なぜGA4の設計・設定・運用に予算がつかないのか? Xのポストを起点に考える

高度な専門性が求められるGA4の設計・設定・運用。なぜ予算がつきづらいのか?マーケティング部と情シス部の分断、無料ツールという認識、成功体験の欠如など、構造的な問題を解説します。

こんにちは! JADEブログ編集部です。

先日、弊社ファウンダーの長山がX(旧Twitter)に投稿した「GA4設計・設定・運用、かなり専門性が高いのに予算がつきづらいの不思議だなと思ってる」というポストが、6万5,000インプレッションを超えるなど大きな反響を呼びました。多くの方が同じ課題を抱えていることの表れだと感じています。

 

〈こちらのポストです〉

 

この問題意識を起点に、GA4分析のプロである村山佑介と長山が、なぜGA4の設計・設定・運用に予算がつきづらいのか、その背景にある構造的な問題を語り合い配信しました。YouTubeはこちらです。

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【出演】

  • 長山一石(株式会社JADE 代表取締役 ファウンダーCSO)
  • 村山佑介(株式会社JADE Chief of Staff & Consulting Quality Manager)

この記事では動画の内容からピックアップしてお届けしたいと思います。

 

高度な専門性が求められるGA4の3つのフェーズ

長山 まず、われわれが話している「GA4の設計・設定・運用」がどれだけ専門的な作業なのか、改めて整理しておきたいと思います。大きく3つのフェーズに分けられます。

  1. 設計(要件定義): サイトのビジネスモデルを深く理解し、データに基づいた意思決定を可能にするために「何を計測すべきか」を定義するフェーズです。ビジネスとGA4の仕様、両方への深い理解がなければ適切な設計はできません。
  2. 設定(実装): 設計された要件に基づき、Googleタグマネージャー(GTM)などを用いて実際に計測設定を行うフェーズです。JavaScriptの知識やGTMのトリガー設定など、非常に細かい技術的な知識が求められます。
  3. 運用(可視化): 取得したデータをLooker Studioなどでダッシュボード化し、ビジネスのKPIとして管理できる形に整えるフェーズです。どの数値をどう見せればビジネスに貢献できるかを考える必要があります。

この3ステップは、どれも非常に高度ですよね。

村山 特に最初の設計がビジネスを理解できていないと、結局どの指標を追えばいいのか分からなくなってしまいます。

長山 これだけ専門性が高く、できる人も業界に多くない。にもかかわらず、「GA4の整備」という単体の案件で予算がつくことは少ない。我々の場合も、SEOや広告運用のコンサルティングをご依頼いただいた中で、「現状のGA4設定では御社のとるべき指標が正しく計測できないので、まずはこちらに手を入れましょう」とご提案するケースが圧倒的に多いです。

村山 圧倒的に多いですね。GA4に問題意識がないのか、GA4起点でのご依頼は少ないかもしれませんね。

長山 本来であれば、マーケティング施策の意思決定をするための土台となるGA4の整備が最優先のはず。現状の数字が正しく把握できていなければ、SEOに注力すべきか、広告を強化すべきかといった判断もできないはずなのですが…。そこが不思議に思えます。

 

なぜ予算がつかないのか?SNSで寄せられた多様な意見

長山 この問題提起に対して、Xでは多くの方から「なぜなのか」についての意見が寄せられました。いくつか見ていきましょう。

 

予算の出どころが違う?マーケティング部と情報システム部の断絶

村山 まず、僕自身の経験からお話しします。前職でGA4の有償版である「360」をリセラーとして扱っていたのですが、当時、360導入の予算を持っているのはマーケティングチームではなく、情報システム関連のチームが多かったんです。

長山 それはなぜなんですか?

村山 きっかけは、無料版のヒット数の規約上限を超えてしまい、レポートの数字が取れなくなる、といったケースが多いんです。それだと困るから「どうにかしろ」という話が、データに強い情報システム部に降りてくる。数字を見るのはマーケティング部なのに、ツールを整えるのは別の部署、という構造です。

長山 なるほど。マーケティングチームが見るツールなのだから、マーケティング部が予算を持つのが自然な気がしますが……。

村山 マーケティング部は広告費のように、投下すれば直接的に問い合わせ数が増えるような、すぐにリターンが見えるものには予算を持っている印象です。一方で、GA4のようなデータ基盤を整える投資は、サーバー費用などと同じように情報システム部が管轄している、ということが大企業を中心に多かったですね。結果として、情報システム部はツール導入が責任範囲で、広告パフォーマンスの向上といったマーケティングの領域には踏み込まない。部署間の分断が起きていました。

 

直接的なリターンが見えにくい「体重計」への投資

長山 Xの引用RPにも、これと似た指摘がありました。「Web広告は予算をつけると直接的にコンバージョンが増える。一方、Web解析(GA4)は予算をつけても直接コンバージョンが増えるわけではない」というものです。

村山 まさにそうですね。ダイエットに例えると、広告は「体重を減らす」直接的なアクション。GA4は「より精度の高い体重計を手に入れる」ことに近い。体重だけでなく体脂肪率や筋肉量までわかる体重計があれば、より効果的なアクションが取れるはずですが、体重計を買っただけでは痩せませんから。 その体重計のデータを元に分析し、アクションプランを作れる人がいないと、費用をかけただけで終わってしまう。この「費用対効果のイメージしにくさ」が、予算がつかない大きな理由の一つかもしれません。

 

「無料ツール」という認識の壁

長山 もう一つ、頻繁に指摘されていたのが「GA4が無料ツールである」という点です。「無料のツールが使えるのに、なぜその設定のためにお金を払う必要があるのか」という発想になってしまう、と。

村山 それはあるかもしれませんね。Googleアナリティクスが登場する前は有料のアクセス解析ツールしかありませんでした。Googleが無料ツールで市場を一気に塗り替えた歴史が、逆に「設定も無料でできるはず」という認識を生んでしまったのかもしれません。

長山 また、「知識がない人は、専門家を入れると何が起こるかイメージできない。一方、そのイメージを持てる人は、ある程度自分でやれてしまう」という意見もありました。これも的を射ている気がします。

 

問題の根源は組織論に?『失敗の本質』との共通点

長山 こうした話を突き詰めていくと、結局は経営層と現場の間に共通言語が作れていない、という組織論的な問題に行き着く気がします。

経営層は当然、正しい意思決定をしたいはずです。それにもかかわらず、GA4整備のような重要な土台作りが軽視されるのはなぜなのか。僕は、日本の組織が抱えがちな課題、例えば『失敗の本質』で指摘されているような、数値よりも雰囲気を重視する文化や、縦割り組織の弊害といった問題と根が同じではないかと感じています。

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村山 そもそも、現場も経営層も「GA4でそこまで詳細な数値が取れる」ということを知らない、という可能性もありますね。スーパーマーケットで言えば、入り口の来客数だけをカウントして満足している状態です。来客数が増えたか減ったかだけでも意思決定はできるけど、本当はどの商品棚の前で立ち止まったか、どの商品を手に取ったかまで分かれば、チラシの内容や棚割りを最適化できるはずですよね。

長山 オムツの隣にビールがあるとか、そういう例ですよね(笑)。こんな引用RPもありました。成功体験がないものに投資するのは難しい、ということですね。

 

予算を獲得するために、現場担当者は何をすべきか?

長山 なぜ予算がつきづらいのか?については結論が出ていない状態ではあります。では、GA4の重要性を感じつつも、社内でなかなか予算が下りないという状況にいる担当者の方は、どうすればいいのでしょうか?

村山 短期的にできることとしては、問題意識を具体的なビジネス課題に結びつけることだと思います。例えば、「BtoBサイトでコンテンツマーケティングに投資しているが、PVはあっても問い合わせに繋がらない」という課題があったとします。

ここで、「各コンテンツが本当に問い合わせに貢献しているのかを計測するために、GA4の設定を改善する必要があります。コンテンツ制作への投資を回収するために、もう少し踏み込んだ計測をしませんか?」と提案する。このように、既に予算がついている施策のROIを改善するための投資として位置づけることで、話が通りやすくなるかもしれません。

 

次なる論点:最適なマーケティング予算のポートフォリオとは

長山 今の話から発展して、僕の最近の問題意識は「最適なマーケティング予算の配分」というテーマなんです。GA4のようなインフラ投資、広告のような短期的な施策、SEOのような中長期的な施策。このポートフォリオをどう組むべきか、という考え方のフレームワークが意外と語られていない気がします。

村山 それは時系列で考えるべきかもしれませんね。まず環境整備(インフラ)に予算を割きつつ、目先のコンバージョンを広告で確保する。そして、徐々にその割合をSEOのような資産になる施策にシフトしていく、といった形です。

長山 それをロードマップとして描けるCMOのような存在が必要になりますね。このテーマについても、また別の機会に深く話してみたいです。

 

最後に

GA4の設計・設定・運用に予算がつきづらい背景には、部署間の分断、費用対効果の分かりにくさ、無料ツールという認識、そしてデータ活用の成功体験の欠如といった、複合的で根深い問題があることが見えてきました。

 

村山 GA4は無料ですが、誰でも使えるからこそ価値の高い道具です。その道具をどう使いこなすかは、使う人や組織のマインド次第。ぜひ多くの方に使いこなせるようになってほしいと願っています。

 

今回の議論が、皆さんの組織でデータ活用の文化を根付かせる一助となれば幸いです。本日お話しした内容は、JADEのYouTubeチャンネルでも公開していますので、ぜひご覧いただき、チャンネル登録もよろしければお願いします!

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。