先日、はてなブログBusinessプラン開始の対談記事が週刊はてなブログで公開されました。株式会社はてなの大西さまと私が、9月18日に公開された企業向けのはてなブログ新プランである、はてなブログBusinessのサブディレクトリオプションについて対談しています。
弊社ではこのサブディレクトリオプションの設計に協力しております。
このプランの大きな利点は企業サイトのサブディレクトリにブログを設置でき、SEOの価値が期待できることです。企業ブログを外部ドメインではなくサブディレクトリに展開することには、SEOの観点で大きな利点があります。
実際、株式会社JADEのコーポレートサイトを作る際に必須要件として考えた事がサブディレクトリにブログを置ける事でした。私たちもはてなブログのシステムを利用していまして、いまご覧のこの記事もサブディレクトリで公開されたはてなブログです。そして多く読まれるブログ記事を公開するたびに、検索流入はその記事だけではなくサイト全体が伸びていきました。
企業サイトでサブディレクトリにブログを置くことはどうして価値があるのでしょうか?この記事では対談記事の補足として、その利点や解説を中心にご説明します。
(株式会社JADE 辻正浩)
SEOとサイト単位の評価
株式会社JADEでは、株式会社はてなさまを始め様々な企業のSEOを支援しています。その中で、自社サイト外で展開されたお客さまの情報をメインサイトへ移動、ということを何度も提案・実施してきました。
強いサイトで公開したコンテンツは弱いサイトで公開したコンテンツよりも検索されやすいことは、Webに関わる人ならば誰でも感じていることでしょう。検索エンジンはサイト単位での評価も行っていますので当然のことです。
そのため、100の価値を持つメインサイトと10の価値を持つサブサイトを良い形で統合すると110の価値のサイトになりえます。価値を100から110へ底上げを行えるメインサイト、10の価値の場所では検索されづらかったコンテンツが110の価値の場所に移動されて検索されやすくなるサブサイトともにプラスになることです。
多くの場合で検索エンジンが認識する「サイト」は、ドメイン・サブドメインが異なると別のサイトとして認識されがちです。サイトの統合を行う上で最も確実な形は、同じサブドメイン上に統合することになります。
もちろん、複数のサイト・サービスを一つのサブドメインに統合することは、全てにおいて価値を生むわけでは有りません。
たとえば巨大サービスでしたら、小さなブログを統合しても煩雑になるだけで全体として大きなプラスにはならないでしょう。テーマや想定顧客層が全く異なるサイトを統合することは望ましくないことも多いです。また価値があまりに低いサイト、あまりユーザのためにならないサイトを統合してもプラスにはなりませんし、むしろマイナスになることも有りえます。また稀なケースではありますが、サブドメインが異なっても一つのサイトとして認識されている場合もあり、そういうケースではサブディレクトリに統合してもプラスにはなりません。
このような理由で統合がプラスにならないこともありますが、多くのケースでは価値を生みます。私が企業サイトのSEOに関わるようになってから、いったいいくつの自社ブログや自社サービスをサブディレクトリに統合してきたかわかりませんが、ほとんどのケースで期待した成果を上げてきました。
最近では、この価値を目的として自社サイトの領域を他社に貸す事すら行われる様になってきていました。Googleはそのような行為を望ましくないものとして警告しています。
We’ve been asked if third-parties can host content in subdomains or subfolders of another’s domain. It’s not against our guidelines. But as the practice has grown, our systems are being improved to better know when such content is independent of the main site & treat accordingly.
— Google Webmasters (@googlewmc) 2019年8月14日
たとえ検索で有利でも自社サイトの領域を無配慮に他社へ貸すことは、一種の悪用になりますので望ましくありません。
しかし自社の事業に関わる情報が記載される自社運営のコンテンツを企業サイト内に配置することは当然の事です。むしろ、同じ企業・ブランドが発信する情報を一つのサイトにまとめることは、Googleとしても検索結果を作る上で処理しやすく望ましい形のはずです。
それをわざわざ企業サイト外に置くことは、悪用する人が出てくるほど有効なことを捨てているとも言えるのです。
これまで述べてきましたように、企業がどのURLで情報発信するかは検索流入を左右する重要な選択になります。しかし十分な検討をせずに気軽に別ドメインでの情報発信を始めてしまう企業が多いように感じています。
それは、2012年頃までは必ずしも一つのサイトへの統合がSEO観点で望ましくないケースが多かった事が理由のひとつでしょう。複数のサイトを展開することが被リンク対策になるなどの理由で、意図的にサイトを分割してしまう会社も多くありましたし、それが効果を生むケースも多くありました。その当時は私も逆に既存サイトのSEO意図での分割なども多く行っておりました。
しかしそれは過去の話です。昔は絶大な効果があったリンクも、自社運営の別サイトから機械的に張られたリンクでは効果を生みづらくなっています。
今のSEOでは「サイトの価値」の影響力が高まり続けています。サイト単位の評価は昔からあったことですが、最近の信頼性重視の流れの中、明らかにその傾向は強まっているのです。
サイトの信頼性を高めるために
近年、インターネット上に蓄積される情報が増え、その中には怪しい医療情報やフェイクニュースなども含まれる事が社会問題になっています。
インターネットで情報収集をする上で、どの組織から発信された情報かを確認することは多くの人が心かげていることかと思います。
その流れは、検索エンジンのアルゴリズムにも同様の傾向が見られます。
Googleが「サイトの信頼性」を判断することは、2017年頃にはYMYL領域(財産や健康などに関わる深刻な領域)での検索結果では特に重視されるようになりました。そして最近ではその影響は一般的な検索語句でも影響が見られるようになっています。「サイトの信頼性」を高める事は、どのようなサイトにも必要になっているのです。
サイトの信頼性をGoogleがどのように判断しているかは複雑です。その評価基準は急速に進化を続けています。検索で評価される信頼のためにはインターネット上での活動だけでは達成できない要素も増えるなど複雑さを増しており、一概には言えないものです。
ただ確実に言える事は、信頼性はサイト単位で評価されることです。メインサイトは信頼性が評価され検索で評価される企業のサイトでも、別のドメインでの情報発信は評価されないことが非常に多くあります。
このことはGoogle 検索だけに限りません。いま、様々なサービスがURLをAIなどで機械的に評価する仕組みを持つようになりました。その多くの場合ではやはりサイト単位の評価をしています。
そしてその「サイト単位」とは、多くの場合サブドメイン単位の評価になります。人間が見ると同じ企業が発信していると判断できても、アルゴリズムで膨大な数を自動判別するにはサブドメインが別だと判断しきれない場合が多いのです。
この状況で企業サイトがアルゴリズムに評価されるためには、そのデジタル資産を可能な限りひとつのサイトに集約するべきです。
自社が発信した情報を多くの人に届けるために。そして自社が信頼されるべき団体だということをアルゴリズムにも認識させるために。一つのブランドがインターネット上で展開する価値を一つのサブドメインに集約することができれば、様々な形でそのサイトの評価は高まることになります。
もちろん全てを紐付けることはできないでしょう。YouTubeやTwitterなど外部ドメインで展開されるサービスや、ネット外を活用する必要もあるはずです。
それでも、多くのケースでは選択の余地があるはずです。自社サイト外を使う場合でも可能な限り自社サイトに紐づけるように注意することはできるはずです。
たとえばYouTubeで情報発信をする場合でも、その書き起こしや補足情報を自社サイトに展開して誘導することはできるでしょう。
たとえばTwitterを活用する上でも、詳細情報を自社サイトに展開してツイートから誘導することもできるでしょう。
たとえばネット外での活動をする際でも、可能な限り自社サイトに誘導することはできるでしょう。
サイト単位の評価で、信頼性が重視されるいまのSEOでは、企業としてのインターネット上の活動を一つのサイトに集約することが理想です。それが難しい場合でも可能な限り一つのサイトに紐付けることをお考えください。そうしてより多くの人が自社の主なサイトに訪問して、満足する状況さえ作り出せば、SEOにおいても最大限の効果が得られるはずです。
まとめます。ぜひとも次の3点をご注意ください。
- 検索されたい情報は、可能な限りひとつのサブドメインに集約するようにする
- 外部サービスを使う場合でも、可能な限り自社のメインサイトへの移動が行われるようにする
- より多くの方が自社のメインサイトに訪問するきっかけをつくるようにする
はてなブログ新オプションとSEO
さて、企業ブログを運営する際にサブディレクトリに展開するのが望ましいとわかっていても、別サイト展開する選択肢を選ぶケースが多くあります。
その理由はよくわかります。
特に大企業の情報発信や大規模サイトでは、サブディレクトリにブログを展開するのはサイトポリシーやサーバの都合から難しい場合もあります。エンジニアにはサービス開発に専念してもらうためブログの設置・管理に細かいタスクを積みたくないので外部ブログを利用という場合も多くありました。中規模・小規模サイトでも単に工数的に困難な場合もあります。
サブディレクトリにブログを展開するためにはWordPressが主な選択肢になる場合が多いですが、WordPressを企業の主なWebサーバにインストールすることやリバースプロクシで繋ぐことは、いろいろなリスクから渋るサイト管理者が多い事情もあります。
私たちもお客さまと話す上でこのような問題に向き合う機会は多くありまして、ブログの統合を行えないことも多くありました。
特に限られたリソースを集中投下する必要があるスタートアップや中小企業にとって、細かい問題に煩わされたくない、と考えることは当然のことです。
特にそのような方々に、今回のはてなブログBusinessのサブディレクトリオプションでの企業ブログは最適解の一つになると考えます。
もし問題なく自社サイト内での企業ブログ運営を自社のリソースで行えるならば、毎月の使用料もかからないですしそのほうが望ましいでしょう。ただもし管理・更新のための工数やセキュリティ上の不安、安定性、そしてSEO面でシステムの不安がある場合には、ぜひご検討ください。
今回、はてなブログなどのドメイン、たとえば https://webweb.hatenablog.com などのように「hatenablog.com」といった有名ドメインから離れることを不安視される方もいるかもしれませんがその不安はありません。
ブログサービスを使う場合、ドメイン自体が何かという事で検索エンジンの評価に関係することはほぼ無いのです。(言語・国判定を除く)
はてなブログはSEOに強いと一定の評価を頂いていますが、それは hatenablog.com hatenablog.jp というドメインによる価値ではないのです。
また、旧はてなダイアリーなど d.hatena.ne.jp/$userid$/ のようにサブディレクトリをユーザに開放しているブログサービスもありますが、これもGoogleはドメインの価値自体を評価することはありませんでした。
Googleがサブドメイン・サブディレクトリ単位でユーザに貸与する形のUGCサービスだと確認した場合、サブドメイン・サブディレクトリに展開されたコンテンツは全て別サイトとして認識されますので、ドメインの価値がSEO上の有利さを生むことは有りません。
これは当然です。特定ブログサービスを使っている有名ブロガーがどれだけ良い記事を連発したからと言って、同じブログサービスを使う別ユーザの記事が評価されるべきと思う人はいないでしょう。当然ながらGoogleもそのように処理しています。ブログなどUGCの歴史は長いです。Googleがそのような不合理を放置しているはずはありませんし、実際これまで見てきたデータでも多くはそのようになっています。
はてなブログは、ドメインという観点ではなく、サービス設計として様々なSEOの配慮を行っています。対談でも申しました「title要素と表示タイトルの切り分け」以外にも「AMP対応」「alt属性の編集」「meta要素descriptionの設定」「Google Search ConsoleやBing Web マスターツールなど検索エンジンツール登録の容易さ」「Googleアナリティクス登録の容易さ」など、SEOに必要な項目の多くを標準機能として完備していますし、他にもさまざまなSEO面の配慮をシステムとして行っています。
更に、はてなブックマークや、近日リニューアル公開が予告されているはてなブログタグなどのWebサービスからの動線が用意されています。これらは書かれた大切な記事を多くの人の目に止まりやすいようにします。それはリンクなどの検索エンジンが評価する要素を発生させる機会に繋がりますので、結果的にSEOには有効であると考えています。
今回の新プランは申し込みに条件がありまして「資本金5000万円以下」もしくは「設立5年未満」の企業のみになります。スタートアップや中小企業を対象としたサービスです。
私たち株式会社JADEはSEOのサービスを提供していますが、主に関わらせて頂くのは大規模Webサービスや巨大サイトです。このようなWebサイトが問題なく検索され続けることは社会への影響が大きいにも関わらず、大規模Webサービス・巨大サイトに対応できる本格的なSEOは十分な経験や実績を持った日本企業がわずかという問題はあります。この問題を踏まえ、私たちにしか解決できないような問題を抱えた企業さまを中心にサポートしたいと考えておりますので、あまり中小企業のSEOをサポートできる機会はありません。ただお問い合わせも多くいただき続けていまして、SEOにお困りの企業が非常に多い中、幅広い企業さまのSEOになにかお力になれないかということを考えておりました。
今回のはてなブログBusinessサブディレクトリオプションプランを通じて、間接的ではありますが少しでも多くの企業さまのSEOをサポート出来るのではと考えております。
特に中小企業では、有益な情報をしっかりとWeb上に出していくことがSEOの第一歩です。システムとしてSEOの不安が無いものを使うことで、技術的な側面ははほぼ気にせずに多くの人に役立つ情報発信に専念できるようになると考えます。
検索エンジンは進化を続けていますが、そのキャッチアップなども気にせずに素晴らしい情報発信に専念いただけるよう、私たちは今後も本サービスのSEOサポートを続けてまいります。
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