はじめまして、広野です。コンサルタントの傍らランキングデータの分析など担当しています。
JADEは、検索エンジンを介したマーケティング活動の支援を得意としており、日々その動向にも注目しています。
検索エンジンといえば Google が思い浮かびますが、最近は ChatGPT の登場によって、Bing がどのように変化していくのかに興味を持つ方もいらっしゃるかもしれません。JADE社内では以前からさまざまな検索エンジンの動向をウォッチするプロジェクトグループを結成していました。その知見に基づき、この記事では、Google 以外の検索エンジン、Bing を含めた現在の状況についてまとめました。
Google 以外の検索エンジン
この記事では、趣の異なる3つの検索エンジン、Bing、LINE Search、Apple Searchについて紹介します。
まず、3つの検索エンジンを簡単に比較すると、以下のようになります。
Bing | LINE Search | Apple Search | |
---|---|---|---|
ウェブ | ○ | ✕ | ✕ |
アプリ | ○(スマートフォンアプリ) | ○(LINE内の機能のひとつ) | ○(iOS、macOSの検索機能) |
検索結果の特徴的な機能 | AI チャット | 公式アカウントや VOOM など | App Store や iTunes Store など |
ランキング上位の傾向をGoogleと比較した印象 | 比較的 Google と近い | 比較的 Google と近い | 全く異なる |
クローラー | Bingbot | Linespider | Applebot |
Bing
日本では、Google、Yahoo! Japanに次いで利用されている検索エンジンです。Googleのシェアが圧倒的ですが、最近、1ヶ月間のアクティブユーザーが1億人を超えたことが発表されており、その勢いが垣間見えます。
Googleと比較すると、Bingの検索結果には似た印象がありますが、Bingではヘッダー下のナビゲーションにチャットがアイコン付きで表示されていたり、旅行とホテルはGoogleにはないメニューとなっています。
LINE Search
LINEアプリで利用できる検索エンジンです。ホームやトークルームなどの検索窓からキーワード検索できますが、ブラウザやデスクトップアプリからは利用できません。そのため、主な利用場面はスマートフォンでメッセージのやり取りやニュース閲覧からの検索になるでしょう。
検索結果に表示されているヘッダー下のナビゲーションでは、”公式アカウント”や”LINE VOOM”など、LINE のサービスに関わるものが多く表示されており独自の検索体験が提供されています。
Apple Search
LINE と同様に、ブラウザではサービスが提供されていない、iOS・macOS に搭載されている Siri や Spotlight に利用されている検索エンジンです。ここで紹介した他の検索エンジンと比べると、提案されるウェブサイトの品質に改善の余地が大きいように思われます。
iOSでは、ホーム画面のウィジェットや音声検索から利用することができますが、ホーム画面のウィジェットからキーワード入力した場合は Apple のエンジンによる検索結果、音声検索ではGoogleの検索結果が表示されるようです。
Google の検索結果とのクエリごとの比較
それぞれの検索エンジンの検索結果がクエリごとにどのように違うか、事例をご紹介します。
[渋谷 居酒屋]
- Bing の検索結果は、ショッピングの広告枠が表示される、ランキングしているサイトの顔ぶれは Google と比較的近い。
- LINE の検索結果もサイトの顔ぶれは Google と比較的近く、違和感なく使えそうな印象。
- Apple でもサイトの顔ぶれは Google の上位表示サイトがほとんど、同じサイトが複数まとまらずに表示される。
[近くの居酒屋]
- Bing の検索結果は、東京都にローカライズされており、同じIPアドレスによる位置判定であっても Google のほうが精度が高い。
- LINE の検索結果は、現在地からローカライズされず「ちかく」のような店名のページがランキングされていることからテキストとの一致が強く影響している印象。
- Apple の検索結果は、「近くの○○」で検索するとウェブサイトは提案されず、マップから候補のお店が提案されている。
[エルメス財布]
- Bing の検索結果は、エルメスの企業情報の枠が表示されている。また、カセットに出力されているテキストが長大となっている例が確認できる。
- LINE の検索結果は、画像、動画の枠とショッピング枠が表示される。ショッピング枠の商品をタップすると、LINE上の商品ページ → (アフィリエイト) → ショッピングサイト のように遷移。
- Apple の検索結果は、他の検索エンジンとは異なり、表示されるサイトの顔ぶれが大きく異なる。他の検索エンジンでは公式サイトや大手ショッピングサイトが上位に表示されますが、Siriから提案されるサイトには、公式サイトが表示されず、偽物を取り扱っているとみられるサイトが表示されることがある。
[陥入爪 症状]
- Bing の検索結果は、最上位に外部サイト(Focus Medica)より参照された情報は症状や治療についての情報が提供されている。
- LINE の検索結果は、レビュー枠がもうけられており、ブログの関連する記事がレコメンドされている 。検索結果の顔ぶれとしては、この中で最も Google と一致している。
- Apple の検索結果は、最上位に Wikipedia が表示されていますが、その他の検索エンジンの1ページ目に Wikipedia は表示されていない。
Googleに比べると、Bingはまだ一歩及ばない印象がありますが、LINE Searchは想像以上によくできている印象があります(Bingよりも良いかもしれません)。一方、Apple Searchは、日本語への最適化にはまだまだ改善の余地があると感じました。
この他の検索エンジンではどんな動きがある?
ここまではウェブサイトが提案される従来の検索結果についてでしたが、Bing のチャットのように AI との対話によって検索の目的が達成される場面も増えてくると思われます。
そんな AI チャット に注力している検索エンジンには以下のようなサービスがあります。
neeva
ウェブサイトが提案される通常の検索結果に加え、neeva AI による回答が検索結果の最上部に表示されます。
You.com
ウェブサイトが提案される通常の検索結果とは別にチャット機能が搭載されており、タブから選択し AI との対話が可能となっています。
Perplexity
AI チャットのみのサービスとなっており、ウェブサイトが提案される、通常の検索結果はありません。
なお、この3つの検索エンジンは Bing の検索エンジンを一部利用しているようで、先日 Microsoft から 検索エンジンのライセンスパートナーに対し、AI での利用は制限するように通達がされているとのことです。
AIチャットの隆盛も気になるところですが、一般の利用者はまだまだウェブサイトが提案される従来の検索結果の利用がほとんどだと思われます。
JADE社内では検索エンジンの動向に注目し、毎週レポーティング活動を行っています。社外向けにも、広く共有したいトピックなどは「ランキング報告会」として毎月ご紹介していく予定ですので、ぜひご覧ください。