのようなツールをめざしています」

「社内でのよくあるコミュニケーション」として「部下からの相談」を例にとってみましょう。

いいですね、社内コミュニケーションの代表パターンなのでイメージが湧きやすいと思います。

たとえば、以下のようなコンテキストがあったとしましょう。

 

「とりあえず飲みに行こうか!」とガード下の飲み屋に連れ出す昭和のコミュニケーションパターンは除外ですよね。

えーと、そうですね、いろいろ論点がありそうだなぁと。

個人的には、Aさんの問題意識と行動(講座に通う)は本当にベストなHowなのかな、とか思ったり。

なるほど、そうですね。この対話からは上司の方が、Aさんの発言中のキーワードを抽出して、Aさんの考えをより具体化しようとしている姿勢が見えます。

この際、Aさんの発言をただ頭の中で記憶し続けたり列記するだけでなく、「目的・目標」「現状」「原因」「課題・解決」の4つの箱にひとまず放り込んでしまおうというのがSolventの発想です。

今の会話はこんな感じになります。

Aさんの発言を4つの箱にひとまず放り込んでみる



「Xさんのように話上手になりたい」が目的・目標、「先輩のようにうまく話せない、切り返せない」が現状、、、、確かに。

こう考えると、仕事におけるコミュニケーションってこの4つの箱のどれかに入りそうですよね。

この箱の使い方に慣れないうちは間違ったところに放り込んじゃいそう。

 

たとえば結果と原因の間とか、はっきり線が引けるものでもないですよね。全体として問題解決ストーリーを理解する、という感覚で箱に入れていけば大丈夫ですよ。

 

この気軽さは良いですね。ロジックツリーとかだと、「論理破綻しないようにちゃんと作んなきゃ」とか、矛盾があると「ワーッ」ってなりがち。

 

こんがらがると「ワーッ」ってなりますよね(笑)。特に会話はリアルタイムですから、相手が思いついたHowの論評に終始してしまったり、偏った会話で終わってしまうこともあります。

 

「ところでコミュニケーションといえば、あの本読んだほうがいいよ」みたいな。

 

はい。今の「メンバーからの相談」で重要なのは、相手の目的と手段がつながるように話を聞くことだと思います。誰かに相談してすっきりした・話してよかったと思えるときって、自分の中に問題解決のストーリーが見つかったときではないでしょうか。4つの箱を埋めるイメージで話を聞いていくことで、相手が言ったことに反応するだけでなく、「言ってないけど本来は重要なこと」も質問して確認したり考えてもらえるようになります。

 

これは安全・安心フレームワークだわ。

 

こういう可視化ができれば、どこをどう深ぼっていくかが考えやすくなります。たとえばこんな感じです。

会話の論点のうち、どれを深堀りするかは個々の判断。正解がひとつというわけではない。

会話にただ一つの正解があるわけでははないので、何をどんな順番で聞くかは、Aさんの反応を見ながらということになるでしょう。

上司としても「私は今、ここについて話をしようとしている」とか「課題・解決がAさんが考えていることで本当に良いのかなー、って気になっている」など、Aさんの発言のどこに関心が向いているのかに意識的になれますね。

 

まさにそんな感じで俯瞰的に使っていただけることをめざしています。このフレームワークをさらに俯瞰するとこうなります。

Solventは未来・現在×結果・原因のマトリクスでもある

このフレームワークの縦軸は上段が未来のこと、下段が現在。横軸は左側が結果、右側が原因のことを表しているわけです。

思いとしては、どこを起点にしてもよいのだけど最終的には「未来」に向けて行動できる、そんなことを支援できるフレームワークだと考えていますし、利用の際はこのイメージを持って活用するととても効果的です。

ディスカッションを通じて、最終的に上段の枠が具体的になってくると、仕事としては前向きで希望が持てる状態になると。いいですね!

ありがとうございます。

個人的には、企画系の業務をする場合や、セミナーで登壇する場合のプレゼン内容を考える時などはSolventをひとりブレストツールとして活用しています。コミュニケーションツールでももっと活用せねばと思いを新たにしました。

一人でのブレインストーミングにもとても効果的ですよね。良い活用法です。

堀内さんの会社のサイトにいくとSolventの活用ケースがビジュアルに色々まとめられていて、この思考ツールの懐の深さが感じられると思います。

例えば、こんなもの。

 

カフェの問題解決:

 

理念経営について考えるパターン:

 

これは話題が深いので、議論を深堀したいものをさらにSolventを入れ子のようにして活用しているイメージですね。

そうですね。慣れてくると、このような形で柔軟に使えるようになってくると思います。

他にも「コーチング」「セールス」「戦略思考」などの活用イメージのビジュアルがありますので興味を持たれた方は、堀内さんの会社のウェブサイトをご覧ください。

 

終わりに:

今後、いくつかのビジネスケースでのSolvent活用事例をこちらのブログで紹介していく予定です。

お楽しみに!