2022年6月30日以降(※)、Google 広告 では、検索広告の広告フォーマットとしては拡張テキスト広告が作成できなくなり、レスポンシブ検索広告しか作成できなくなりました。
※厳密には、広告アカウントごとに多少異なります
様々な検索ユーザーの行動による、複雑で多様な広告表示機会に対してどういった広告テキストを表示するか、広告システム全体の進化としての方向性としては理解できます。
しかし、このままだとものすごく不便で不都合が生じ続けます。
ですので、仕様を見直してほしいと強く願っています。
4つ以上のリンク先URLを使いたいときに困る
例えば、
次の4つの商品とそれらの商品詳細ページをあるとします
- コーナーソファ
- リクライニングソファ
- カウチソファ
- ソファーベッド
「ソファ」と検索する人にそれぞれ表示してどれが反応いいか検証したいとします
次のような構成で、1つの広告グループを作りたい、と考えます。
キーワード | 広告テキスト | 広告のリンク先のURL |
---|---|---|
コーナーソファ リクライニングソファ カウチソファ ソファ |
家族、友達みんなで座れる|コーナーソファ | /cornersofa/ |
家に帰ったらまず座っちゃう|リクライニングソファ | /recliningsofa/ | |
どんな体勢もいけちゃう|カウチソファ | /couchsofa/ | |
これが寝室用でいいかもくらいの|ソファーベッド | /sofabed/ |
こうしておけば、「ソファ」という検索クエリに対してそれぞれの商品の広告が配信対象となり、どれが良い結果につながるか、つながらないかを検証できます。
またこの場合、「コーナーソファ」という検索クエリは結果的にはコーナーソファの広告が、「リクライニングソファ」という検索クエリにはリクライニングソファの広告が表示されやすくなることが多く、広告グループをわざわざわける必要もないうえに幅広いクエリそれぞれがそれぞれの広告によしなにヒットして、結果的に良い状況になることは多いです。
しかし1つの広告グループで3つまでしかレスポンシブ検索広告を配信できない!
1つの広告グループ内に4つ以上の広告を作成することはできますが、同時に配信オンにすることができるのは、3つまでです。なので、この内容での広告配信ができません。
ではどうするか、
- 1つの広告&URLごとに、1つの広告グループを作るか?
- しかしこの場合、キーワード「ソファ」はどうしたらいいのか?
- いちいち広告グループを複数存在させるために煩雑になる。設定と管理の工数増、になる
- 1つの広告&URLごとに、1つの広告グループを作りつつ、キーワード「ソファ」はすべての広告グループに追加しておくか?
- キーワード「ソファ」がアカウント内に複数存在することになる
- これが大きな問題かどうか明確ではないけれどもグーグルは推奨していない様子
- 一つのキーワードに集約できるデータをいちいち分散するのはシステムが学習するうえでいいことはなさそうな気がする(実際どうなのか詳しい人いたら教えてほしい)
- キーワード「ソファ」がアカウント内に複数存在することになる
どうやろうとも何かしらの懸念、不都合が生じ、ツラいです。
ろくに分析ができない
これまでだと、例えばこのようになる結果をよく確認できました。
広告テキスト | 検索語句 |
---|---|
転職に有利な資格 | 転職 職業訓練 30代 資格 |
副業にも役立つ資格 | 副業 在宅ワーク クラウドソーシング |
この広告はどういった検索語句で検索する人に表示されてクリックされるのか、ということを確認することができました。そこから、需要と反応を検証し、次の施策を考えることができました。
また、こうなることもよく確認できました。
広告テキスト | セッションの割合 |
---|---|
【公式】JADEソファ | 再訪問者が多い |
お買い得なソファ | 新規訪問者が多い |
各広告は、どういった検索ユーザー(年齢、性別、ブラウザ、OS、これまでの行動履歴など)に表示されたときにクリックされ、コンバージョンに至るのか、Google 広告は学習し、配信するユーザーを選ぶようになります。
この結果を確認することで、こういった人にはこういった広告で反応が取れるのか、ではさらにこうしてみよう、ということを考えることができました。
しかし、これらがレスポンシブ検索広告として一つの広告の中に盛り込まれるしかないことになると、広告テキスト(特に、広告見出し)ごとの結果の確認、分析、検証、が現実的にほとんど不可能、となります。
意図的に、例えば同じような訴求内容の広告見出しだけをセットするレスポンシブ検索広告を複数作成する、あるいは、見出しを3つしか入れずに実質的にほとんど拡張テキスト広告と同じようなものを作る、とすれば広告の配信結果の分析は可能ですが、同時に配信できるのは3つしかないという制限が、複数案の比較、検証を阻みます。
また、コンバージョンはただ単に得られればいいわけではなく、どういったユーザーからコンバージョンを得たいかが、集客戦略上、重要な観点です。
なんとなくコンバージョンがたくさん取れたけど、広告で費用をかけてまで欲しいユーザーからのコンバージョンではなかった、という結果では広告施策としては失敗です。
失敗したのかしてないのかすらわかりづらくなるのはとてもツラいです。
期間限定キャンペーンの広告の事前準備をするときにちょっとめんどくさい
例えば次のようにキャンペーンのスケジュールがあり、広告見出しにキャンペーン内容を書きたいとします。
期間 | キャンペーン内容 |
---|---|
6/1〜6/30 | 全品5%OFF |
7/1〜7/31 | おまけでもう1個 |
8/1〜8/31 | ポイント2倍 |
仮にこれらを事前に予め作成しておきたい(審査上の問題が起きるどうかは別)というとき、同時配信できるのが3つまでであるというだけで、配信しないなら作成はそれ以上できるので、これは可能です。
しかしこの制限によりちょっと面倒な場合があります。
- すでに3つ配信している状態であれば、一旦、どれか一つは停止しないといけない
- すでに配信している3つはそのままにキャンペーン用の広告を追加で配信したい、ということはできないのでいずれか1つを諦めて停止しないといけない
- あるいは、既存の3つのレスポンシブ検索広告のいずれかの中にアセットとして追加することは可能、だがしかし、それだとこの期間限定キャンペーン開始のタイミングで作業してステータスが審査中になってしまう可能性が高い
- 期間限定キャンペーンの文言を見出しに表示した広告と、そうでない広告とで明確に分けて結果を確認したい意向があった場合は、それがしづらく困る
期間限定キャンペーンの内容を予めスケジューリングしておくこともできない
例えば、広告テキストに次のように書いておくことで、
今月は {期間限定キャンペーン.キャンペーン内容}
{} の中に、あらかじめスケジュール指定した文字列を挿入することが可能でした。
これにより、指定した期間にその期間のキャンペーン内容を自動挿入できました。
しかしレスポンシブ検索広告では、挿入はできるのですがスケジュール設定ができません(2022/8/26現在)。
やはり、広告そのもの、あるいは、広告アセットそのものを停止、作成、などするしかなく、面倒です。
この地域の人にはそこではない他の地名を見せたい、ができない
例えば、いくつかの店舗を持つビジネスの広告を配信するとして、お店は、品川店、町田店、名古屋店があったとします。
その場合、こう設定したいということがあるはずです。
ターゲティング地域 | 広告に表示したい文字列 |
---|---|
東京都品川区 | 品川店 |
神奈川県川崎市 | 品川店 |
東京都町田市 | 町田店 |
神奈川県相模原市 | 町田店 |
愛知県名古屋市 | 名古屋店 |
岐阜県岐阜市 | 名古屋店 |
拡張テキスト広告では、広告カスタマイザを活用することで、かなり自由に設定できました。これが、レスポンシブ検索広告の広告カスタマイザの機能ではできません。
レスポンシブ検索広告でも地名を自動挿入する機能はあるのですが、どのターゲット地域にたいしてどういう文字列を挿入するかが任意で決められず、自動です。
例えば次のように構文を書いておけば、
{LOCATION(City)}店
検索したユーザーの地域を判定して、その地域名を自動で挿入してくれます(City だと市区郡、Stateだと都道府県)。
厳密には単純にそう説明できる仕様ではないので詳しくはヘルプを参照していただきたいのですが、しかし基本的には、そこにいる人にそこの地名を見せる、くらいのものであって、そこにいる人にそこではない他の地域名を見せる、ということが、意図通りには設定できません。
また、挿入される文字列はあくまで正式な地域名であり自由に指定できないので、例えば、名古屋の人には「すぺしゃるみらくるなごーや店」という店名を見せたい、ということもできなくて、ツラいです(そんな店名があるかは知りません)。
ブランドポリシーに伴い広告クリエイティブを100%コントロールしなければいけないときに困る
世に出るすべての広告物での表現、表記を、一字一句コントロールしたものでなければいけないプロモーションがあります。
レスポンシブであろうとなかろうとそもそもGoogleの検索広告において体裁を完全にコントロールすることも難しいといえば難しいですが、それでも、見出し1 と見出し2の組み合わせは、予め広告主が決めたものでなければいけないというときが、あります。
レスポンシブ検索広告でもアセットを固定して組み合わせをコントロールすることはできますが、これをするとこの場合もやはり3つしか同時に配信できないという制限があり、3通りの組み合わせしか配信できないことになります。
もっと多くの考えられる組み合わせを配信することで得られた結果を得ることが難しくなります。
Googleには、ぜひこうしてほしいです!
- 1つの広告グループで同時配信できる上限数を上げてほしい、少なくとも10以上は欲しい
- 最終URLも複数設定できるといい、また、URLとアセットとの組み合わせも設定できると、より良い
- アセットのオンオフができるといい。過去のアセットを消去せず、再度使える、あるいは、データが残せると、よい
- 広告アセット単位での細かな配信結果を確認できるといい。例えば、広告アセット&検索語句、広告アセット&オーディエンスリスト、など
- アセットの組み合わせごとの表示回数だけでなく、クリック、コンバージョン、費用までを確認したい
- 広告アセットIDを、ValueTrackパラメーターに表示できるといい
- 広告カスタマイザの仕様を、拡張テキスト広告と同等のものにしてほしい
- しかし、レスポンシブ検索広告の広告カスタマイザは設定が楽で使いやすい。使いやすさと機能性を両立してもらえるのが理想
やりたいことを思い通りに実現しようとしたらキャンペーンを細分化するしかなくなってしまいます。しなくていいデータの分散が発生するようなキャンペーン構成を、それこそGoogle 自身が望まないはずです。
広告は、単にコンバージョンが多く得られればいいわけではない
お金を支払って表示するという広告制作物なのに、どんどんと表示をコントロールしにくいものにしていっていることが、納得できません。
レスポンシブ検索広告に限らず、Google 広告は、全般的にアンコントローラブルにしていっているという方向性が、解せません。
単にコンバージョンを優先する場合、必ずしもコントロールするべきではないということは十分すぎるほど理解していますが、広告の成果というのは、広告からたどり着いたWebサイト上の特定のポイントまで至ったという意味でのコンバージョンがすべて、ではないですし、すべての広告主にとって広告の成果というものはコンバージョンなのである、とGoogleが決めるべきものでもありません。
広告で目指したいことによっては、コントロールしなければいけないこともあります。
広告のゴールはたいていコンバージョンではあるものの、必ずしもコンバージョンというわけではないですし、目指すは必ずしもCPA、ではありません。
ぜひGoogleには、Google 広告をアンコントローラブルなものにしていくのではなく、コントロールしないことによって生み出せる素晴らしい結果も望め、かつ、コントローラブルでもあるシステムにしていってほしい、と願います。
もちろん、広告運用者もまた、アンコントローラブルなものを頭ごなしに拒否するのではなく、コントロールしたいこととコントロールしないほうがいいこととをどちらもしっかり理解して活用する姿勢を持つことが、必要であるとも言えます。