品質評価ガイドラインで”Experience”はどう語られたか

2022年末にアップデートされた品質評価ガイドラインにおいて、E-A-TがE-E-A-Tにバージョンアップしました。新しく追加されたExperience(経験)について、どのような解説がされているかをまとめした。

JADEの伊東です。

年末に、Googleの品質評価ガイドラインが改訂されました。SEOに取り組んでいる方の多くはご存じと思いますが、この改訂において、E-A-TがE-E-A-Tにバージョンアップ。
Eが長音になり息が続かなくて呼吸が大変との声も届いております(N=1)。

それはさておき、新たに、”Experience” (経験) が判断基準のひとつとして明示されるようになったわけですが、改訂版ガイドラインにおいて、このExperienceはどう語られたか?

理想はドキュメントを読んで「完全理解」すること(かっこいい!)

でも、全部読むの大変ですよね(本音!)

そんなお忙しい皆様のためにひと肌ぬがせてください!
「検索品質評価ガイドラインにおける”Experience”」に関連する事項をざっとまとめてみました。

  • 「新しいE-E-A-Tについてざっと理解しておきたい」
  • 「社内やクライアントへ新しいE(Experience)の件を説明できるように論理武装しておきたい、けど全部読む時間ない!」
  • 「いままでのE-A-Tとの整合を把握しておきたい」

という方、ぜひ本記事をご活用ください。

これこそまさにEとこどりや!(真顔)

では、どうぞ!

ざっくりまとめ

  • ドキュメントの中に ”Experience” という単語が頻繁に登場する(108回)が、使われ方は2種類。ひとつは、ユーザー体験としてのExperience(User Experience, Search Experience)。そしてもう一つが「実生活での直接経験」(Real Life Experience, First-hand Experience)。
  • 2つのE、すなわち「専門性(Expertise)」と「経験(Experience)」は一見、オーバラップする。前者は「客観的で、検証可能な知識や技能」、後者は「主観的で、個人的な語り口で共有されるもの」と考えると理解しやすい、とクオリティレーターへは説明している。
  • YMYLな話題についても、「専門性」一辺倒ではなく、時に「経験」を重視したほうが望ましい判断ケースがあることがセクションを割いて述べられており、現実に即したガイダンスとなっている。
  • 総じて、概念の構造化が進んでわかりやすくなった印象。新しい評価基準が追加されたわけではない。
  • 話題のAIライティングコンテンツへの対応についての明示的な記述は特になし。

Experienceが加わり、TrustがE-E-A-Tの中で最も重要な事項として位置付けられた

E-E-A-T概念図(General Guidelinesより)

今回のE-E-A-Tへのバージョンアップにともない、概念の再整理が行われました。
ガイドラインのp.26に以下の記載あり。

Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼性)はいずれもページ品質の評価において重要な要素だが、最も重要な項目は信頼性である

また、

信頼性は、当該ページの正確性、正直さ、安全性、確実性の程度をもとに評価されます。

とも。

そして、評価軸に新たに加わった「経験」の基本的な考え方は以下。

「コンテンツ制作者がそのトピックに対して直接的な経験(First-hand Experience)人生経験(Life Experience)をどの程度もっているかを(ページ評価にあたって)考慮する。 豊富な経験を有した人によるコンテンツは、多くのページタイプにおいて信頼に足り、ページの目的を満たす。ある製品のレビューについて、それを使用した経験がある人のものとない人もの、どちらを信じますか?」

これまで互いの関係性が並列だった「専門性」「権威性」「信頼性」が、「経験」の追加を機に、概念として理解しやすい構造化された枠組みになったと言えるでしょう。

めっちゃ納得。

E-E-A-Tの概念整理としては納得のいくものです。

人があるページが信頼できるかどうかを判断するに際し、「良く知られた権威性のあるソースであること」「専門家が関与していること」「直接経験に基づくもの」を考慮事項に用いると考えるのが自然だからです。

ちなみに、弊社のコンサルティングの現場においては、以前から「E-A-T」という言葉はあまり使うことはなく「信頼性」という表現を用いてきました。

YMYLであっても、専門性より経験が大事な話題がある

p.81から展開されている「ページ品質評価に関するよくある質問」において「経験」概念を理解するための記述がいくつかあり大変有益です。

Q.個人的な経験や意見の共有は有益な目的といえるか?それが人を動揺させたり、不快にさせるものでも?

A.他の人々の意見や視点は価値が高いものである可能性がある、仮にそれらがあなた(クオリティレイター)個人にとっては、気障り、不快、動揺させるものであったとしても。

個人的意見や見方ではなく、ガイドラインの基準を適用することにつとめましょう。

Q.YMYLトピックでも人々の経験をもとにしたページは最高品質評価をとりえるか?(正当化できる?)

YMYLトピックに関する”事実情報やアドバイス”は専門家由来のものであるべきです。

一方、YMYLに関する実際の体験談も最高品質ページ評価(Highest quality)になり得ます。しかしそれは信頼に足り、安全性があり、専門家間の定説に基づいた一貫性のあるもでなければいけません。

例)選挙の投票

投票日や投票会場に関する情報は、YMYLトピックです。

”市民になって初めて投票をした”という感動的な個人投稿などの人生経験を共有しているページは、最高品質評価となる可能性があります。

しかし、それが不正確、見落としのある投稿であるなら最低品質として評価されるべきです。なぜなら、この情報に接した人が投票機会を失うことにつながる可能性があるからです。

Q.すべてのトピックにおいて専門性が大事か?専門性が重要でないトピックはない?

すべてのトピックでフォーマルな専門性が求められるわけではありません。あるトピックにおいては、インフォーマルな専門性もE-E-A-Tとなりえます。

たいていのトピックに関して、その分野がニッチだとしても専門家を見つけ出すことはできるでしょう。

例えば、鍼灸や漢方治療などの第一人者による代替医療の専門サイトがある一方、専門家でもなく経験もない人物による代替医療サイトも存在します。E-E-A-Tはこのふたつを区別しなければいけません。

Q.E-E-A-Tにおける、専門性と経験はオーバーラップする点が多いのでは?どういう違いがある?

専門性:客観的、検証可能な知識や技能(例:橋の耐荷従量の計算方法は?)

経験:主観的、個人的な語り口で共有される(例:別の誰かを愛するとどんな気持ちになる?)

実際のページ品質評価において、クオリティレイターが専門性と経験を区別して考える必要はありません。
むしろ、ページの目的にとってどのようなコンテンツが信頼性があり、満足につながるかにフォーカスしましょう。

同じトピックについて、専門性にもとづくページも経験に基づくページもともに信頼に足ると思うかもしれません。
治療方法についての専門家の情報は信頼性があります。一方、その治療法を試した人の経験談もこれからそれを試す人にとっては、気持ちの面で支えになるかもしれません。

このFAQ、超有能〜。
FAQ最後の「その治療法を試した人の経験談もこれからそれを試す人にとっては、気持ちの面で支えになるかも」のくだり、Googleが人間にとってよいページを評価しようとする姿勢が垣間見える一文ですね!

 

ここまでは、E-E-A-Tのコンセプト概要説明ページにおける「経験」の考え方の説明でした。
以下では、具体的な適用例を見ていきましょう。

具体的な適用例

品質評価ガイドラインではコンセプトや考え方が述べられたあとは、実際の評価適用事例が数多く載せられています。
クオリティレイターはこれを参照しながらさまざまなウェブページや検索結果に対して評価を行っているわけですね。
以下に、「経験」の有無が評価に影響に与えた適用事例をいくつかご紹介します。
皆さんのページ制作においても役立つことが多いはずです。ご参考になさってください。

例1:ページタイプ:「仕事向けの服の着こなしのコツについて」の記事

評価:
  • Low
特徴:
  • (読者の)目的を満足させるには不十分なメインコンテンツ
  • 低いE-E-A-T
評価の説明:
  • この情報コンテンツは、低品質あるいは最低品質の評価につながる複数の特徴をもっている。
  • 大量のただの穴埋め的あるいは無意味なコンテンツがあり、編集努力が完全に欠如している。
  • 加えて、メインコンテンツは周知の情報しかなく、コンテンツ制作者による専門性や直接的な経験に基づく情報がない

例2:ページタイプ:「バレーシューズの洗い方」についての掲示板

評価:
  • Medium
特徴:
  • 良い点と悪い点がともに存在する。
  • 十分なメインコンテンツがあり、ページ目的を満たしている
  • 広告あるいはセクションコンテンツがメイコンテンツ利用を邪魔している
  • ページの目的に対しては、高いE-E-A-Tを達成している
評価についての説明:
  • このフォーラムはダンスについてのもので、多くのページはバレーダンサー達によるコミュニティー由来の専門性がある。
  • フォーラム参加者はバレーシューズの洗い方に関する直接の経験があり、自身の経験にもとづくおすすめの紹介もある。
  • このページは良い点と悪い点が混在している。メインコンテンツを読みづらくする要素(distracting content)がいくつかある。集中をそらす要素は存在するが、価値あるE-E-A-Tがあり有益なメインコンテンツである、よってMedium判定。

例3:ページタイプ:ルンバの機能性についてのQ&Aページ

評価:
  • High
特徴:
  • (読者の)目的を満足には十分なメインコンテンツ
  • 高いE-E-A-T
品質評価の説明:
  • QAページへの参加者の多くが、この製品に関する彼ら自身の個人的経験を共有している。ペットの毛の掃除についてはどのモデルが機能するかなどの詳細な情報(すべきこと、直接的な経験、独自なコンテンツ)が共有されている。
  • QAページ参加者自身の経験や、どれほどよく機能するのかについての多くの記述がなされている。その結果、メインコンテンツがページ目的を満たすものとなっている。

個人的には、2例目のMedium評価ページは興味深いです。コンテンツは「人々の経験談(First-hand Experience)」で充実しているのに、「ページでの体験(User Experience)」が足を引っ張っている。この二つのExperienceのバランスは大事にしたいですね。

ページ品質評価に「経験」の有無が影響を与える適用例がこの他にも約10点ほどあります。

もっと「経験」について読み込んでみたい方へのおすすめ

ドキュメントの中に ”Experience” という単語は108回登場します。

この記事を読んでもう少し自分の目で確かめたいと思われた方は、p.26-p.28にかけてのE-E-A-Tの概念全体説明と、p.81のFAQページに目を通すことをまずお勧めします。具体的な判断事例は、余裕があれば目を通すと良いでしょう。

ページ品質評価は、検索クエリとの適合性評価(Needs Met評価)とは切り離された「ページの基礎点評価」のようなものであることにもご留意ください。

最後に

ここ最近、”People First” (ヘルプフルコンテンツシステム)や現実の人間による”First-hand Experience” (品質評価ガイドライン)など、「人」をキーワードとしたGoogleからのメッセージングが増えているような気がします。

このスタンスは今に始まったことではありませんが、様々な技術革新により敢えてこのメッセージングを今まで以上に強調する必要性を感じているのかもしれませんね。

ちなみに本ガイドラインを通じて「AIが作成したものは低品質」といった判断基準は提示されているわけではないですが、E-E-A-Tの判断基準に照らして素直に考えると執筆者としてのAIに対して、「権威」「専門性」「実体験」の評価で「高」は付けづらそうです。このあたりは今後も線引きが難しい世界ですね。