自社のGA4のデータ、整理できてる? 今日から使えるチェックリストで棚卸しを【#現場で役立つGA4】

今回の #現場で役立つGA4 では、GA4の設定や計測データを整理するための詳細なチェックリストをご紹介。キーイベントの確認から各種カスタム設定まで、安心して利用できるデータ環境を作るためのポイントを解説します。

こんにちは! 株式会社JADEのコンサルタントの郡山です。

この記事は、JADE Advent Calendar 2024の12日目の記事です。

そして、毎月GA4のノウハウを発信している「#現場で役立つGA4」の連載記事第2弾でもあります。

 

今回は「運用中のGA4プロパティの設定、計測しているデータを整理するチェックリスト」を作ってみました。

旧バージョンのGA(ユニバーサルアナリティクス)からGA4に完全移行したけど、「どんな設定でどんな計測をしているのか実はよくわかってない」という担当者の方は必見です。

12月中にチェックリストを参考に、GA4の棚卸しをしてみませんか?

 

#現場で役立つGA4 前回の記事はこちら。 

blog.ja.dev

 

ウチのGA4はどんな設定で何を計測してるんだっけ?と聞かれてちゃんと答えられるか

従来のバージョンの Google アナリティクス = ユニバーサルアナリティクス(以下、 UA )と比べると、 GA4 はより高機能で複雑な仕組みとなっています。

GA4を運用していると、より活用するためにカスタム設定を導入していくことも増えていきます。

そうなると、

  • 自社のGA4はどんな設定でどんなデータを計測しているのか
  • 自社のGA4の設定は自社サービスにとって適切な設定になっているのか
  • 自社のGA4のタグ実装はサイトの仕様に合わせて適切な実装ができているのか
  • UTMパラメータを付けた流入トラフィックはデフォルトチャネルの定義を考慮できているか

といった観点で整理整頓できているかが重要になります。

タグの実装方法や、GA4・GTMの設定内容を把握している運用責任者だけでなく、関係者もそれらを把握できるようにドキュメント化できていると理想的ですね。

今回は、「ちょっと自分のGA4のことよくわかってないから、基本的な項目だけ確認したい」という方向けの簡易チェックリストをご紹介したいと思います。

 

12月の大掃除、頑張ってみましょう!

 

※JADEではGA4のデータを使った分析・施策の提案以外にも「計測・実装サポート」や「導入・インハウス運用サポート」なども行っています!ご興味があればぜひお声掛けください。 

ja.dev

 

必ず確認する9項目

GA4のデータを使ってモニタリングや分析をする場合、適切な設定で記録された信頼できるデータである必要があります。

まず、GA4プロパティ側の設定でまず確認すべき必須の項目を9つ挙げてみました。

「どのような設定で記録されたデータなのか」を再確認することで、適切な記録の仕方なのか判断ができます。

ご自身のGA4プロパティをご覧になりながら、チェックしてみてくださいね。

 

no. 項目 チェックするポイント 対応
1 キーイベントの有無 キーイベントが登録されていれば、ユーザー・セッションごとのキーイベント率を確認しやすくなるため、キーイベントは各プロパティに必須の設定項目です。 設定されていない場合、1種類KPIとして評価できるイベントをキーイベントとして登録することを推奨します。
複数のキーイベントを登録しても良いですが、KPIとして評価できるユーザー行動に絞って選定するのが重要です。
2 キーイベントの設定内容の確認 キーイベントで計測しているユーザー行動が適切であるか確認しましょう。
例)特定のページを閲覧した際のpage_viewイベントを対象とするカスタムイベントなどの場合「想定していない別ページも対象として記録していないか」といった観点でチェックをする。
GA4またはGTM管理画面で設定したカスタムイベントの設定を確認しましょう。
詳細に調査をする場合は、探索レポートやDebugView、GTMプレビューモードで検証します。
3 日本語または - を含むイベント名で記録しているカスタムイベントの有無 日本語や"-"(ハイフン)を含む文字列で命名したカスタムイベントはData API経由のデータリクエストや、オーディエンスの設定などでエラーになるため非推奨です。 半角英数字や "_" (アンダースコア)を含む文字列のイベント名にリネームします。
リネーム後は別イベントとして計測される点を関係者へ必ず説明しましょう。ドキュメントに対応履歴を残す運用まで検討できると理想的です。
4 サブドメイン・クロスドメイン設定の有無 GA4はサブドメイン間の遷移をしても、セッションを継続して計測することができます。
しかし、別のドメインへ遷移する場合はクロスドメイン設定をしないとセッションを適切に記録することができません。
探索レポートで「ホスト名」ディメンションと「セッション」指標を組合せて集計を行います。
サブドメイン・別ドメインとして計測されたものがあればメモなどに控え、別ドメインをクロスドメインとして設定すべきか判断しましょう。
5 計測対象外のドメインの計測タグを除外 No.4 のチェック時に、本来は計測したくないドメイン(テスト環境や広告LPなど)も、計測している場合に対応する項目です。 特定のドメインでGA4の計測をしたくない場合、GTMで実装している場合はGoogleタグ配信トリガーの修正が必要です。ウェブサイトのソースコードに直接Googleタグを実装してGA4を計測している場合、計測したくないドメインの開発者へタグの除外を依頼する必要があります。
6 データフィルタの有無 社員や関係者がアクセスした際のイベントデータを計測したくない場合は「内部トラフィック」の除外設定が必要です。 https://support.google.com/analytics/answer/10104470?hl=ja

除外するIPアドレスを登録することで、対象のトラフィックは計測されなくなります。
7 ユーザーIDの有無 ユーザーIDを実装している場合、GA4管理画面の「レポートID」の設定は「ハイブリッド」「計測データ」のいずれかにする必要があります。 レポートIDの設定が適切かどうか確認しましょう。
レポートIDで送信しているデータの検証やタグの実装方法や法的な観点で問題がない旨などの履歴をドキュメントで残しておくのが理想的です。
8 データの保持期間の確認 イベントデータとユーザーデータは、主に探索レポートで集計できる期間に関わっている設定です。 無償版プロパティでは2ヶ月または14ヶ月のどちらかを設定可能なので、適切な設定になっているか確認しましょう。
9 Google 広告との連携の有無 サービス間のリンク設定から、Google 広告のリンクで紐づけられているものがあるか確認します。
連携しているとGA4管理画面で「広告」関連のレポートを利用することができるようになります。
サービス間のリンクで設定されている広告アカウントが適切か、広告の担当者と確認しましょう。

 

必須ではないけれど念のため確認しておきたい11項目

続いて、手動で設定したカスタム設定などについて11項目を挙げました。

カスタム設定については、簡単なものでよいので「誰が利用する目的で、いつからいつまでの運用期間で、どのような仕様で計測しているか」といった履歴などをドキュメントにまとめておくと安心です。

 

no. 項目 チェックするポイント 対応
1 カスタムイベントの計測の有無 標準のGoogle タグの実装だけでは記録できないユーザー行動を、任意の名称と計測ルールで記録できる機能が「カスタムイベント」です。 GA4管理画面とGTM管理画面のどちらでカスタムイベントを作成しているのか確認しましょう。
2 カスタムディメンションの計測の有無 任意のパラメータ名を指定すると、パラメータの値を記録するディメンションとして利用できるようになるのが「カスタムディメンション」です。 1日あたり500パターン以上の固有の値を記録するディメンションは「高基数ディメンション」です。
そのようなディメンションを記録するGA4プロパティでは、集計結果に(other)行が発生しやすくなるなど計測精度の面で懸念が多く発生してしまいます。
よって、URL情報やページタイトルなど、非常に多くのパターンの値を記録するようなディメンションがあれば計測の停止などを検討する必要があります。
3 カスタム指標・計算指標の有無 カスタム指標は、カスタムイベントに任意の名付けをして「指標」として記録することができる機能です。
KPIとして集計する機会が多いカスタムイベントは、集計の手間を省く目的でカスタムイベント導入時にカスタム指標も設定しておくと理想的です。

計算指標は、デフォルトにはない「任意の指標を計算した結果」を指標として登録できる機能です。
カスタム指標は、どのようなパラメータでどんなユーザー行動を計測しているのか計測するルールを確認しましょう。

計算指標は上限5個までの割当数に対して、適切に利用されているかといった観点で関係者と確認することをオススメします。
4 コンテンツグループの設定の有無 コンテンツグループは、URLを任意のルールで分類・グループ化したディメンションとして利用できます。
ディレクトリ別に分類するなどの大きな粒度でサイト全体を分類するのが一般的な利用方法です。その他の分類をしたい場合はカスタムディメンションのを作成することを検討しましょう。
標準レポートや探索レポートでコンテンツグループとURLの情報をどのように分類しているか確認しましょう。

GA4管理画面とGTM管理画面どちらでURLの分類を行っているのか確認し、ドキュメントに設定内容を記載しておくと安心です。新しいURLの分類パターンを追加したい場合に確認できます。
5 オーディエンス設定の有無 上限100個まで保存できる割当数に対して、適切に利用されているか確認します。 いくつか設定されている場合、キーイベントに関する設定など活用しやすいもののみ詳細を確認しましょう。定義に問題がなければ、誰でも活用できるようにオーディエンス作成画面で「説明」テキストの欄に簡単な補足を記載することをオススメします。
6 プロパティに保存したセグメントの有無 上限50個まで保存できる割当数に対して、適切に利用されているか確認します。 いくつか設定されている場合、キーイベントに関する設定など活用しやすいもののみ詳細を確認しましょう。定義に問題がなければ、誰でも活用できるようにオーディエンス作成画面で「説明」テキストの欄に簡単な補足を記載することをオススメします。
7 拡張計測機能で計測しているイベントの有無 スクロール数やファイルのダウンロードなどのユーザー行動を記録するイベントの計測のON/OFFをコントロールしている設定です。 主に下記3点の設定を確認し、調整が必要か判断します。

1. ページビュー数:SPAのページなどで計測する目的で、ブラウザの履歴イベントに基づくページ変更のタイミングでイベントを記録する設定になっているか確認

2. サイト内検索:サイト内の検索をした際に表示される、検索結果ページのURL末尾のクエリ パラメータが登録されているか確認

3. フォームの操作:資料請求などの申し込みフォームの操作に関する各種イベントの計測を行う項目。集計しやすい形式で適切に記録できているケースは非常に稀なので、DebugViewなどで検証して計測すべきか判断。不要な場合は無効化してカスタムイベントなどで計測を検討。
8 接続済みのサイトタグの有無 旧バージョンのGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)の計測をするためにウェブサイトのソースコードに実装されているanalytics.js タグまたは gtag.js(Google タグ)を再利用してGA4の計測をするための機能が「接続済みのサイトタグ」を使った実装です。

analytics.jsを使った実装では拡張計測機能が利用できないなど、制限が多く実装の難易度も高くなるため注意が必要な計測環境です。
接続済みのサイトタグを利用している場合、ウェブサイトのソースコードに実装されているタグの種類によって、GA4で計測・利用できる機能に制限があります。自社サイトでどのようなタグ実装になっているか調査することを推奨します。

gtag.jsで実装・計測している場合はGA4の基本的な計測を行えていると判断して良いです。

GAで自社サイトに適したデータが計測できるようカスタマイズをしていく方針であれば、GTMを使った計測環境にリプレイスすることを推奨します。
9 イベントの変更の有無 「イベントを変更」機能を利用することで、計測中のイベント名やパラメータ名をGTMやgtag.js、Firebase SDKを改修することなく変更できます。

GA4管理画面側で設定したイベント名・パラメータ名に書き換えているデータがあるか把握しておくと実装まわりのトラブルを未然に防ぐことができます。
「イベントを変更」によって、GA4で計測するイベント名・パラメータ名を適した名称に【変更】して記録することができます。

一方で、実装されているタグ側から送信されるデータの名称は変更前のままです。

よって、イベントの変更機能は一時的な対応としては良いですが、恒久的な【修正】をする場合は計測タグなどの設定を見直す必要があります。

このような観点で担当者との相談をしておくと良いでしょう。
10 チャネルグループの確認 独自の分類ルールで参照元情報を整理・グループ化する「カスタムチャネル」が作成されているか。また、メインのチャネルグループは「デフォルトチャネルグループ」のままか。

それぞれ確認しておくと、集計時に見間違えることもなくなるので念のため見ておくと良い項目です。
カスタムチャネルをメインのチャネルにしている場合は、分類ルールの詳細を把握することが必須です。

また、同じようにUTMパラメータの整理も必須です。
11 アトリビューション設定の確認 ユーザーがサイトを訪問した際のチャネルごとにキーイベントへの貢献度を割り当てる設定を管理しているのが「アトリビューション設定」です。

特に理由がなければ、推奨されているデフォルトの期間にしておくのが無難です。
もし、ルックバックウインドウを推奨されている期間よりも短い設定に手動でカスタマイズしている場合は、より長い期間に変更すべきか確認することをオススメします。

セッションの参照元がDirectの流入時に、直前の参照元情報を引き継ぐ仕様がGA4にはあります。この「直前の参照元」を遡って判定できる期間は「ルックバックウィンドウ設定」に基づきます。 よって、基本的には推奨されている最長期間にしておくことで、流入経路が特定できないDirectのキーイベント実績を極力記録させないようにすることが可能です。

 

データを整理した後、ドキュメントにまとめる

繰り返しになりますが、各種設定やイベント名などの整理が終わったら、それらをドキュメントにまとめるのがオススメです。

まず「自分が利用しているGA4は、どんな設定で何を計測しているのか」を把握しておくのが大事です。そして、設定まわりの対応履歴をまとめたマスタ資料や運用ルールなどを定義したドキュメントがあると安心ですね。

参考に、私が整理するときの資料をいくつかご紹介します。

 

GA4で計測しているURLを分類する例

Looker Studioで対象サイトのページの階層構造を整理する例。コンテンツグループやカスタムディメンションの設計が適切か判断する、などの目的で利用。
  • サブドメインやクロスドメインの有無
  • ディレクトリごとの表示回数

これらを整理する際は、Looker StudioやGA4管理画面の探索レポートなどが確認しやすいです。

エクスポートしたデータをNotionやスプレッドシートに転記して、対応すべき点や注意事項などまとめておくと良いと思います。

 

GA4で計測しているイベントを整理する例

Looker Studioで対象GA4プロパティで記録しているイベント名を整理する例。カスタムイベント命名規則やキーイベントの実績などを確認する目的で利用。
  • キーイベントの有無
  • カスタムイベントの有無
  • カスタムイベントの名称の確認

このような作業も、Looker Studioや探索レポートが確認しやすいです。

目安として、1ヶ月でどの程度のボリュームのイベント数を記録しているか、イベントごとに整理することをオススメします。

サンプリングが適用されやすくなっている要因の特定もできるので、これらもエクスポートしてNotionなどで取りまとめてから関係者へ共有すると、棚卸しがしやすいですね。

 

GA4で計測しているデータの構造と計測仕様をNotionでまとめる例

Notionでイベント名やパラメータの構造、計測仕様を整理する例。計測しているイベント一覧で、どんなユーザー行動をどんな目的で記録しているかなど確認する目的で利用。

関係者と適切に管理できればNotionでもスプレッドシートでもなんでも良いと思いますが、なかでもNotionはGA4やGTMの「イベント・パラメータ・値」や「タグ・トリガー・変数」の構造を整理しやすいのでおすすめです。

 

安心して利用できるデータを扱うために

GA4のデータを使った高度な分析や、カスタム設定の仕方についてのお話は世の中にたくさんありますが……

「ウチのGA4はどんな設定で何を計測してるんだっけ?」

と聞かれてちゃんと答えられるように、まずは整理整頓しておきたいですね。

安心して利用できるデータを扱うために、運用中のGA4設定を見直してみてはいかがでしょうか。