何のためにやっているかよくわからなくなる広告設定

広告グループを分けたりキーワードを増やしたり、Web広告で設定できる項目はたくさんありますがそれらは何のためにするものなのか、目的を見失わないようにするための考え方について紹介します

おはようございます、JADEの小西です。

Web広告といいますか主にGoogle 広告の話なのですが、広告運用において何のためにやっているのかよくわからなくなる設定、あると思います。なんとなくいいと思ってした設定、何かやらなければと思ってしていったらなんだか複雑になった設定、特定の広告グループで見ると良くなった気がしてるけど実は全体的にはほぼ結果の変化につながっていない設定、Google 広告の営業さんに言われるがままにしたところ何が変わったんだかよくわからない設定、いろいろな事情もありつつ、あると思います。

そんな、何のためにやっているかわからなくなる設定だけど本来こういうことのためにやることなのだ、という話をいくつかピックアップしました。

広告グループを分ける

個人的によく見かけるのはこちら。結果は特に変わらなくて何かやった感だけ醸し出すことが多いです。

例えばキーワード「靴修理」と「靴修理 秋葉原」とが登録されている広告グループがあり、「靴修理 秋葉原」は成果が良いからこのキーワードだけ抜き取って広告グループを作ろうと考えてそうしたところでキャンペーン全体の結果は特に変わらないということはよくあります。「分けた広告グループで狙いたい検索語句でのクリック数が増えた」と思いきやキャンペーン全体で見たらその検索語句のクリック数は変わっていないという、雰囲気でレポートを見てしまわないようにも注意が必要です。

何のために分けるのか

既存の広告グループを分けること自体には大きな意味はなく、そのうえで何を変えたいのかが大事です。例えば次のことが考えられます。

何を(何が) どうする(どうなる)
Creative 特定のターゲットに対して表示したい広告を限定する
Bid 特定のターゲットに対しての入札単価を上げるあるいは下げる(自動入札にて)
Click 特定の検索語句でのクリック数が増えるor減る。クリック単価が上がるor下がる

広告グループをわけながら広告を変えよう、と思いきやキーワードごとの広告カスタマイザで対応できることもあるでしょうし、広告グループを新たに作りながらキーワードを新しく作ろうと思いきや既存の広告グループにキーワード追加すればいいだけのこともあります。

広告グループを分けようと考えるところからはじめることをやめてみましょう。

レスポンシブ検索広告のアセットをとにかく上限まで作る

基本的にはなるべく多く設定しておいたほうがいいだろうとは考えられますが、アセットが十分に設定されていたほうがいいのは、該当の広告グループにヒットするべき検索語句それぞれで十分に広告が表示されてクリックが発生するようにするためであると言えます。それがなされていなければ増やしたほうがいいですし、十分に達成されているのであれば増やす意味はあまりないでしょう。

何のために作るのか

何を(何が) どうする(どうなる)
Creative 設定した複数のターゲットそれぞれに対する適切な広告(アセット)を作る
Click 狙った検索語句によるクリックが発生するor増える

ただ単に数多く作ることに大きな意味はなく、数より、訴求や表現などのパターンが十分網羅されているかが大事です。すると結果的に数が増えることも多いとは思います。

ちなみに管理画面で確認できる「広告の有効性」もあくまで目安なのでこれ自体を上げることを目標にしてはいけませんが、これは機械的ながらも設定したキーワードに応じたアセットが十分にあるか、表現に独自性があるかということを判定してくれるので参考とするには便利なものです。

キーワードをたくさん作る

最近はあまり聞かなくはなりましたが10年くらい前まではキーワード◯◯万個入れてます、という話はよく聞いたものです。最近でこそそんな話は聞かなくなりましたが、しかし設定しているキーワード一覧を共有したら「これだけしかないのですか」と言われて見かけのためだけに無駄に増やしておく対応を泣く泣くする広告代行業者さんもいるのではないかと想像できます。

重要なのは狙うべき検索語句に的確にリーチできるかどうかということであってキーワードの数自体は重要な問題ではありません。数が少ないから増やそうという、数だけに着目した取り組みは間違っています。

何のために作るのか

何を(何が) どうする(どうなる)
Target これまでリーチできていない狙うべきターゲットにリーチするための設定を増やす
Click これまでリーチできていなかった検索語句によるクリックが発生する

完全一致キーワードですら部分一致化してきている今、似ているキーワードを増やしたところでたいして結果が変わらないということはよくあります。キーワードを増やしたことで、これまでクリックが発生していなかったユーザーや検索語句などによるクリックが増えているかどうかについて着目しましょう。

コンバージョンのあった検索語句をキーワードとして登録する

コンバージョンに至った検索語句と同じ文字列でキーワードを登録してみたところその検索語句のクリック数は増えなかったということはよくあります。もともと別のキーワードに十分に部分一致でヒットしてクリックを得ていた検索語句なのであれば、改めてキーワードとして登録すること自体は何も悪いことではありません、しかし得たい結果を得るためにするべきことはこの場合他にあります。

本当は何をするべきなのか

何を(何が) どうする(どうなる)
Creative コンバージョンに至る検索語句と関連性の高い広告及びランディングページを作る
Bid コンバージョンに至る検索語句のとき十分入札単価が高まるように入札設定を変える
Click コンバージョンに至る検索語句のクリック数が増える

恐らくこの作業で得たい結果はコンバージョンに至る検索語句でのクリックが増えることのはずなので、広告の設定をするべきです。また、自動であれ手動であれ対象の検索語句に対して十分な単価で入札できていないと考えられる場合は入札に関する設定も変更するべきです。

配信対象地域ごとにキャンペーンを分ける

広告配信をしたい都道府府県が複数あって、その都道府県単位で一つずつキャンペーンを作るということがあると思います。もともとは何かしらの理由があってそのようにしたものの、結局配信する広告は同じで、CPA良ければどの地域で結果が出ても良い、ということでなぜ地域単位でキャンペーンをわけているのだろう?ということになるのも、よく見かけます。

何のために分けるのか

何を(何が) どうする(どうなる)
Creative 動的には生成できない、各地域ごとに適した広告を作る
Bid 自動入札利用の前提で、各地域ごとに入札単価をコントロールする

検索広告であれば、地域の挿入機能を使えば対象地域によって地名を動的に挿入することができます。地名を含むキーワードであれば、広告カスタマイザで任意の文字列を挿入できます。もしこれで対応できる広告なのであれば1キャンペーンで対応できます。そうでなければキャンペーンを分ける必要があります

各地域ごとの入札単価は自動入札にすべて任せる、あるいは手動で設定するのであれば1キャンペーンで対応できます。もし、自動入札は使いたいけれども目標CPAや目標ROASなどは地域によって変えたいということであればキャンペーンを分ける必要があります。

地域ごとに何の設定をしたいのかよく整理して、分けている意味がなさそうだと思えたら思い切って1つにまとめましょう。

広告専用のランディングページを作る

広告配信をするとなるとそのためにランディングページを作り、広告配信後も結果を改善するためにそのランディングページを変えていこうと考えることはよくあると思います。実際には、Webサイトに良いコンテンツがあればそちらのほうがコンバージョン率が高いということもよくあります。いくつかの重要なコンテンツがまとまっていて見たいページへストレスなく遷移できるトップページ、充実した商品一覧ページ、特長をきれいにまとめた商品詳細ページなど、広告のランディングページとして適切なページがすでにWebサイト内にあることはよくありますし、ないなら広告用のランディングページに力を入れるよりWebサイト全体に手を入れるべきということもよくあります。

何のために作るのか、作るべきなのか

広告専用のランディングページを作るべきと考える前に、良いページを用意することで何を解決したいのかをまず整理しましょう。

何を(何が) どうする(どうなる)
Creative ターゲットにとって魅力的であったり課題を解決できそうだったりするページを作る
Landing ランディング直後のユーザー体験が良くなる。ユーザー体験向上により広告品質が上がる

作り出したい状況を作れるならば広告専用のランディングページである必要は一切ありません。広告用にあえて用意しなければ作れないような広告体験なのであれば、作りましょう。

予算制限をかけないようにする

個人的には長らく、基本的には予算制限はかかっていない状態にするべきと考えてきましたが、ここ最近は必ずしもそうではないし気にするべきではないケースも増えていると思っています。

予算制限をかけないというのはとにかく予算設定を上げようということではなく、例えば1日に使える費用が1,000円だとして、クリック単価100円なら10クリックで予算制限がかかるところ、クリック単価50円にしたら同じ総額1,000円の中で最大2倍のクリック数が得られることになり、制限がかからず総額1,000円になっているちょうどいい入札単価にして最大限にクリックが得られる状態にしようということです。広告と検索語句とが変わらない前提であればクリック数が多いほうがコンバージョン数は多いはずで、実際、以前は多かったです。

しかし、これは個人的な経験則ですが少なくともこの4~5年の間に、クリックを得ている広告と検索語句とが変わらないままクリック単価が上がりそれ以上にコンバージョン率が高まりCPAは下がる、という事象を確認することが増えてきました。この事象は入札戦略を変更したときに起きます。同じ広告と検索語句をクリックするユーザーの中でもコンバージョンに至りやすいユーザーが誰かは異なり、コンバージョンに至りやすいユーザーが検索したときに高い入札をしてオークションに参加し広告表示をする、ということがコンバージョンベースの入札戦略では理論上可能なはずで、それが起きているのだろうと推測しています。レポートで確認できる限りでは検索語句やオーディエンスなどどのシグナルにおいて変化が起きたのかがわからず、レポートに現れないところで変化が起きているとしか思えないからです。

何のために予算制限をかけないようにするのか

クリック数を多く得ることを優先するのであればやはり制限はかからないようにするべきです。

何を(何が) どうする(どうなる)
Bid 予算内で最大限クリック数を得られる単価で入札する
Click 予算内で得られる最大限のクリックが発生する

これはクリック数の最大化を選べば簡単に達成できることが多いですが、検索語句をコントロールするのが難しくなります。検索語句をコントロールしながら最大限クリック数を得るためには拡張クリック単価のほうが達成しやすいケースがあります。

何のために予算制限を気にしすぎないほうがいいのか

コンバージョンの多さを求めるのであれば、予算制限が0%であるかどうかではなく、結果的にCPAが安くコンバージョン数が多く得られるちょうどいい入札設定を見つけるべきです。

何を(何が) どうする(どうなる)
Bid コンバージョンしやすいユーザーに対して広告表示しうる十分な単価で入札されるよう設定する
Acquisition CPAが下がりコンバージョンが増える

例えば目標コンバージョン単価制の場合、コンバージョンがほぼ発生していないけれども予算制限が20%ほどかかっているので目標CPAを上げてもクリック単価が上がってさらに予算制限率が高まるだけでコンバージョンは増えないかも知れないと考えられるかも知れませんが、これでコンバージョンが増えるというケースはあります。しかし使える予算はそれ以上上げられない場合、予算制限がかかっている状態であることは仕方ないということになります。

どちらかというと予算制限はかかっていない状態のほうが望ましいケースは今も多いはずとは思っていますが、必ずしもそれが成果を最大化することにつながるのかどうか、同じ広告アカウントでもこの傾向が変わったことがあるのでぜひ過去を信じすぎず未来の可能性を探ってほしいと思います。

設定内容と、作り出したい結果とを意識するのがおすすめ

何か広告施策をする際には次のことを意識すると良いです。

  • 配信結果:どの項目にどういう変化をもたらしたいか
  • 設定内容:望む結果のために何をするか

「広告グループを分ける」なんていう施策はありませんし「広告グループを分けてより注力キーワードを強化する」とか「最適化する」とか「学習を促す」とかいう施策もありません。

広告グループを分けるのはなんのためにするのか、多くの場合これは設定としては Creative か Bid のためであり、広告グループを分けるのはそのための一つの過程でしかありません。

そんなことを考えるときに役立つフレームワークがありまして、以前ブログに書きました。

この広告グループ、なんで分けるの?Cのため?Bのため?という会話ができるようになって便利です。このフレームワークがすべてを解決するわけではありませんしこれで設定と結果のすべてを語れるわけでもありませんが、何を何のためにするのかを整理するには役立ちます。

ところで、実質的に特に変化をもたらさないはずの無意味な設定でも、単に設定を変えたというだけで結果が良くなることがないわけではありません。単に新たに設定したために広告配信具合が変わり学習にも影響があったということはありうるでしょう。しかしそのようなことを期待して設定しているようでは、安定的に、長期的に、能動的に結果を良くしていくような広告運用は難しいです。

どんな結果を作り出したいのか、そのためにどんな設定をするべきであり、どこがどう変わるかを見るべきなのか、意図をもって結果を作り出せる広告運用者を目指しましょう。