
こんにちは! JADEの垣本です(@kkmthp)。JADE Advent Calendar 2025 5日目の記事です。私は主に検索エンジン向けの記事コンテンツの提案と、広告運用に関する業務を担当しています。今日は完全に専門外の話をします。
現在の弊社には、デザイナーという職種の方がいません。社内では「自分でもっとデザインができたらなあ」という声がたまに聞こえていました。私もまったくの同感でした。そこで「ど素人による先導でも良ければ、デザインの勉強会をやってみましょうか」と相談をして、走り出したのが2ヶ月ほど前です。
まだよちよち歩きのレベルですから、「このバナーを作ったことでCPAが◯%改善しました!」というようなご報告ができる内容ではありません。しかし、試行錯誤のプロセスをお伝えすることで「勉強してみたいんだけど、なかなか……」と思っている方の参考になれば嬉しいです。
【もくじ】
「良いデザインを言語化できるようになればいいのでは?」
真っ先に考えたことは、「たぶんデザインには理論があるから、基礎を勉強すれば簡易的な広告バナーは作れるようになるのでは?」ということでした。
さらに「デザイン素人がぶつかる壁は、 ”なぜそのデザインは良いと言えるのか” を言語化できないことなのでは?」という仮説を立てました。そこで、私の仮説を後押ししてくれるように見えた『ノンデザイナーズ・デザインブック』を教材として手に取りました。
「で、どのくらいできるようになったの?」と思われるでしょう。
恥を忍んでお見せします!およそ2ヶ月、4回の勉強会を主催した私の変化はこのくらいです。勉強会用に作成したスライドの変化をご覧ください。
★この記事に登場する画像パーツは、生成AIで作成しています。
●勉強会1回目のスライド

何が重要な情報なのかが分かりません。2枚の画像の関係性も非常に分かりづらいです。
●勉強会4回目のスライド

1回目のスライドと構成が違うため、比較対象として良くないのですが、「何が重要で、どこを見てほしいか」という意思をもったデザインに変わっている点は伝わるかと思います。
さらにご参考までに、勉強会4回目で作ってみた広告バナーサンプルもお見せします。架空の商品(長時間座っても疲れないオフィスチェア)を考え、それを売るための広告バナーを作成しました。
上が Nano Banana Pro で生成し、題材として勉強会に持っていったもの。
下が、勉強会で出た意見をもとにCanvaを使って調整したものです。


調整前のデザインに対して出た意見は、「要素が多すぎて、何を見ればいいのか分からない。メッセージを1つに絞るべき」というものでした。まったくその通りです。
さらに個人的には、CTAが平べったくて「押せる感」がなく、色も背景に近くて目線誘導があまりできないと感じました。メインキャッチと「長時間座れる」という訴求のズレも気になります。
そこで加えた変更が以下です。
- サブキャッチ、商品写真を削除。メッセージを「椅子のスペックが足りていないのでは?」という問いかけ1点に絞った。
- メインキャッチを拡大し、フォーカスしてほしい「椅子」に装飾を追加。
- CTAの文言を、メインキャッチに沿う「生産性を上げる」に変更。
- 注目してほしいポイントの色を赤にし、背景画像とのコントラストを強めた。
他にどのような改善点が思いつくでしょうか?
いずれの画像も自由に使ってくださって構いませんので、Xなどで「こう変えると良い!」というアイデアをぜひ聞かせてください!お礼には、感謝のリプしかお送りできませんが……。
眺めるだけでは、言語化はできない
勉強会では、インプットだけでなくアウトプットも組み合わせる必要があると考えました。『ノンデザイナーズ・デザインブック』をざっと通読したあとの私は、特にデザイン力が上がった気がしなかったからです。
最大の敗因は、途中で何度も出てくる練習問題をことごとくすっ飛ばしたことでした。練習問題では、良いデザイン・いまひとつなデザインの差分などを言語化することが求められます。「こんなに差分があれば、言語化は簡単でしょ」と思って眺めるのですが、これが存外難しい。自分の頭で考え、言葉に起こさないと、学びは浅い地点で止まってしまうことを感じました。
この反省を踏まえ、勉強会では参加者から意見を出してもらうことにしました。
「このデザインのいいところはどこでしょうか?」「ダメなデザイン例を自由に編集して、よりよいデザインに変えてください。なぜそうしたかも教えてください」というように。
これは、私にとっては大正解でした。ごくシンプルなテキストのみのデザインでも、参加者おひとりおひとりによって「何を最も強調したいか」「目的を達成するために、どのような色、形、フォント、大きさを採用するか」といった選択が大きく異なることに気付いたのです。この学びを得て、私の中で新しい仮説が産まれました。
「デザインにおいて大切なことは、取捨選択と整理なのでは?」
情報の取捨選択からデザインは始まっている
勉強会を始める前の私にとって、デザインとは「見た目をよくするためのもの」程度の解像度でした。しかし、見た目をよくする以前に「何を伝えるか」「情報の優先順位は?」と考えるところがデザインのスタート地点なのかもしれない。そう思い至ったのが、私の現在地点です。
最近では、おおよそ以下のようなステップに分解して作業を進めています。
- 伝えるべき情報を精査し、まず取捨選択を行う。必要なもの、いらないものを判断する。
- 最も伝えたいことは何かを明確にする。
- 情報に優先度をつけ、類似する情報をグルーピングする。
- 配置する。
- 装飾する。
それぞれの工程を磨いていくことで、最終的に出力されるデザインもパワーアップしていくのではないかな、と期待しています。この考えが合っているかどうかはまだ分かりませんが、手を動かすことでしか答えは得られない気がします。
なお、1を正しく判断するためには「このデザインを見る人は誰か」という問いにも答える必要があります。「このデザインはどこに表示されるか」という問いも重要でしょう。デザインは相手があってこそのものである、と考えています。この観点から言うと、広告運用するときも、記事構成を考えるときも、やっていることは同じです。出力方法が違うだけです。
一緒にやってみましょう
ここまで読んでくださってありがとうございました。「自分もやってみようかな」と思った方がもしいらっしゃったら、以下の問題で遊んでみてください!
これは『ノンデザイナーズ・デザインブック』の練習問題を参考にして、架空のスマホゲームのダウンロードページをデザインしたものです。
問題:このWebページのデザインの良くないところを、最低3つ挙げてください。

山ほど修正点があると思いますが、私が考えたことは以下です。
- 文字が読みづらい。背景色と文字のコントラストが弱すぎる。
- 最も押してほしいはずの「DOWNLOAD NOW」ボタンが目立たない。ボタンと周囲とのコントラストが弱い。
- どのアイコンが、どのテキストと関連するのか若干わかりづらい。アイコン同士の距離が近く、テキストとの距離が遠いため、アイコンのグループ・テキストのグループ、というように意図しないグルーピングが生じている。
勉強会の中で話し合いながら、修正したバージョンがこちら。簡単に編集できる箇所をいくつか変えただけですが、ずいぶん分かりやすくなったと思います。

- 背景を暗くし、文字とのコントラストを明確に。
- 「DOWNLOAD NOW」ボタンを目立つ色にして、目を引くようにする。
- タイトルのフォントを変えて太字にし、サブタイトルとの違いを明確に。
- サブタイトルの文字サイズを小さくし、タイトルをより強調する。
- アイコン・説明文・「見る」ボタンを近づけ、別の情報グループとは間隔を保つことで、どの情報がひとまとまりなのかを明確に。
- スマホユーザーを想定するなら、右手でボタンタップする人が多いだろうから、押してほしいボタンは画面右側に配置。
6は私がまったく想定していなかった回答で、勉強会を主催した意義を強く感じました。「その発想はなかった!」「言われてみれば、確かに!」という気付きを共有することで、全体の学びが深まっていくといいなと思います。ぜひXなどでもご意見を聞かせてくださいね。
デザインは、コミュニケーションでもある
この取り組みによって、私の仕事は何か良くなったのでしょうか。現時点では分かりません!
ただ、「この提案書の見出しは、色を変えたほうがセクションのまとまりが分かりやすくなるはずだ」と考えることもデザインの1つではないかな、と今は思います。デザインの知識を得ることは、広告のクリエイティブ制作にとどまらず、人とのコミュニケーションをより丁寧にすることにも繋がるような気がします。「忙しいあの人が、ひと目で要点を把握できるようにするには、どうしたらいいかな」というように。
2025年に得た新しい学びを活かして、2026年はもっと良い仕事ができるよう頑張りたいと思います!
▼JADE Advent Calendar 2025。続々と楽しい記事が公開される予定です。お楽しみに!
https://adventar.org/calendars/12121
【参考文献】
『ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]』(Robin Williams 著、米谷 テツヤ 監修・翻訳、小原 司 監修・翻訳、吉川 典秀 翻訳)