こんにちは!JADEの垣本です。
JADEではコンサルタントとして様々なお客様のプロジェクトに関わり、主にプロジェクトリードを務めています。
趣味は、マンガの大人買いです。最近よく読むのは悪役令嬢モノです。
今日の記事は、「コンテンツマーケティングを担当しているけど、思うように成果が伸びない……」というお悩みをお持ちの方にぜひ読んでいただきたいと思っています。
特に「誰に向けてコンテンツを作ればいいのかよく分からない」といったお悩みをお持ちの方に、新しいアイデアやヒントをお渡しすることを目指して書きました。
なお、当記事におけるコンテンツは、自然検索流入を増やすことをKPIとしたものを念頭に置いています。
コンテンツを作ることは、ユーザーとコミュニケーションを試みること
検索結果上でいかに上位表示できるか、ということは多くの方にとって大きな関心事項でしょう。しかし私がコンテンツ提案をするとき、上位表示のことは一度忘れることにしています。代わりに考えることは、「どのようなコンテンツを作れば、ユーザーとのコミュニケーションを図れるだろうか?」ということです。
Googleの公式ドキュメントでは以下のように書かれています。
Google 検索で上位に表示されるようにするには、検索エンジンでの掲載順位を引き上げることを主な目的として検索エンジンを第一に考えて作成されコンテンツではなく、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成に注力することをおすすめします。
綺麗事だと思われるかもしれませんが、私は本気でこれを考えたいと思っています。
皆さんがコンテンツを企画される際、たとえば以下のような項目についてお考えになるだろうと思います。これらに対して、どれだけ解像度を上げられるかが勝負です。
- ユーザーは何をしたくて、そのクエリを検索窓に入れたのか?
- 情報を集めたいのか
- 商品を購入したいのか
- 暇を潰したいのか、など
- ユーザーが置かれている状況は、どのようなものか?
- 急いでいるのか
- ゆったり過ごしているときなのか、など
- ユーザーはどのような人か?
- 年齢層、性別
- 関心のあること
- 立場、など
目の前にいる誰かと話すとき、本気でコミュニケーションを取ろうと試みるなら「自分がコミュニケーションを試みようとしている相手はどのような人で、何をしたいのか?どのようにすれば、相手に満足してもらえるか?」といったことを徹底的に考えるのではないかと思います。コンテンツを作るときにも入り口は同じだ、というのが私の考えです。
ユーザーを知るために、広く情報を集めよう
ユーザーのことを知るために、私はまず情報を広く集めるようにしています。そこから徐々に絞り込み、検索結果上の情報と照らし合わせます。それによって、どの情報がコンテンツにおいて重要であるかの優先順位を整理します。
検索結果以外の情報を集める(広い情報収集)
質問投稿サイトやSNS、統計データ、場合によっては学術論文などを探すこともあります。社内でのディスカッション、インタビューなども選択肢となりえます。
定量情報だけをベースとすると、ひとつのトピックに類似した情報があふれている今のインターネットにおいて、ユニークな視点をユーザーに提示することは難しいです。そのため、なるべく一次情報に近づいたり、定性的な情報にも目を向けたりしています。
たとえば、PRしたい商品への言及をSNSで調べたとします。「ほしいけど値段が高くて、手が届かない」という投稿が多く目についたとしましょう。それらを投稿したアカウントを見ていくと、どうやら20代あたりの学生の方が多そうだ、ということも分かったとします。
このとき、コンテンツを届けたい人=学生の方々だと言ってよいでしょうか?
実際に購入してくださる方は、もう少し違う属性なのかもしれません。顧客管理ツールなどのデータから、購入者は30代・会社員が多いということが分かっているとします。そうすると、コンテンツを届けるべき人は30代の社会人だという結論になりそうです。
ただしSNSで得られた情報を完全に捨てるわけではありません。
20代・学生の方、といった属性の方々もコンテンツを見てくださる可能性を頭に入れておきます。その際には商品価格の高さがネガティブなポイントになりそう、ということもイメージできました。できるだけ多くの方にとって、価値あるコンテンツを提供するにはどうしたら良いでしょう?
そう考えると、いまPRしたい商品とは違ったとしても、同じショップで取り扱いのあるエントリーモデルの紹介も盛り込んだらどうだろう……といったアイデアが思いつきます。あるいは憧れのブランドとしてのイメージを保つ、という方向性で「ついに手に入れた、憧れの◯◯」というようなコンテンツにしても良いかも、などとイメージを膨らませていきます。
検索関連のデータを集める(検索チャネルに絞り込んだ情報収集)
検索結果をよく見ることが大切なのは言うまでもありませんが、私は「今の検索結果が、ユーザーにとって最適だとは限らない」と思いながら見ます。もし似たようなコンテンツが1ページ以内にいくつもランクインしているなら、ユーザーは検索結果にうんざりしている可能性すらあります。
検索結果を見るとき、よく気にしている3つのポイントをご紹介します:
- 1位のコンテンツと、それ以外のコンテンツにどのような差があるか
- 多くのコンテンツに共通するものは何か
- 関連する質問、強調スニペット、広告枠など、どのような枠が存在し、どのような情報が入っているか
その他に見るのは、たとえば以下のツールです:
- Google トレンド
- 直近で検索量の増加・減少傾向はあるか、過去5年などで見たときの増減・時期ごとの変化はあるか、などを確認します。検索量が跳ね上がっているタイミングがあれば、何があったかを調べます。
- DS.INSIGHT(Yahoo! の検索データをもとにしたリサーチツール)
- 特定のキーワードを検索した人が、その前後の期間でどのような検索を行ったかが確認できます。「温泉旅行」検索の数日前には「デートスポット」検索をする人たちが一定数いる、などが分かりますので、誰が・いつ・何をしたくてその検索キーワードにたどり着いたかを推測する手助けになります。
広告データも活用する
他にも、大きなヒントとなるのがWeb広告のデータです。
強みとして、実際にトランザクション(購入などの行動)に繋がった検索語句が確認できる、ということがあります。個人情報保護への意識の高まりから、詳細が確認できない検索語句データも増えてきてはいるものの、一定の検索語句が見えるだけでも参考になります。
私はもともとWeb広告運用を専門にしていたため、広告管理画面からデータを出すことに慣れています。しかし、自然検索流入を意図したコンテンツを担当されている方の中では、意外とこれらのデータが活用されていない印象があります。
広告管理画面は自由に触れないケースのほうが多いでしょうし、どんなデータがあるか分からないから依頼のしようがない……というお悩みもあるのかな、と想像しています。
上記のような場合、まず「Web広告における “コンバージョン” が自社の広告アカウントでどのように設定されているか」から確認するのがおすすめです。
Web広告では、広告成果を「コンバージョン」と呼ぶことが多いです。具体的には、商品の購入、資料請求など、ビジネスにおける重要な到達点(通過点)がコンバージョンとして設定されます。
広告の目的にあわせてコンバージョンの定義は変わりますし、1つの広告アカウントで複数のコンバージョンが設定されていることもあります。広告データを見始める前に、必ず運用担当の方などに確認しましょう。
上記をご確認いただいた上で、私がおすすめしたい確認ポイントは以下3つです。Google 広告を想定していますが、他の広告媒体でも近しいデータを確認できることがあります。
検索語句:
- 概要: ユーザーが実際に検索したクエリごとの広告表示回数やクリック数、コンバージョン数などを確認します。
- 活用のヒント:「コンバージョンに繋がっているクエリのうち、クリック数が多い・少ないもの」「クリック数は多いが、コンバージョンに繋がらないクエリ」などの観点でデータを整理してみましょう。コンバージョンに繋がっているクエリに対し、自然検索でヒットしているページがない場合は、新しいコンテンツ作成のヒントにもなります。
- 公式ヘルプ:検索語句レポートについて - Google 広告 ヘルプ
オーディエンス:
- 概要:どのようなユーザーのグループに対して広告が表示され、クリックやコンバージョンに繋がっているか、といったことを確認します。Google 広告には、ユーザーの属性(性別、子どもの有無など)、興味・関心、最近の購入意向などにもとづいたさまざまなオーディエンスが存在します。
- 活用のヒント:商材に直結する興味・関心に限らず、親和性が高いものを探します。たとえば住宅展示場の広告であれば、子育て(特に出産や入学など)に関心のある層からクリック・コンバージョンが多く得られているかもしれません。年齢層なども確認しながら、ユーザーから好まれそうな表現、コンテンツに盛り込むべき内容などのイメージを膨らませることができます。
- 公式ヘルプ:オーディエンス セグメントについて - Google 広告 ヘルプ
広告アセット:
- 概要:広告見出し、説明文、場所情報、通話ボタンなど、広告を構成するさまざまなパーツを「アセット」と呼びます。私は特に、広告見出しと説明文についてデータを確認します。
- 活用のヒント:どんなアセットの表示回数が多いかを確認することで、ユーザーの関心を強く引く表現を推測することができます。たとえば食器について「割れにくい」「安っぽく見えない」「コンパクトに収納」といった3パターンの広告見出しを設定していたとします。この中で「コンパクトに収納」が特に表示されていることが分かれば、重ねても嵩張らないことが伝わる写真をコンテンツ冒頭に置いてみたり、「狭いスペースでも◯枚収納可能」といったセクションを入れる、などのアイデアが出てきそうです。
- 公式ヘルプ:アセットについて - Google 広告 ヘルプ
調査結果をまとめる:何がコンテンツに必要か
様々な方法でユーザーについての調査を行ったら、最後にまとめが必要です。点になっている情報を線にして、必要な情報を過不足なく整理し、優先順位を決めましょう。
- 検索ユーザーの意図を満たすために、絶対に外してはならない情報は何か?
- 逆に、不要な情報は何か?
- 検索時点でのユーザーは何を思っていて、コンテンツを読みながらどのように意識が変わっていくか、あるいは変わらないか?
- どのような順番で何を伝えれば、途中でつまずかずに結論までたどり着けるか?
- このコンテンツだけでは満足できなかったユーザーのために、追加で提供できるコンテンツへの動線はどう設置すべきか?
上記のようなことをコンテンツごとに考えます。何を調べて、その結果どう仮説を立てたのか、ということはドキュメントに残しておきましょう。
コンテンツを公開したあと、さらに磨いていくための土台となります。ドキュメントをもとに、どの仮説が合っていてどの仮説が間違っていたのかを検証していくのが次のステップです。
自社の持つデータを活用し、よりよいコンテンツ作成を
「ユーザーのことを第一に考えましょう」という言葉は、マーケ担当者なら何度も耳にしているだろうと思います。具体的な方法として、今回の記事では広告データの活用をご提案しました。さまざまな情報をもとにして、ユーザーを理解しようと努めることが、私たちコンテンツ企画者に求められていると思います。
1対1のコミュニケーションを行うとき、相手がどのような人で、何に関心があるのかを知っていれば会話を弾ませやすいのと同じです。例え話を入れるとき、相手が好きなスポーツの話を入れると一気に親しみやすさが湧いたり、伝わりやすさが上がったりすることがありますね。私はそれを、コンテンツを作るときにも再現したいと思っています。
ぜひ、社内の各分野のご担当者さまに「ユーザーのことをもっと知りたいので、情報交換しましょう」といったお声がけをしてみてください。コンテンツ側の人だからこそ見えていること、広告側の人だからこそ見えていることなど、それぞれにあるはずです。それらを組み合わせることで、今まで見えていなかったユーザー像が見えてくることもあるでしょう。今回の記事が、皆さまにとって新しいコラボレーションのきっかけとなりますように!