こんにちは、JADEのコンサルタントの郡山です。
「GA4をWebマーケティングに役立てたいが、独学で実務に活かすことは難しい」
そんな声をよく耳にします。
BigQueryへエクスポートをして、カスタム設定やダッシュボードも一通り揃えた環境でGA4を活用できる体制まで築ければ理想的です。
ですが、まずはGA4管理画面でできることをひとつずつ理解・実践していくノウハウをお伝えすることに意義があるのではと感じています。
そのような思いから、JADEブログで毎月1回「Webマーケティングの担当者がGA4を活用するための、現場で役立つノウハウ」を発信することにしました。
今回はGA4の探索レポートで利用できる「セグメント」の作成例を挙げながら、活用方法について解説します。
セグメントの基礎知識や、保存できる機能についてはこちらをどうぞ。
これまでセグメントを使ったことがない方には、かなり分量も多く重めの内容かも知れませんが、このページをよく読んで理解していただくと、「GA4をWebマーケティングで役立ててます」と言えるような分析がきっとできるようになるかと思います。
どんなシーンでセグメントを使うのか?
セグメントという言葉をはじめてお聞きした方も多いかもしれません。そこで、この記事の後半で説明するセグメントを活用できるケースをいくつかご紹介します。
- 「サイト内のすべてのユーザーと特定の行動が発生したユーザーを比較してみたい」
- 「特定のページを閲覧したユーザーはサイト内でどの他のページを閲覧しているのか知りたい」
- 「1人のユーザーが何回もキャンペーンページを閲覧しているのか確認したい」
- 「お問い合わせ完了したユーザーがサイト内で回遊した動きが気になる」
- 「ソーシャルメディア広告の費用対効果を算出したい
上記のような、データに対して具体例を指定して気になることや、仮説に対してどのような結果を得られるかといったデータへのアプローチとして、下記があげられます。
- 現状に課題があるか、探す目的でデータを集計する【データ探索】
- 仮説や目的を定義して、データで立証できるのか確認する【仮説の検証】
このようなアドホック分析を行う際に、探索レポートのセグメント機能が役立つことが多いです。
セグメントは「〇〇という行動をしたユーザー」「✕✕という行動をしたセッション」など、GA4で集計する対象を絞り込む・比較することができるとても便利な機能です。
セグメント作成のポイント
GA4のセグメントは、ユーザー・セッション・イベントの粒度で作成することができます。
順に作成例と活用方法について触れていきたいと思います。
セグメントを保存・共有して運用したいものを考える
無償版のGA4プロパティでは、セグメントを50個まで保存することが可能です。
各プロパティごとで頻繁に利用するセグメントは異なるため、GA4のデータを利用するステークホルダーと「どんなデータ抽出をすることが多いか」といった会話をしておくと、設計したいセグメントのイメージが掴みやすいと思います。
また、どのプロパティでも採用しやすい = アドホック分析で利用頻度が高いセグメントを数パターン把握しておけば、作成例や活用イメージを提示して会話できます。
今回はユーザー・セッション・イベントのスコープごとで作成例をいくつか紹介します。
セグメントの条件として利用しやすいパターン
セグメントは、ユーザー全体のデータを集計対象とするのではなく「抽出条件と一致したデータ」を集計対象とする機能です。
条件として利用しやすいのは主に下記のパターンです。
- ユーザーセグメント
- 対象ページを閲覧した(例:page_viewイベント × page_location)
- 対象イベントが発生した(例:対象イベント又は指標 で指定)
- 対象イベントが◯回発生した(例:対象イベント又は指標 が◯回以上)
- 対象イベントが指定した順序で発生した(例:ページAのpage_view → ページBのpage_view)
- 対象イベントが指定した期間内に発生した(例:対象イベントのイベント数の条件で「期間」が直近7日以内を指定)
- 新規/リピーターのユーザーまたはセッション(例:セッション番号が1の初回訪問セッション)
- セッションセグメント
- 対象ページからセッションを開始した(例: ランディング ページ + クエリ文字列 )
- 特定の参照元経由で訪問した(例:セッションのデフォルトチャネルグループがPaid Searchのセッション)
ユーザーセグメント、またはセッションセグメントを作成するケースでは、上記のパターンの中からルールを設計しやすいかと思います。
イベントセグメントは使い方が少し特殊です。次の段落で説明します。
イベントセグメントの作成・活用例
では、まずはイベントセグメントです。
イベントセグメントは、GA4で計測されるデータの最小単位である「イベント」に直接フィルタを適用するスコープです。
01. すべてのイベントを対象とするイベントセグメント(≒すべてのユーザーセグメント)
- 指定する条件:イベント名 > 次の正規表現に一致 > .*
「すべてのイベントを対象とするセグメント」なので、計測されたすべてのデータを対象としたセグメントとなります。
探索レポートではセグメントを同時に4つまでセットして集計することが可能です。
セグメントごとの実績を比較する際、セグメントを適用していないすべてのユーザーを対象とした元データと比較したいケースも多いため、どのGA4プロパティでも利用しやすいと考えられます。
旧バージョンのGA(ユニバーサルアナリティクス)の「すべてのユーザー」セグメントと同じような使い方ですね。
また、このセグメントはすべてのイベントを対象とする条件なので、条件を何も指定しないセグメントを作成しても同じ結果になります。
前述の通り、探索レポートで複数のセグメントを比較する際に便利なセグメントです。
すべてのユーザー(イベント)を対象とした母数となるデータと、各セグメントの実績を比較することができます。
また、上級者向けの活用例としては「集計前のテーブル」を参照した集計を試みることができます。
GA4 UIでは様々な集計処理が適用された結果が表示されます。「(other)」行や、「(data deleted)」行について調査する際などレアケースでも活用できるセグメントです。
02. LPが (not set) のイベントを抽出するイベントセグメント
- 指定する条件: ランディング ページ + クエリ文字列 > 完全一致 > (not set)
ランディングページが判定できなかった (not set)のデータを抽出するセグメントです。
サイト側の仕様や、計測タグの実装ミス、GA4管理画面で作成したオーディエンストリガーの影響などで(not set)のデータが想定上に肥大化していないか、チェックする際に利用することを想定しています。
03. フィルタ機能の代替となるイベントセグメント
- 指定する条件_1:セッション番号 > 完全一致 > 1
- 指定する条件_2:page_view > page_location > 含む > 任意のページのURL
たとえば、「初回訪問時に閲覧された記事ページ」の表示回数を探索レポートで集計する場合、カスタムディメンション「ga_session_number」を作成していれば、作成した以降の期間では訪問回数ごとのイベント数を集計可能です。
ですが、カスタムディメンションの実装前の期間ではフィルタ機能で訪問回数(ga_session_number)を使った条件の定義ができません。
探索レポートのセグメント機能では、「セッション番号」という訪問回数と同義のフィールドが条件として利用できます。
セッション番号を条件として利用したイベントセグメントを作成しておけば、適用するだけで「訪問回数が1回目 かつ 記事ページのURLのpage_viewイベントだけを抽出する」というフィルタを複数適用する方法と同じデータ抽出を実行してくれます。
カスタムディメンションを利用しなくても、フィルタを複数作成・適用しなくても、セグメントを適用すれば初回訪問時の記事ページの表示回数をすぐに集計できるようになりました。
すべてのユーザーを指定するセグメント(E_all event)と比較すると、どの記事ページが初回訪問時に多く閲覧されている比率が高いのか確認しやすくなりますね。
このように、フィルタ機能で頻繁に設定する条件があり「複数のフィルタを作成する必要がある」「ga_session_numberやカスタムイベントなどを実装する前の期間をフィルタする必要がある」などのケースでは、そのようなフィルタ機能を代替するイベントセグメントが有効かもしれません。
ユーザー・セッションセグメントの作成・活用例
続いてユーザーセグメントとセッションセグメントです。
セッションセグメントは訪問回数ごとに記録される「セッション」単位でデータを抽出するスコープです。
ユーザーセグメントはデータを抽出する条件を満たしたユーザーのすべてのデータを抽出するスコープです。
ユーザー単位で評価したいのか、セッション単位で評価したいのかといったニーズに応じて使い分けるとよいでしょう。それぞれのセグメントで利用しやすい作成例をいくつかご紹介します。
04. 特定のページを閲覧したユーザーセグメント
- 指定する条件:page_view > page_location > 含む > 任意のページのURL
非常にシンプルな条件なので、セグメント作成に慣れていない方はまずこの条件パターンでいくつかセグメントを作ってみると学びやすいと思います。
事業概要や記事コンテンツ、お問い合わせフォーム、お問い合わせのサンクスページなど、主要なページを閲覧したという条件だけでも非常に多くのセグメントが検討できます。
05. 特定のページを◯回閲覧したユーザーセグメント
- ユーザーセグメント作成画面でデフォルト表示される条件を削除
- 「含めるシーケンスを追加」をクリック
- ステップ1の条件:page_view > page_location > 含む > 任意のページのURL
- ステップを追加:次の間接的ステップ
- ステップ2の条件:ステップ1と同じ条件
ユーザーセグメントでは「シーケンス」という指定した順序で発生したデータを条件とする機能が利用できます。
これを使って、対象ページのpage_viewイベントが発生したあと、もう一度同じ対象ページでpage_viewイベントが発生したユーザーを抽出するセグメントが作成できます。
作成したセグメントは探索レポート上で複製できるため、2回、3回、4回……と回数が異なる条件のセグメントを作成する手間が省けるようになったのも嬉しいですね。
06. 問い合わせフォームは閲覧したが問い合わせ完了していないユーザーセグメント
- ユーザーセグメント作成画面でデフォルト表示される条件を削除
- 抽出条件:page_view > page_location > 含む > 問い合わせフォームのURL
- 「除外する条件グループを追加」
- 「セグメントから一時的に除外」を「セグメントから完全に除外」へ変更
- 除外条件:page_view > page_location > 含む > 問い合わせサンクスページのURL
セグメントでは、除外するデータを条件として定義することが可能です。
これを利用することで「問い合わせフォームまでは到達したが、問い合わせには至っていない見込み顧客ユーザーのデータ」を抽出するユーザー・セッションセグメントを作成することが可能です。
サンクスページの表示をキーイベントとしてみなす場合は、紹介したようにpage_viewイベントで条件を作成すればよいですが、カスタムイベント等でキーイベントを計測している場合も「〇〇というデータは計測したがキーイベントは計測していない」というユーザー・セッションセグメントが作成できますね。
07. 特定のキーイベントが発生したユーザーセグメント
- 抽出条件:キーイベントです > true
キーイベントが発生したユーザー・セッションを抽出したい場合は「キーイベントです」ディメンションが true という条件でデータを抽出できます。
しかし、キーイベントが複数設定されている場合、それぞれのイベントが発生したセグメントを事前に用意しておくほうが何かと便利です。
- 抽出条件:キーイベントのイベント名を直接指定
資料請求をしたユーザーはどのページを見ているのか
問い合わせをしたユーザーはどのページを見ているのか
会員登録をしたユーザーはどのページを見ているのか
このように、キーイベントとして複数種類のイベントが設定されている場合は、それぞれセグメントを作成しておくと関係者間で探索レポートを利用したコミュニケーションがしやすいケースがありそうですね。
08. 特定のLPに流入したセッションセグメント
- 抽出条件: ランディング ページ + クエリ文字列 > 含む > 任意のURL
広告LPや主要なコンテンツなど、特定のLPへ流入したセッションやユーザーをセグメントに登録しておくと便利です。
2024年11月時点では、探索レポートでLPを集計する際に、「URL末尾にクエリパラメータが付いていな『ランディング ページ』ディメンションや『ランディング ページのコンテンツグループ』ディメンションが利用できない」という懸念があります。
ですが、セグメントで登録しておけば「ランディング ページ + クエリ文字列」ディメンションを含む条件や正規表現の条件でデータ抽出ができるので、代替案として利用できるケースがありそうですね。
09. 特定の参照元で流入したセッションセグメント
- 抽出条件:セッションの参照元、メディア、キャンペーンなど
特定の参照元(流入経路)のサイトを訪問したセッションやユーザーを集計する場合は、セグメントで登録しておくと探索レポートのアドホック分析で手間が省けるケースがありそうです。
セグメント作成画面では「説明」欄にどのような用途・目的なのか記録しておくことができるので、広告の担当者ではないGAユーザーも確認しやすく工夫できます。
プロパティごとにセグメントが保存できる上限50個の枠を圧迫しない程度に、いくつか保存しておくのが良いかなと思います。
10. 特定のイベントを◯回発生したユーザーセグメント
- 抽出条件:任意のイベント名を直接指定 > イベント数(event_count) > 回数指定
ユーザーが商品の購入を複数回してくれるケースや、架電タップやバナーのリンククリックなど、特定のイベントを何回も計測しているユーザーやセッションは、コアユーザーとして傾向を把握することの重要性が高そうです。
purchase イベントには購入金額を指定する value パラメータ等を使った条件でもコアユーザーと判定することができそうですね。
まとめ
GA4は自社のサービスやサイトの仕様、そしてユーザーに適したデータの収集・分析をして活用していくことが望ましいです。
とはいえ「どのサイトでもよく利用する設定や分析手法は無いのか?」「オススメの機能は?といった話題はよく耳にします(僕個人の見解ですが)。
というわけで、GA4でセグメントの保存や複製がしやすくなったタイミングで「どんなセグメントを保存しておくのが良いだろうか」と悩む方の助けになればと思って今回はセグメント作成例を記事にしてみました。
「自分たちが利用するプロパティではどのようなセグメントが必要だろうか?」といった議論をする際にお役に立てば幸いです。
セグメントに限らず「GA4についてJADEに聞いてみたい!」という方は是非下記のウェビナーへ遊びに来てください!
リアルタイムQAで回答していきます。事前質問も受付中です!こちらもよろしくお願いいたします。
また、JADEで開発している「Amethyst」には、GA4のデータを連携して分析しやすくする、「User Analytics」と「Session Explorer」という機能があります。トップページから閲覧開始したセッションはどういう行動をしていたのか、コンバージョンに至ったセッションはどういう順番でどういう行動をしていたのか、難しい設定や知識などなくとも分析できます。
まだベータ版なのですが、デモもご覧いただけますのでぜひお気軽にお問い合わせください!