ユニバーサルアナリティクスは2023年7月の終了予定まで1年を切り、GA4の話題もちきりな昨今ですがいかがお過ごしでしょうか。弊社もGA4導入サポート業務が盛んで、なんでgclidついてるのにorganic扱いなんだだの、utm_content はどのディメンションに反映されるかはわかったけどGoogle 広告の「広告」はどこに反映されるの?だの、各コンサルタントから話が飛び交ってます。
そんな中、個人的にはやっぱりユニバーサルアナリティクスに手を伸ばしてしまうときもまだまだあります。そろそろ全く需要のなくなりそうな話ですが、個人的に広告の分析時に特によくみかける注意するべきポイント、3つに絞ってご紹介します。
ランディングページレポートには、広告のリンク先に使っていないURLも現れるものである
例えば、広告のリンク先として次のように2つ使っているとします。
参照元 / メディア | 最終ページURL |
---|---|
google / cpc | /lp001.html |
google / cpc | /lp002.html |
この場合、広告のランディングページとして効果的なページはどのページなのかを調べたいときに、次のようにレポートを表示してみることがあるかと思います。
実際には、どのキーワードあるいはキーワードカテゴリを対象とするか、広告テキストの違いはどう踏まえるかなど様々な要素が掛け合わさるため場合により表の内容は変わりますが、ここでは簡略にします。
表示してみると、次のようなレポートが確認できることが多いかと思います。
参照元 / メディア | ランディングページ | コンバージョン率 |
---|---|---|
google / cpc | /lp001.html | 3.97% |
google / cpc | /lp002.html | 1.26% |
google / cpc | /form/ | 14.21% |
google / cpc | /product/ | 8.07% |
google / cpc | /product/3628.html | 9.23% |
google / cpc | /info/ | 5.31% |
つまり広告のランディングページとして一番効果的なのは、/form/ だ!と判断してしまうところですが、そもそもこれは(このケースでは)広告のリンク先に使っていませんし、他にも広告のリンク先に使っていないURLがたくさん出てきています。
これは何か計測が失敗しているわけではなく、一般的にはこのようになることが自然です。
例えば、Google 広告で訪問して数ページ見て離脱し、30分以上たった後にまたその離脱したページから直接訪問すると上記のようなレポートになります。実際にこのような行動はたくさんあるので、レポートがこうなるのは不思議ではありません。
ユニバーサルアナリティクスの集客レポートの「参照元 / メディア」は、セッション開始時の本当の参照元が direct だったとき、そのユーザーが2回目以降のセッションなのであれば、前回の参照元 / メディア を反映する(※)という仕様です。次のようになります。
※キャンペーン設定情報にて設定されているデフォルトでは6ヶ月間の期間内にて遡り、参照元情報を”継承”する
ユーザーの行動 | セッション回数 | 【本当の】参照元 / メディア | 【レポート上の】参照元 / メディア | ランディングページ |
---|---|---|---|---|
Google 広告経由で lp001.html から訪問 | 1回目 | google / cpc | google / cpc | /lp001.html |
/form/ へ遷移する | 1回目 | google / cpc | google / cpc | /lp001.html |
30分以上何も操作しないでいる | ||||
/form/ を開いていたブラウザをそのまま立ち上げて通信が発生する | 2回目 | direct | google / cpc | /form/ |
会社に向かう電車の中でスマホでGoogle検索して、検索広告あるいは自然検索結果をクリックしてWebサイトを閲覧し、数ページ見て、電車が目的の駅に到着したのでスマホの画面を消して会社へ向かい、昼休みにまたスマホのブラウザを立ち上げてまた見ていたページから閲覧を開始する、といった行動はよくあるものでしょう。
同一ユーザー、同一ブラウザであってもそのネット閲覧の行動はシンプルではなく、ユニバーサルアナリティクスでの仕様ではユーザーの行動を分析するには難しいこともあることを理解しておきたいところです。
では、ランディングページレポートは使えないのかというというとそういうことではなく、広告のリンク先に指定していないURLがランディングページとなってコンバージョン(目標完了あるいはトランザクション)にも至っているとしたらそれは、広告経由で訪問した後にすぐにコンバージョンには至らなかったけれどもまた(directセッションとみなされる条件で)戻ってきてコンバージョンに至ったのかも知れない、ということが読み取れます。広告のリンク先をトップページにしているのに、ランディングページレポートでは商品詳細ページとなっているのであれば商品詳細ページを何度も見てじっくり検討しているのかも知れませんし、フォームとなっているのであればフォームに入力しようかやめようか迷っているのかも知れません。そこからサイトの改善施策を考えることもできることでしょう。
広告の成果が広告の成果でなくなってしまうことがある
次のようなレポートをご覧になったことはありませんでしょうか。
参照元 / メディア | コンバージョン率 |
---|---|
google / cpc | 2.39% |
payments.amazon.co.jp / referral | 75.31% |
>apis.paidy.com / referral | 68.49% |
fep.sps-system.com / referral | 87.01% |
一般的なコンバージョン率の数値からすると驚異的なほどの数値となっている参照元がいくつかあります。
これは、Amazon Pay や楽天ペイなどといった外部決済システムを導入している場合によくあることです。
Google自然検索 → サイトへ訪問 → 商品をカートに入れる → 決済へ進む → 決済システムのページ(外部のドメイン)へ一旦遷移する → 購入したWebサイトへ戻ってくる
このような行動になれば、(決済システムの)外部ドメインからサイト訪問した人が購入完了した、というセッションになるので、トランザクションがカウントされる参照元 / メディアはその外部決済システムのドメイン、になります。
簡略化するとつまり次のような行動である、ということになりますが、
ユニバーサルアナリティクスのレポートでは、恣意的に何も対処しない場合は次の2つのセッションに分割されます。
本来は同一セッションとみなすべきような行動でも、途中で参照元が変わるとそこでセッションが変わり、新しいセッションとなります。
広告経由のセッション内ではトランザクションに至らず、トランザクションに至ったセッションはすべて Amazon Pay 経由のものだ、となってしまいます。
これは、外部決済システムのドメインを参照元除外リストに加えれば解決できます。
すると次のように計測されたことになり、google / cpc にトランザクションがカウントされます。
ただしこの方法の懸念点は、同じ決済システムでもそのドメインは変わることがある、ということです。また、新しい決済システムを追加したときに必ずこの設定をしようと、各関係者が気がつくのもなかなか難しいことでしょう。決済システムだけでなく、ソーシャルログインも同じ問題が発生します。ソーシャルログインは facebook.com や google.com といった、よく実際の参照元になるドメインと同じかサブドメインであることが多いうえに、これらも仕様が変わることがあるため参照元除外の設定で対応する難易度が高めです。
計測ミスを絶対に起こさないようにするのは難いです。確実な解決策ではありませんが、普段からレポートをよく見ておき明らかにおかしな数値になっているかどうかに気がつける感覚を養えるとよいです。
決済システムやソーシャルログインなどがないサイトだとしても次のような行動はよくあるはずです。
こうなると google / organic にトランザクションがカウントされ、広告の成果とは判断しづらくなります。この場合は評価しないか、アシストコンバージョンとしてカウントされる指標で評価するか、考え方は広告の目的によりけりだとは思います。ですが、本来は一回のサイト閲覧にまつわる行動であるとみなしてよい行動だとしても、その行動の中で参照元が変わったらセッションが変わることで2回の行動のように見えることになる、というユニバーサルアナリティクスの特性を理解しておく必要はあるでしょう。
広告単位の分析は難しくなっていっている
どの広告が、どんな人に表示されてクリックされたのかを確認することは重要なことです。
誰にどんな広告を見せるとどんな反応が得られるか、それを確認して、次の広告施策を考えて打ち出していくことができます。
これをするためには次のようなデータを確認します。
- 広告×検索クエリ(検索語句)
- 広告×新規訪問 or リピート訪問
- 広告×デバイス
- 広告×OS
- 広告×ブラウザ
- 広告×曜日
- 広告×時間帯
- 広告×セッション回数
- 広告×地域
これらを確認しやすくするために、こういったレポートを公開しています、ぜひご覧ください。
https://datastudio.google.com/u/0/reporting/93ff2e7a-caa7-49cb-8a98-3c1e10153e5c/page/SCdMB
ただし、この分析は非常に難しくなりました。主には次の理由によるものです。
- 特に重要なデータである検索クエリが、ユニバーサルアナリティクス、GA4共に、反映されなくなってきている(その度合いは広告アカウントによって差がある)
- レスポンシブ検索広告は見出し単位での結果を実質確認できない
- 細かい粒度でのデータが表示されないようになっている。特に、年齢、性別など
検索クエリの多くが表示されない広告アカウントは、GA4でも同様に表示されないようです。
複数の細かいデータをかけ合わせて見ることは、場合によっては個人を特定できるため、昨今のプライバシーの観点からもこれらが見られるようになることはないでしょうし、どちらかというとさらに見られなくなっていくことでしょう。
検索クエリ(広告管理画面では、検索語句)はGoogle 広告の管理画面や、APIで取得するデータ、Looker Studio(旧Google データポータル)へ接続できる公式のデータコネクトによるデータソースのほうが、多くのデータ量を表示できることが確認できます。
今回この記事を書くにあたって、Looker Studio で、Google 広告の「広告×検索キーワード×検索語句」のデータを確認しやすくするためのレポートを作成しました。ぜひご覧ください。
https://datastudio.google.com/u/0/reporting/93ff2e7a-caa7-49cb-8a98-3c1e10153e5c/page/p_vnalsciwzc
なお、執筆時点においてこの方法では、レスポンシブ検索広告の各アセット単位でのキーワードや検索クエリなどを確認することはできません。アセットもテキストは表示できなく、アセット IDしか表示されないので、アセット IDとアセットのテキストとを何かしらの方法で取得してから、データソースとして結合して表示するか、目視で照らし合わせるかしないと、どのアセットかを確認することもできません。
見えづらくなっていくデータは、見れる限りで見て判断するしかない
セッションベースが基本であるユニバーサルアナリティクスはわかりやすくて個人的には好きでしたが、今ではネットユーザーの複雑な行動を計測して分析するには無理があるところも多くなってきています。ユーザーベースを基本に設計されているGA4とうまく付き合っていくべきなのでしょう。まだまだとっつきづらいところも多いですが。
また、かつて自然検索の検索クエリがアクセス解析ツールで見れなくなり、Google サーチコンソールとGoogle アナリティクスとのデータを、横串にはできないもののそれぞれを照らし合わせて見て、見れる限りでのデータを見て判断するしかなくなったのと同様に、広告のデータも複数のソースでデータを確認していくしかないのかも知れません。
GA4が今後どこまでGoogle 広告のデータを表示してくれるか、してくれないかはわかりませんが、Google 広告とGA4との双方を見て、つなぎ合わせて確認できる範囲で確認していくしかありません。
ユニバーサルアナリティクスは一箇所で様々なデータを横串にして見られる便利なものでしたが、これが今後できなくなるすると、データをしっかり分析することで何がどうなったのかを確認するということが、これまでより難しくなります。データをどう読むかは、広告施策をなんとなく考えて取り組むのではなく、しっかりと考え抜かれた仮説に基づいた広告施策であったかどうかにかかってきます。広告は何のために実施するのか、誰からどういう反応を得たいからなのか、今後は今まで以上にしっかりプランを構築して取り組む必要性が高まることでしょう。