自社名や自社サービス名などをGoogleで検索すると競合他社の広告が出てきて、お金もかかるわクリック取られるわで辛い、という話は多くの広告主さんから本当によく聞きます。
費用と広告成果的なダメージはもちろん、◯◯社に広告出された!商標侵害だ!と恨みを覚えたり、出しちゃったほうもいやそんなつもりなかったの出てる…、と申し訳ない気持ちになったり、
と、この背景を知らないがために人々の間にいらぬ怒りと悲しみを生じさせ、本当によくない仕組みだな、と思います。
確かにこの問題はシンプルではないのと、Googleとしてももし防ぐにしても難しい側面もあるのはわかります、が、さすがにここ最近の広告表示の仕方はひどいと感じられるものがあります(※1)。
いまいちどGoogleによく考えていただきたく、また、みなさんにも間違った矛先に怒りをぶけないようにしていただきたく、この記事を書きます。
(株式会社JADE 小西一星)
以下、自社サービス名、自社商品名、自社サイト名などと書くとややこしいので「自社名」で統一します。
競合他社が出すつもりなくても出ちゃってる
自社名で検索して競合他社の広告が出る原因として主なものは2つです。
- 競合他社に、自社名をキーワードとして登録されている
- 競合他社が、一般名詞キーワードを部分一致で登録している
つまり、自社名をキーワードとして登録されていなくても出ます。
個人的に見聞きする限り、後者によるケースが多いのではないかとも思います。
部分一致というのは言葉どおり文字例の部分一致ということではなく、意味合いでの一致をしますし、そのの傾向はどんどん強まっていっています。
キーワード「就職」は検索クエリ「ハローワーク」にも「ホワイト企業」にもヒットしますし、キーワード「投資」は検索クエリ「株」にも「証券」にもヒットします。
「リクナビ」は「転職」、「スーモ」は「不動産」だとGoogleにも認識されているので、リクナビと検索したら他の転職サイトの広告が出たり、スーモと検索したら他の不動産(特に賃貸)サイトの広告が出たりします。
このくらいの有名サイトであればうなずけるかも知れませんが、月間検索数100以下のあまり有名でもない社名でも、部分一致でヒットします。Googleの言葉の意味合いの認識の精度と広さはすごいです。
一般名詞キーワードを部分一致で登録するのはGoogleも推奨してますし、多くの広告アカウントで行われていることですしほぼ当たり前のことです。つまりどの広告アカウントでも、そんなつもりはなくとも他社名で検索されたときに自社の広告を出しちゃっていることがある、ということです。
なお、実際に社名で検索して出てないのを目視確認して安心できるものではありません。Google広告は誰もが同じ検索結果となるものではありません。出されたほうと出しちゃったほうとでは、出てる(と思っている)具合が大きく異ることがあります(※2)。
ポリシー違反じゃないのか?商標侵害じゃないのか?
仮に他社名もしくは他者の持つ商標用語をキーワードとして登録した場合、掲載ポリシー上NGとなるかどうかというと、違反であるともないとも書かれていません。
利用規約にはこう書いてあります。
お客様は、以下の各事項について、全責任を負います: (i) 広告、(ii) キーワードなどの(以下略
https://payments.google.com/payments/paymentsinfofinder
絶対にOKと断言できるものではなさそうなものの、掲載ポリシー上すなわち違反である、ということではないでしょう。
実際、広告審査にはよく通ります(筆者が積極的に活用しているという意味ではありませんので誤解なきよう)。
一応、商標に関しては
キーワードとしての商標の使用については、Google の調査や制限の対象となりません。
https://support.google.com/adspolicy/answer/6118?hl=ja
とだけは書かれています。
掲載ポリシーはさておき法律違反になるか、商標侵害となるか、法律の専門家の話を聞いたり判例(※3)を見たりする限り、商標侵害とはならないという見方が強いように見受けられます、が、まだ完全なる決着はついてないようにも見受けられますし、法律の素人からは無責任に、問題なし、とは言えません。が、可能性は低いでしょう。
ちなみにヤフー社の見解としては、下記です。
単に自身の登録商標を他者が入札しているという行為だけをもって商標権侵害は成立しません。
https://marketing.yahoo.co.jp/guidelines/trademarks.html
いずれにしても目にすることのできるほとんどのケースはまず掲載ポリシー違反でも商標侵害でもないでしょうし、「あそこ絶対うちの社名でキーワード登録してるわ!」と外から見ても決めつけることはできません。悲しいことにプロでも決めつけている人がいますが、広告管理画面を見なければ確証を得ることは不可能です。悪人と決めつけるのはやめましょう。
仕組みが悪いのです。
ちなみに自身の持つ商標用語を、キーワードではなくて広告文に書かれたらまず商標侵害となる可能性は高いですし、その場合の申請窓口はあるので申請しましょう。
こちらをよくお読みください。
https://support.google.com/adspolicy/answer/2562124?hl=ja
法的に問題ないとしても本当に良いことなのか?
現状では掲載ポリシー的にも法的にもOKといえる可能性は高いものだけどそういうことでいいものでしょうか。
- ユーザー良し!
- 広告主良し!
- Google良し!
という三方良し!を基本とするGoogleの思想的にもこれは良いことなのか、考えてみましょう。
検索ユーザーが間違えることがある
とある会社名を検索したら、他の似たサービスも見つけられるというのはユーザーにとって良いことでもあると言えるかも知れません。
実際、クリックされなければ広告は出なくなるので、出てるということはクリックされてるということです。
ただし、「広告を出すと別の会社への問い合わせが間違ってよく来る」という話もよく聞きます。つまり、間違ったクリックも発生しているということです。
間違えててもクリックはクリックですし、間違えててもコンバージョンはコンバージョンです。こういう意味での間違いかどうかの判断を、システムは基本的にはしません。
ユーザーにとって良いことなのか悪いことなのか、どちらの側面もあるので一概には言えませんが、間違うというのはユーザーにとっても広告主にとってもあまりに手間のかかることで、とても悪いことであると個人的には思います。
他の似たサービスを見つけてもらうならそれは一般名詞で検索した人にだけ見せて、どこかの社名で検索した人には間違えさせずにその会社に関する情報しか見せない、迷わせない、でいいのではないかなと個人的には思います。
広告主にとっては本当に良いことがない
他社名の認知を利用して商売する気しかない企業にとってはいいかも知れませんが、これで得られる成果が膨大になることはそうそうないので、事業を伸ばすことにはつながりにくいです。
真っ当なプロモーション活動をしてがんばって事業を拡大している広告主にとっては本当に何も良いことがないです。
手も頭もお金も使って努力して自社の認知度を上げて検索してくれる人を増やしたら、そのうちの何割かが他社に流れます。
しかも、検索結果に少しでも競合の広告を出さないようにするために、自分の社名での広告を自分でお金を出して広告を表示し続けなければ、さらに多くが他社に流れます。
自分の社名で広告を出すのにいくらかかるか、ケースバイケースですが、TVCMは出稿していない広告主でも月に数百万円かかることもあります。
プロモーションをがんばればがんばるほど競合他社に送客してしまう、それをを防ぐのに高いお金を毎月支払わなければいけない、
しかも支払ったところである程度は送客してしまう、こんなバカバカしいことありますでしょうか。
そして自社名検索の広告にお金がかかりすぎて新しいプロモーション施策にお金をかけづらくなり、前のめりではなく保守的なお金の使い方になりがちなのも辛いところです。
認知度を上げるも地獄、認知度を上げないも地獄、どちらかの地獄を選ぶしかない世界ですが、自社名で検索したときに競合他社の広告さえ出なければ、地獄以外の選択肢も存在する世界にできるわけです。
Googleは儲かるから良し!のはず
多くの広告主が不本意ながら自社名検索の広告に広告費をかけ続けることになっていて、Googleとしてはこれで儲かるので、良し!のはずです。
- ユーザー:良いか悪いか微妙
- 広告主:良くない
- Google:良し!
ですね。
全然、三方良し!にはなっていません。
広告主が対策するのは本当に難しい
考えられる対策方法は下記です。
- 自社名検索の広告を自分で出し続ける(ただし完全には防げない)
- 自社の広告しかクリックされない状況にする(ほとんど場合において無理)
- 競合他社に、除外キーワードとして設定をしてもらう
現実的かつ有効な対策といえるのは3つ目くらいです。ポリシー上NGではないので強制停止もできなく、当事者に対応してもらうしかありません。
社名が部分一致の一般名詞キーワードにヒットしないようにするには、除外キーワードとして登録してもらうことになります。
「お互いの社名で広告が出るのをとめませんか?こちらも御社の社名を除外キーワードとして登録しますので、御社にもお願いできませんか?」という、紳士協定みたいな相談をするのが良いでしょう。
相手がこちらの社名をキーワードとして登録しているかわからない中、もし登録していない相手に「キーワード登録してますよね?やめてください」という連絡をしても印象が悪いです。
ルール上NGでもないうえに対応は手間がかかります。強要もできません。依頼か、相談という形が正しいです。
もちろん「商標侵害」だの「法的措置を取る」だの脅すような物言いはやめましょう。法律事務所や法務部などの名義でそういう連絡をすると有効、などというアドバイスもたまに聞きますが、下手すると逆に法律に触れます。
ただし、広告を出している競合他社が数え切れるくらいでないとこれでも防げません。
一社止めてくれてもまた次の一社が出てくるだけです。
永遠に除外依頼をし続けるだけです。
そもそも全社が依頼を受け入れてくれるわけでもないですし受け入れないことも悪ではないので、やっぱり完全な決着はかなり難しいです。
どうにかできるのはGoogleしかいない
多くの広告主がこの問題で悩んできていますが、自力での解決は難しいです。
仕組みの問題なのでGoogleになんとかしてもらうしかありません。
法的にアウトとも言えないので、やはりGoogleに強要もできないですし、お願いしかできません。
ただし法的にアウトといえなくとも、これは例えば、
お金を払って駅に広告ポスターを貼って集客したラーメン屋の前に、他のラーメン屋が自分の店へと通ずるどこでもドアを設置しているようなものであって、そんなことが現実世界で起きたら問題視されるはずです。
企業がそれぞれプロモーション活動をしてそれぞれ利益を上げていくうえで、健全な社会とは言えません。
とはいえ、世の中すべての固有名詞を、固有名詞なんだか一般名詞なんだかよくわからない名詞も線引きしながらの把握は難しいでしょうし、商標登録されている言葉による検索すべてを広告表示対象としないというのも違うでしょう。
どうにかするとしてもGoogleにとっても、とても難しい問題だろうとは思います。
難しい問題ではあろうもののやはりGoogleに考えてもらうしかありませんし、こんなにも誰かだけが辛いという状況を放置しない企業であってほしいと切に願います。
広告主同士で争っている場合でも憎しみ合ってる場合でもありません。
まずはGoogleに本気で考えていただけるよう、できるだけGoogleに対して要望を伝えましょう。
お互いへの不信感は仕組みへの理解で拭い去り、目の前の問題は互いに真摯な姿勢で相談し合い、根本的にはGoogleにどうにかしてもらうしかないので、Googleに意見しましょう。
※1 実はある範囲では競合の広告が出なくもなっていっています。ですが反対によく出るようになっている範囲は多く、これが多くの人が感じる範囲で起きているから、昔よりひどい状況になっていると感じる人も多くなっているのだろうと思います。
※2 多くの要因がありますが、ユーザーの行動履歴(特に検索履歴)によって、どの広告が表示されるか変わります。他社の広告が出ないことを確認してから、出そうな行動をしてみるとやっぱり出ます。実際に出ているかどうかは、オークションシェアレポートや検索語句レポートでもよく確認しましょう。
※3 「違法ではない」と判決が出たものも海外だったり古かったりしますし、日本では少し特殊な例しか見受けられないので、参考にしやすい判例が見当たりません。