GA4の「イベント」と「指標」の違いとは

GA4を導入後、自社サイトに適したカスタムイベントを実装して活用しやすくしていく際、「イベント」より「指標」としてデータを記録する方が適していることがよくあります。

特にレポート作成の場面において、「指標にしておいてよかった」と思う場面は多々あります。

そんなわけで今回は「イベント」と「指標」の違いについて少し解説してみます。

はじめに

GA4を使う人はGA4に詳しくなりたいんじゃなくて、GA4を使ってサービス利用者のユーザー体験を改善したり、WebマーケティングのKPIを達成したいんですよね。 (稀に趣味でGA4に詳しくなりたい人もいると思いますが)

  1. GA4がどんな仕組みでデータを記録しているのか
  2. 自社サービスに沿った独自のデータを収集するにはどんな手段があるのか
  3. 集計やダッシュボードづくりの難易度や工数はどの程度のものか

 

このあたりがざっくりとでもイメージできれば、自分たちで学び活用するか支援企業などに外注しサポートしてもらうべきかなど判断しやすいと思います。

このブログでは、1と2について初心者の方向けにご説明します。

GA4のデータ収集・実装について理解できていれば、「どのようなデータを集計したいのか」という要件を把握する解像度が上がるためです。

(3は次のステップのお話なので、また別の機会に)

 

GA4は旧バージョンのユニバーサルアナリティクスと比べ「データを設計するための技術的な知識」や「データを収集・集計する仕様の理解」がより重要になったと言われています。

GA4がどのような仕組みでデータを記録しているのか基礎知識として理解できていると、レポートを作成する際に役立つと思います。

GA4で実装や設定の調整をすることはないけど、データを集計をしたいという方は是非読んでみてください。

 

タグ(JavaScript)は何をしているのか

GA4を計測するためのGoogleタグやGTMタグは、基本的には「ページ(URL)を開くときに動作して、ユーザー数やページビュー数などのデータをGA4のサーバーに送信する」ということをしてくれてます。基本的には。

このときに送信されるデータをビーコンと呼びますが、送信している中身は「イベント・パラメータ」という構造になっています。

 

イベント・パラメータ・値とは

サイトを訪問した際に記録される「session_start」イベントや、ページが表示された際に記録される「page_view」イベントなど、GA4はウェブサイトやアプリ上のユーザー行動1つ1つを【イベント】という単位のデータで送信します。

また、「どのページで記録したイベントなのか」など補足する情報として【パラメータ】がイベントには紐づいています。

 

指標・ディメンション・値(基数)とは

では、GA4の管理画面ではイベントとパラメータとその値が、そのまま表示されているのかというとそうではありません。

GA4管理画面で扱える基本的なデータは「指標」と「ディメンション」の2つです。

  • 指標=イベントで記録されたユーザー行動を集計した数値形式のデータ

  • ディメンション=パラメータで記録されたユーザー行動を記録したテキスト形式のデータ

 

このように、サイトに実装されたタグからサーバーへ送信されたイベント・パラメータ・値はGA4独自の様々な処理を経て、対応する「指標」として集計され「ディメンション」「値」として格納されます。(基数とは、固有の値の数を指す用語)

「イベント・パラメータ」と「指標・ディメンション」の違い

イベントと指標は何が違うのか?

パラメータとディメンションは何が違うのか?

という説明が最初にあれば、GA4を学び始めた初心者はGA4の苦手意識が少なくなります。(多分おそらく)

まずは「イベント」と「指標」の違いから見てみましょう。

  • 「イベント名」ディメンションの値が「page_view」の「イベント数」指標
  • 「表示回数」指標

イベントごとの実績を確認するためには、イベント名を記録する「イベント名」ディメンションと「イベント数」指標をセットする必要があります。

一方、page_viewイベントの実績を記録するための「表示回数」指標でも同じ結果を確認することができます。

 

このように、タグから送信されたデータの実績を確認するにはイベントとパラメータに対応した指標やディメンションを用意する必要があります。

イベントとは、タグから送信されたデータ(ビーコン)の情報であり、指標とはそれを記録するための箱だと考えるとわかりやすいかと思います。

 

次に、「パラメータ」と「ディメンション」の違いを見てみましょう。

  • 各イベントに紐づく、ユーザーごとの訪問回数を記録する「ga_session_number」パラメータ
  • カスタムディメンション「訪問回数」

ga_session_numberパラメータはどのイベントにも紐づいているにも関わらず、デフォルトでは対応するディメンションが存在しないため「訪問回数」を判定することができません。

「パラメータ名」「パラメータ値」というディメンションも存在しないため、やはり判定はできません。

 

そのような場合、カスタムディメンションとしてga_session_numberパラメータの値を記録する「訪問回数」ディメンションを登録すると、GA4管理画面で値を確認することができるようになります。

パラメータだけ送信されていても、対応する箱がないとGA4管理画面では表示できないという例ですね。

 

カスタムイベントとカスタム指標の違い

カスタムイベントとは

カスタムイベントとは「デフォルトの実装・設定でGoogleタグから記録されるイベントとは別に、独自に定義した計測条件を満たした際に追加で記録するイベント」のことです。

要は、任意のルールで、任意の名称の追加イベントをタグからサーバーへ送信できるようにする機能です。

  • 例)資料請求の申し込み完了ページが表示された際に「contact_complete」という独自の名称のイベントを計測する

サーバーに送信されたイベントデータで、

  • イベント名を判定する「event_name」パラメータが「page_view」である
  • 上記のイベントに紐づく「page_location」パラメータが「資料請求の完了ページのURL」である

このようなデータが送信された際、「contact_complete」イベントを記録するという設定ですね。

 

カスタム指標とは

カスタム指標とは「サーバーに送信されたイベントに紐づくパラメータの内、特定のパラメータを任意の名称の指標として表示する」ことです。

要は、任意のパラメータと値を、任意の名称の「指標」として登録する機能です。

  • 例)資料請求の申し込み完了ページが表示された際に「contact_complete」という独自の名称のイベントを計測し、「custom_contact_complete」パラメータで 1 という値を記録する。
  • GA4管理画面でパラメータをカスタム指標「custom_contact_complete」として登録する。

 

「custom_contact_complete」パラメータが記録された際、同名の「custom_contact_complete」指標を記録するという設定です。

この指標だけで「資料請求の完了数」が確認できるため、イベント名でフィルタを適用してイベント数を集計するといったことをしなくても実績がわかるようになります。

 

計算指標とは

例えば、セッションごとの資料請求の完了数(CVR)を集計したい場合、カスタムイベントだけでは非常に手間がかかります。

カスタムイベントのCVR集計手順1:カスタムイベントのイベント数を集計

  • 「イベント名」ディメンションをセット
  • 「イベント数」指標をセット
  • フィルタ設定で「イベント名」が「contact_complete」を指定
  • 集計結果をスプレッドシートなどにエクスポート
イベント名 イベント数
contact_complete 50

カスタムイベントのCVR集計手順2:セッション指標を集計

  • 「セッション」指標をセット
  • 集計結果をスプレッドシートなどにエクスポート
セッション
1000

カスタムイベントのCVR集計手順3:エクスポートしたデータを手計算

  • 「contact_complete」のイベント数 / セッション を計算しCVRを集計
イベント名 イベント数 セッション CVR
contact_complete 50 1000 5.00%

カスタムイベントのCVR集計の問題点

  • カスタムイベントに対応する「指標」が無いため、「イベント名」ディメンションでカスタムイベントを指定するフィルタ設定が必要
  • 「イベント名」×「イベント数」×「セッション」の集計で【イベント名 = contact_complete】のフィルタを適用すると、【contact_completeが発生したセッション】を集計してしまう
イベント名 イベント数 セッション CVR
contact_complete 50 50 100.00%

※セッション全体に対するカスタムイベントの実績がどの程度のレートなのかを本来は集計したいので、手順1と手順2はそれぞれ別集計にしなければいけないという手間が生まれる。

※ブラウザバックなど想定していないユーザー行動でページの再表示があった場合、1セッションで2回カスタムイベントを記録するケースなどもある。そのような場合はCVRが100%を超えるというマジ勘弁な状況が生まれる。

 

計算指標のCVR集計手順1:計算指標の作成

計算指標とは「同じスコープ(粒度)の指標同士を計算した結果を任意の名称の指標として表示する」ことです。

スコープという用語はUAの頃からありましたが、ディメンション・指標ごとにユーザー単位、イベント単位といった「単位」が決まっているとだけまずは覚えればOKです。

例えば「アクティブ ユーザー」指標はユーザースコープ、「表示回数」指標はイベントスコープといった単位になります。(前者はユーザーごとにカウント、後者はpage_viewイベントごとにカウント)

 

さて、では計算指標が何をするものかというと、「同じスコープ(粒度)の指標同士を計算した結果を任意の名称の指標として表示する」ことでしたね。

例えば 「{新規ユーザー数} / {アクティブ ユーザー数}」という計算をすれば「new_users_rate」指標を作成できます。

※カスタムイベント、カスタム指標、カスタムディメンション、計算指標の名前は任意ですが、日本語ではなく英語の命名を推奨します。日本語だと一部の集計でエラーになるようなケースが過去に報告されているためです。

 

計算指標に利用できるのは標準の指標だけでなく、カスタム指標も利用できます。

また、カスタムイベントは利用できません。「指標Aと指標Bを集計する」という計算指標の機能では「イベント名」のフィルタを適用することができないためです。

 

よって、「{contact_complete} / {セッション}」という計算をした結果を記録する「CVR_contact_complete」という計算指標を作成することが最初の手順です。

計算指標のCVR集計手順2:計算指標を集計

  • カスタム指標「custom_contact_complete」をセット
  • 標準の指標「セッション」をセット
  • 計算指標「CVR_contact_complete」をセット
custom_contact_complete セッション CVR_contact_complete
50 1000 0.05

このような集計を探索レポートで集計することができるようになります。

別々のレポートをそれぞれエクスポートするような手間がなく、非常に楽ですね。

CVRをパーセンテージで表示したい等の加工を施す場合はLooker Studioなどで同じレポートを作成するとよいかと思います。

 

まとめ

GA4を導入した後、自社サイトのサービス、コンテンツ、利用するユーザーの行動に適したデータを収集しWebマーケティングに活用するにはどうすればいいのでしょうか?

 

まずは、どんなデータを計測したいのかを関係者と話し合い、「指標」と「ディメンション」それぞれに当てはめてみると良いと思います。(数値形式で集計したいデータ=指標、テキスト形式で記録したいデータ=ディメンション)

そして、「◯◯という目的で収集するデータを【指標】【ディメンション】として実装する」という話し合いの後、どのような実装をすべきか要件を定義することが必要です。

 

無意味なデータ収集ではなく、目的に沿ったデータをGA4で記録、集計することが活用の1歩目です。

「データを設計するための技術的な知識」や「データを収集・集計する仕様の理解」が備わっていれば、Looker StudioでAPI経由でデータを取得・可視化したり、BigQueryにエクスポートされたデータを集計すること可能になります。

 

自社ですべて運用できるインハウス体勢を構築できればつよつよです。

ですが、適宜コンサルタントに相談し、必要最低限の知識を習得してGA4を活用するほうが圧倒的に楽で早くて便利です。

 

そのようなお悩み、ご相談があったときにJADEがお声掛け頂けるようになるといいなと思い、日々お客様と接し、今回の記事のような発信をしています。

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