Webマーケティング支援業、1人で早く行くか、みんなで遠くへ行くか

JADE創業6年で30人規模に。10年以上1人で仕事をしてきた小西が、組織経営の変化を振り返ります。「早く行きたければ1人で、遠くへ行きたければみんなで」。スピード、専門性、人の可能性について率直に語ります。

JADEの小西です。

2019年にJADEが創業してから6年たちました。

今年、人数は30人になり、増床して家賃も上がり、コーポレートチームもできてさらに会社らしくなり、僕個人としても人生の中で2番目に長く在籍した会社になりました。感慨深いです。

 

1人レベルの会社経営から、30人規模の会社経営へ

僕は、2009年に会社員をやめてフリーランスになり、業務内容はそのままに2012年に法人化し、自分が代表である会社で広告運用代行を主業務として仕事を続けてきました。会社と言っても、業務委託まで含めても最多のときで4人という規模。組織といえるほどのものではなく、経営らしい仕事もさほどありませんでした。つまり10年くらいはフリーランス、1人会社の延長のような環境と立場で仕事していました。

そこからいろいろ考えた末、組織化の道を選び、JADEに創業段階から役員として参画し、今に至ります。

10年くらいほぼ1人レベルで仕事をしてきたところから、組織化の道へ進み、今年で30人規模になり、自分にとっては1つの節目の年になりました。

組織を作るには大きな負荷もかかるし、自分の仕事の仕方も大きく変わることは想像してましたが、実際すごく変わりました。この変化を個人的に振り返るのが、2025年JADEアドベントカレンダーの僕の記事です。

 

1人のときと組織になった今との違いとして感じたこと

この記事では次の意味で書いています。

  • 1人:業務委託あるいは社員がいても2人程度までのとき。組織的な仕組みはほぼない
  • 組織:複数部署があり、様々な役割の社員がいて、組織的な構造と仕組みがあるとき。今

早く行きたければ1人で、遠くへ行きたければみんなで

これは前から聞いてましたが、本当にそうでした。

1人だとほとんどのことを自分1人の意思で決定してさっさと手を動かせます。商談時もその場であらゆることを確定して伝えられることが多かったです、持ち帰るところもないので。「仕事が早いですね!」とよく言われましたが、単に意思決定から動いて伝えるまでのプロセスがシンプルなだけでした、1人なので。JADEでは、できるだけ様々なことを各自がスムーズに判断して進められるように基準や仕組みなどは整えていますが、1人で勝手に判断して決めていくのは不可能です。そうじゃないと組織の意義がなくなるのでそれでいいのですが、どうしてもスピード感としては1人のときよりかなりゆっくりだと感じています。しかし、1人でさっさと手を動かせたというのは、それだけシンプルな仕事で、ほぼ自分1人でできることしかしてないということでもありました。単に広告運用とそれに関わる解析程度までが主業務だったときと比べて、戦略的目標を定め、分析環境を作り、異なる専門スキルの複数のメンバーが属するチームの進行管理をしながら取り組むのでは、スピード感としてはゆっくりと感じるものの、1ヶ月後、6ヶ月後、1年後にできていることの大きさが違います。

ロードバイクで平地で40km/h出すとすごいスピード感で、ハイエースで80km/h出してもスピード感は全然ない、けど1時間たってみると進んだ距離が2倍違うんですよ、不思議ですよね、多分そんな感じです。1時間減速せずに40km/h出せたらの話ですけどね、きついです。

1人だと解決が遅い、組織だと早い

前述の話の反面、組織のほうが早いこともあります。

例えば、広告運用は覚えたけどGoogle アナリティクスはあまりわからなかったというころ、よく 村山さん に聞いてました。しかし同じ会社の人ではないので機密情報は出せないですし、隣にいるわけではないので時間はかかりました。それが、今ではなんと同じ会社にいます。すぐ聞けます、情報も絞らず相談できます、早いですね。SQLも書き出したころは1人で苦労しましたが、今は社内ですぐ聞けます。1人のときからコミュニティを作ったり、いろんな分野の知り合いと相談しあえるつながりを作ったりすることで、1人である弱さをカバーしてはきましたが、それでもやっぱり遅いのと、何より、仕事そのものを任せられるわけではないというのが、組織との大きな違いです。今だと、このプロジェクトのこの範囲が自分には専門知識が十分ではなくてわからないけどこの人に任せれば進むだろう、相談しよう、担当してもらおう、とできて、解決までが早くて良いです。ただ、社内で解決することが多くなると外部との会話量が減って、いろんな人からいろんな視点が得られる利点のあるコミュニティ活動は、やっぱりやりたいなぁと思うところもあります。そんなこともあって、こういうイベントを開催しました、これはまたやろうと思ってます。

〈こういうイベントです〉

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1人だと知らないことを知れない、組織だと知らないこといっぱい知れる

前述の話に関連します。自分の知らない専門分野について触れることができます。ただ、知識をつけるだけなら、1人でも外部を頼ればできます。組織であることの大きなメリットは、具体的な仕事の進め方まで学べること、プロジェクトの進行まで関われること、複数のケースをいくつも見られること、でした。1人のときでもエンジニアやSEOの専門家などと一緒に仕事したことはありましたが、同じ組織内にいて日頃からみんなが仕事しているのを複数見られて、深く関わることもできるのとでは、大きく違います。これは組織化することで得られたことのうちの特に大きな一つでした。

1人だと通勤が楽、組織は通勤がめんどくさい

組織化して特につらいのがこの問題です!!

1人のときはオフィスの決定は自分で好きにしたらいいので、常にオフィスの近くに住むか住みたいところにオフィスを借りるかしてました。なので、どこかに行くとき以外は電車に全然乗らない生活をしていました。今は自分の都合だけではオフィスを決められません。できるだけ多くの社員が通いやすいことや、お客様が来やすいことなどが自分の生活より優先したいことなので、しょうがないです。今は、銀座線が狭くてつらいです。

1人だとX(旧Twitter)、組織だと社内チャット

1人のときはかなりツイートしていました。会話できる人が自社内にいない、いても少ない、なので外へと一人言を放って相手してくれる人と会話してました。2010年前後は旧Twitter自体とても活発で、知らない人同士でよく会話もできて、その頃完全に1人の個人事業主だった自分にはぴったりでした。その後Twitterはユーザーが増えて、集客目的の利用も増えて、殺伐ともしてきて、かつて仲良くやりとりしてた人達もだんだんとツイートしなくなり、つまらなくなりました。寂しかったです!今、JADEでは社内に人がたくさんいて、誰かしら話し相手になってくれます。社内チャットには hitorigoto というスペースがあり、どうでもいい一人言はそこに投げるのですが、誰かが何か言ってもたいてい一人言にならず、誰かしらが反応して会話になってることが多いです、社内版Xですね。zatsudan というスペースもあるのですがそっちより雑談が発生しています。音楽や漫画、子育てなど何かしらのテーマのスペースもあります、社内版mixiですね。

1人だと休めない、組織だと休める?

当たり前ですが1人だと休んだら誰もいなくなるので休みづらかったです。多分そうです、そうだったはずです、いや、そうだったかな?

1人だと休める、組織だと休めない?

考えてみたところよくわからなくなりました、1人のときは1人でコントロールする仕事ばかりだったので、自分で時間は作り出しやすくて、平日突然遊びに行くとかしてたような気もします。今は、仕事を任せられるメンバーはたくさんいるので実際休めます、休めますが、会社全体では動いてるプロジェクトがたくさんあるので、意識的には休めません、といってもそれはストレスではないのですが。1人のときでもなんかあったらすぐに動けるよう、仕事の連絡は常に見ていたので、今も昔もあんまり変わらないかも知れません。

どっちもあんまり変わりませんでした!

変わらないですが、変わらずにそこそこ自由に楽しくやってます。

1人だと人の可能性を引き出しづらい、組織は人の可能性を引き出しやすい

下記の記事を書いた垣本は、

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もともと僕の会社にいてそのままJADEへと転籍してくれたのですが、JADEでなかったら、僕は垣本の可能性は引き出せなかったと思います。JADEに移る時点で広告運用スキルは高かったですが、今では、コンテンツマーケティングはもちろん、モニタリングレベルを超えたGoogle アナリティクスの活用、広告以外のスコープを含むWebマーケティング支援のチームリーダー、その他いろいろ、絶対にもともとの僕の会社では覚えなかったであろうことを身につけてます。

組織化して特によかったことの1つはこれです。僕1人だったら教えられなかったことと、経験させられなかったことが、JADEには数え切れないほどあります。

また、このことで、会社をやるというのは人の可能性に大きな影響を及ぼすこと、大きな責任が伴うことを実感しました。会社次第で人が持つ可能性を潰すこともできると考えると、怖くもなりました。

1人だと人に責任を持てない、組織なら責任が持てる

長く働いていれば、どうしてもパフォーマンスが出ない時期はあるものです。本人の怠慢とも関係なく、誰でもそうなることがあります。

1人で会社をやっていて、社員が いても2~3人くらいのときにつらいのはパフォーマンスが出なくなったメンバーが1人でも出るときです。幸い僕はそこまでの問題に直面したことはなかったのですが、業務委託のメンバーのパフォーマンスが出なくなったことはありました。複数の収入源のある業務委託メンバーは後ろめたくもなく解約できましたが、僕への収入の依存度を高めていった業務委託メンバーには、他からも収入源を作ったほうがいいと伝えていました、それは僕が心理的にバッサリ切れなくなるのが嫌だからです。では社員だったらと考えてみたところ、解雇などしたくないし、パフォーマンスを戻せるまでサポートしたいと思いました。

ただ、社員2~3人程度で会社をやっている状態では、パフォーマンスの落ちた社員のサポートがとても難しいことになるだろうと考えていました。仮に3人で上手く業務が回っている状態で、ここから1人成果を上げられなくなったとき、残る2人が、パフォーマンスの落ちた1人分の売上をカバーしつつ、これまでほとんど経験もノウハウもなかったピープルマネジメントまで担うことになる、これは現実的ではないと考えました。だからといって人を切り捨てたくはない、であれば組織を作り上げる必要があります。

JADEでもまだまだ組織として足りないところはありますが、1人のときに比べたら雲泥の差です。それでも人を採用するときは今でもとても大きな責任を感じますが、1人のときに比べたら強い自信を持って、弊社に来てくださいと言えるようになりました。

 

1人でやるなら完全に1人で、どうせ集まるなら数十人で

前述の話のようなことを考えたのが、自分にとっては、組織を作る決断をするうえでの一つの背景です。人を雇うなら責任を持つべし、持てないなら雇わない。1人雇うなら数十人雇ってちゃんと組織化するべし、組織化しないなら1人も雇わず完全に1人で、と今は思ってます。

強い組織を作るために必要な人数が何人なのかはわかっていませんが、より多くの人の可能性を引き出せて、みんなが良いときも悪いときも長く働きやすい場にするためには、まだまだ足りていないと思っています。

ちなみに、2020年に弊社代表の伊東が下記の記事を書いていて、いいなぁそのうち自分もなんかこういう良いこと言いたい、と今回の記事で似たようなこと書けるかなとがんばったのですが、全然良いこと言えませんでした。

〈この記事です〉

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2025年アドベントカレンダーは、あと2回

今年もあんまり良いこと言えなかった僕ですが、この後、24日はファウンダーの長山と、25日は社長の伊東の2つの記事があります。何か良いこと言うのでぜひご期待ください!

adventar.org