コンバージョンしたあとも「検索の旅」をユーザーに続けてもらうためにできること

JADEの今年のアドベントカレンダー16日目。「検索インタラクションモデル」の実践事例を、結婚相談所サイトの事例でご紹介。入会完了後のユーザー行動に着目した動線設計で、メインコンテンツへの流入が156%増加した施策を解説します。

 

こんにちは、JADEブログ編集部の船津です。この記事は、JADE Advent Calendar 2024 の16日目の記事です。

 

さて、さっそくですが、「検索エンジンに評価させ、検索ユーザーに良い体験をしてもらう」。

これは、JADEが提唱する「検索インタラクションモデル」の根幹にある考え方です。このモデルでは、ユーザーの行動を「Query(検索)→Click(クリック)→Land(着地)→Surf(回遊)」という流れで捉えています。

blog.ja.dev

 

とくに後半の「Land」と「Surf」、つまり「ユーザーが目的のページに到達してから、その先どのように情報を探索していくか」。この部分に着目した施策で、大きな成果を出せた事例をこちらで紹介します。

 

それでは仮に「結婚相談所」を例として、この記事では取り上げます。

あるクライアントのサイトで実施したこの施策は、「入会申し込み完了=ゴール」という事業者側にとっての一般的な考え方を一度置いて、「そこからが新たな情報探索の始まりかもしれない」という仮説からスタートしました。

実際に申し込み完了後のユーザー行動に着目して動線を設計したところ、メインコンテンツへの流入が156%増加するという結果につながった例を共有します。

フレームワークは、シンプルだからこそ理解はやさしくても実践は難しいもの。読者の皆さんのヒントになれば幸いです。

 

「入会後」のユーザー体験を見直す

「入会申し込みが完了したら、あとは担当者におまかせ」

多くの結婚相談所サイトでは、そう考えがちです。でも実は、入会完了後こそユーザーの情報探索意欲が高まるタイミング。サイトの中でどんな情報を探しているのか、データを見てみました。

その結果、入会後のユーザーが特に関心を持つコンテンツは、以下のような内容であると整理しました。

 

  • 活動の具体的な進め方(プロフィール作成のコツ、写真選びのポイント)
  • 費用や期間に関する詳細情報(追加料金の有無、平均的な活動期間)
  • 実際の成功事例や体験談
  • お見合い・デートのマナーや基本情報

 

興味深いのは、入会完了後のユーザーが「基本的な情報」に改めて立ち返る傾向があること。「この選択で良かったのか」「これからどう進めていけばいいのか」という気持ちから、より具体的で実践的、かつ基本的な情報を求めているのが見えてきます。

 

入会後に生まれる新たな情報ニーズは、大きく3つに分類できました。

カテゴリ 具体的な内容 特徴
実践的なノウハウ ・プロフィール作成の具体的な方法
・最初の面談での心構え
・お見合い・デートでの振る舞い方
すぐに必要となる実践的な情報
選択の確認材料 ・他会員の体験談
・具体的な成功事例
・平均的な成婚までの期間
自身の選択の正しさを確認するための情報
活動のイメージ作り ・具体的な活動ステップ
・担当者とのコミュニケーション方法
・トラブル対応の事例
今後の活動をイメージするための情報

これらの「知りたい」気持ちに応えられる動線を適切に設計すれば、ユーザーの不安を解消し、スムーズな活動開始をサポートすることができるのではないかと考えたのです。


“次の一歩”をデータから知る

「知りたい理由は何なのか」「入会完了後のユーザーは、どんな情報を探しているのか?」

 

この問いに答えるため、入会完了ページを閲覧したユーザーの行動を分析してみました。同一セッション内での回遊はあまり多くないものの、別セッションでの閲覧行動から、興味深いパターンが見えてきました。

 

入会完了者の行動分析

閲覧数の多い記事を分類してみると、大きく5つのカテゴリに分けられました。

カテゴリ 記事タイトル例 閲覧数
活動の基本情報 結婚相談所での活動の流れを徹底解説 243
プロフィール作成のポイントとよくある失敗例 198
具体的なノウハウ お見合い前の準備と心構え:元カウンセラーが解説 167
写真の選び方・撮り方:必ずおさえたい3つのコツ 165
費用関連 結婚相談所の料金システム完全ガイド 142
かかる費用の目安:ケース別シミュレーション 128
成功事例・体験談 入会から成婚までの道のり:30代女性の場合 96
実際にかかった期間と費用:会員様の声 89
不安解消・Q&A よくある心配や不安について:カウンセラーが回答 76
活動で困ったときの対処法 72

※閲覧数は入会完了ページを閲覧したユーザーの累計数

 

情報探索行動から見えた動線設計のヒント

特に注目すべきは、これらの記事の閲覧順序です。多くのユーザーは、まず具体的なノウハウ系の記事を読み、その後、基本情報や費用に関する記事にさかのぼって確認する傾向が見られました。

また、成功事例や体験談は、活動の初期段階から継続的に閲覧される傾向にあります。具体的なイメージを掴みたい、自分の選択が正しかったことを確認したい、という心理が読み取れますね。

このような閲覧パターンから見えてきた、効果的な動線設計の仮説。そのポイントは以下の3つです。

 

Point 1】実践的な情報を入り口に

入会完了直後のユーザーが最も求めているのは、「次に何をすればいいのか」という具体的なアクションです。写真の選び方やプロフィール作成など、すぐに取り組める実践的な情報を優先して案内することで、自然な動線の入り口となるのではと考えました。

 

【Point 2】基本情報へのスムーズな誘導

実践的な記事を読んでいるうちに生まれる「もっと詳しく知りたい」という気持ち。その流れに沿って、関連する基礎知識へ自然に誘導できる構成を心がけました。具体的なところと基本のパート、その行き来がスムーズにできる動線設計がポイントになります。

 

【Point 3】成功事例を分かりやすく配置

ユーザーの不安を解消し、具体的なイメージを持ってもらうために、成功事例は重要な役割を果たします。各ステップに関連する成功事例を効果的に配置することで、「自分もできそう」という気持ちをサポートできるのではと考えました。

 

このように、「実践」「基本」「事例」、この3つの要素をバランスよく配置することで、ユーザーの情報探索をスムーズにサポートできるのでは?という仮説を持つことができました。

 

動線設計を見直す

つぎに、これらの分析をもとに、入会完了ページからの動線設計を見直してみました。

具体的には、入会完了後によく読まれている記事(上位3〜5記事)へのリンクを、完了ページ内に配置。「次に読みたい」と思われる記事へスムーズに誘導できる動線を設計しました。

とくに注目したのは、「お見合いシステムの使い方」「成婚までのステップ」「料金プラン詳細」といった、活動に必要な基本情報が集まったメインコンテンツへの動線です。メインコンテンツのこれらのページは入会後の活動を具体的にイメージし、スムーズに開始するために重要な情報が詰まっている、サイトのキモの部分です。

 

施策のポイントは、ユーザーの気持ちに寄り添ったリンクの見せ方です。たとえばCTAの文言は「おすすめ記事」という形式的な紹介ではなく、

「まず確認しておきたい方へ」

  • お見合いシステムの詳しい使い方
  • 成婚までの具体的なステップ
  • 活動にかかる費用の詳細

「すぐに始めたい方へ」

  • プロフィール作成の具体的な手順とコツ
  • お見合い申し込みの流れ

といった詳細な形をとりました。

 

このような動線の見直しにより、以下のような改善結果となりました。

  • メインコンテンツ(システム説明・ステップ紹介・料金案内)への流入が156%増加(230回→589回)
  • リンク対象記事への訪問が平均で825%増加
  • サイト内での回遊率が大幅に向上

とくに注目すべきは、この改善が単なる数値の向上だけでなく、ユーザーの活動開始をよりスムーズにサポートすることにもつながったのではという点です。入会後の不安や疑問に、適切なタイミングで答えられる動線を用意することで、より充実したユーザー体験を提供できるようになったと考えています。

 

検索の旅をサポートするために

私たちが提唱する検索インタラクションモデルの中で、特にLand(着地)とSurf(回遊)は、ユーザーの「知りたい」気持ちに寄り添うフェーズです。

今回の施策を通じて、あらためて見えてきたのは、「入会完了」は情報探索の終わりではなく、新しい旅の始まりだということ。入会を決意したユーザーの中には、まだたくさんの「知りたい」「確認したい」という思いが残っているのですね。

その思いに応えるための動線設計は、決して難しいものではありません。ユーザーの行動データに耳を傾け、「次の一歩」を予測し、適切なタイミングで必要な情報を提供する。そんなシンプルな心がけが、大きな数字の改善につながりました。

フレームワークはシンプルですが、その実践には「ユーザーの気持ちに寄り添う」という姿勢が何より大切です。今回の事例が、皆さんのサイト改善のヒントになれば幸いです。

 

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